続・知能テスト編(二十七)

 俺が自室でちょうど知能テストをはじめた時、部屋のインターホンがけたたましく鳴った。

「ピンポンピンポンピンポンピンポン……」

 間違いなくこれはクリスの仕業だ。

 俺もはじめの内は無視を決め込んでいたんだが、いつまで経ってもやめる気配がねえ。

 仕方ねえから、俺は扉を開ける事にした。


「クリスうるせえぞ!」

 クリスの相手をするのに、テストの時間がさかれちまってる。

 仕方がねえので、クリスを中に入れると、無視してテストを再開した。

 しかし、そうしたら今度は俺の端末をのぞき込んで来やがった。

「先生、それ間違ってる。正解は……」

 クリスがなんか言いかけてるが、俺は気にせず次の問題に取りかかる。

 俺は妨害を受けながらもなんとか問題を解き終わった。

「正答率はねえ……」

 なんか言いかけたクリスの口を塞ぐと、回答を送信した。


 そうして、しばらくすると結果が帰って来た。

 ざっとテストをした感じだと、俺の知能指数は、一二八くれえあるらしい。

「先生、やっぱり頭いいんだ!」

 なんで「やっぱり」なのかは知らねえが、悪くはねえ数値らしい。

 だが、こんなもん調べてどうするんだ?

「ちなみに、お前はいくつなんだよ」

「ここに来た時テストしたけど、結果は聞いてない」

 クリスがしれっと言いやがった。

「ちゃんと聞いとけよ。気にならなかったのかよ」

「天才とは聞いた」

 クリスが胸をそらして自慢気に言う。

「それは知ってるが、本当に数値いくつだよ?」

「少なくとも先生よりは上だと思うよ」

 頭がいいにしたって、クリスはピンポン連打するくらいには馬鹿だ。

「お前は知能の無駄使い『しか』してねえよな」

「僕が自分の知能をどう使おうと僕の勝手でしょ?」

 まあ、確かにその通りだ。

 だが、その無駄遣いに巻き込まれる俺の身にもなって欲しい。


「で、サボった授業は大丈夫なのかよ?」

 確かこの時間は、四限目の授業時間だった筈だ。

「お腹を壊した事にした」

「そのくらいで休めるもんなのか?」

「調理実習だったんだ」

「休んで正解だ!」

 俺は過去に、クリスの菓子を食べて酷い目にあってるからな。

 調理実習ってワードは軽くトラウマになっている。

「じゃあ、このまま俺の授業に突入だな」

 俺の授業は毎日五限目と決まってる。

 まだ、前の授業も終わってねえ時間だが、もうはじめてもいいだろ。

「教室に行くぞ」

 クリスを教室に連行しようとしたら、抵抗して来やがった。

「その前にやる事がある!」

 なんだか分からねえが、俺は頭を使ってクラクラしてんだ。

 気分転換に、はやくクリスを犯してえ。

「俺の授業より大切な事があるのかよ?」

 そんなものは、俺の中には存在しねえ。

 授業でクリスを犯すのが、俺が生きていく上で一番の楽しみだ。

 すると、クリスがこんな事を言い出した。

「ちなみに、お願いしてみたら、僕の知能テストが実施される事になったんだ。今からテストがあるんだけど、僕の邪魔する以上に大切な事があるの?」


「ねえな!」

 俺は即答した。


 しかし、俺が邪魔しようと思って、話しかけまくってみたり、体をまさぐったりしてみたが、こいつには全く関係ねえみてえだ。

 俺の相手をしながら、俺が問題を読む暇もねえくらいの速度で解いていく。

 こいつ、いくらなんでもマルチタスク過ぎるだろ。

 しかも、クリスの問題は俺の問題と全く違いやがった。

 俺のに文章問題とかなかったぞ?

「終了!」

 クリスはそう言うと、とっととデータを送っちまった。


 結果はかなり時間が経ってから送られて来た。

「お前の知能指数いくつだ?」

 返って来た結果を見て、俺は息を飲んだ。

「お前、頭おかしいだろ?」

「なんで?」

「なんでって……」

 言い淀む俺を見て、クリスがニヤリと笑った。

「先生に勝ったね。なにをして貰おうか」

「ふざけんな! 俺は賭けをしてねえ上に、罰ゲームするなんて一言も言ってねえ!」

「負け犬の遠吠えだね」

「負け犬でもなんでもいいんだよ!」

 こいつに頭脳戦では、一生仕返し出来ねえと思い知った。

 ならば、力にものを言わせるまでだ!

「暴力反対!」

「うるせえ。俺の授業では俺が法律だ!」

 俺は騒ぎ立てるクリスを引きずって教室に連行した。

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