抵抗編(十八)
「そう言えば、お前って抵抗した事ねえよな」
これから授業をはじめようとしてから、ふと思ったんだが、クリスは俺の授業で痛めつけられても強姦されても抵抗した事がねえ。
最近は俺に甘えて嫌そうな態度を取るようになったが、はじめのうちは、なにされても顔色ひとつ変えやしなかった。
まさかとは思うが、マゾヒストとかそう言う類のアレなんじゃねえかと思ってしまう時がある。
まあ、よく仕返したりして来やがるから、それはねえとは思うがな。
そんな事を考えながら質問したら、クリスがしれっとした顔で答えた。
「抵抗したってどうせ喜ばせるだけじゃない」
「そういう問題か?」
「違うの? 先生は抵抗したら嬉しくなるでしょ?」
確かにその通りだが、俺はそんな事が聞きたいんじゃねえ!
「俺以外の奴らには抵抗したりすんのか?」
俺の質問にクリスはちょっと考えている。
「体では大人には敵わないから、基本無抵抗だね」
俺の想像した答えとは全く違った。
こいつの事だから、死ぬ気で抵抗すんのかと思っていたんだがな。
「お前かなりの負けず嫌いだよな?」
「うん」
「なのにいいようにされて、なにも言わねえのはおかしいだろ」
それに、クリスは怪訝そうな顔をする。
「体では抵抗はしないけど、口では言うよ?」
「なにを言うんだよ?」
「挑発する!」
そうだ。
こいつはそう言う奴だった。
「だが、そうすると、さらに酷くされねえか?」
「される事が多いかも知れないね」
「なら言わねえ方が良くねえか?」
「でも、相手を喜ぼせるだけじゃ
疑った俺が馬鹿だった。
やっぱり、こいつは筋金入りの負けず嫌いだ。
だが、悪いが俺はこういう方が燃える質だ。
「挑発されたら俺は喜ぶけどな」
俺がそう言うと、クリスは黒い笑みを浮かべた。
「へえ、喜ぶの? 子供に告白して振られたって聞いたけど、それ言われても喜ぶの?」
こいつの挑発はメガトン級だった。
俺は喜ぶどころか心がポキッと折れちまった。
「分かった、俺が悪かった」
今、俺は泣きてえ気分だ。
クリスの奴チクチクと俺の急所を
こいつ、いつまでこのネタでいじめてくる気だ?
「だがよ。相手の情報がねえと、そう言う挑発は出来なくねえか?」
クリスは少し考えるように首をかしげた。
「まあ。相手とか状況に応じて、対応は変えるよ?」
「例えばどう変えるんだ?」
「特徴的な人がいたら、それでいじり倒すとか」
人としてあまりな挑発だが、真っ黒なクリスらしい発言だ。
「先生、誤解してない? 僕はいい方でもいじるよ?」
なんか俺の思考は読まれているらしい。
他の奴の事は分からねえくせに、俺の事は簡単に読んでくるのは一体なんなんだ?
まあ、聞いたらボロクソに言われそうだから、なにも言わねえがな。
「どっちにしろ、お前の性格が歪んでる事はよく分かった」
それに、クリスは不満そうな顔をする。
「先生には言われたくない」
そう言うだろうと思っていた。
だから、俺はそれ用のとどめの言葉を用意しておいたんだ。
「じゃあ、お前も俺と同類って事だな」
俺はクリスに一本とったとニヤリと笑った。
しかし、クリスはそこでやめてはくれなかった。
「僕は無様な失恋はしてないから、先生と同類にはならないね」
こいつ、どこまで俺をいじめる気だ?
くそっ。
いつか、こいつを本気で屈服させてえ!
とりあえず、残りの授業時間は、このモヤモヤをはらす為にクリスを襲っとく事にした。
しかし、そんな俺にクリスが追い打ちをかけて来やがった。
「ふうん。口では勝てないからって力に訴えるんだ? それは、先生が僕に負けを認めたって言う事だね」
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