続・鞭編(九)

 クリスは仕返しの為にノコギリを持って来ると言っていたが、支給して貰うのが難航しているらしく、数日経ってもまだ持って来てなかった。

 しかし、今日クリスは後ろ手になにかを隠して教室に入って来やがった。

 ノコギリが手に入ったに違いねえ。


 俺が内心焦っていると、クリスは少し残念そうな顔をした。

 後ろに手をやってるのはフェイクで、実は手に入らなかったとかだろうか?

「ノコギリは支給出来ないと言われた」

「まあ、普通に考えたらそうだよな」

 俺は少し安堵した。

 こいつに危険な柄物えものを持たせたらやばすぎる。

 それに、絶対俺に切りつける気満々だったしな。

「でも、その代わりに、カッターナイフとハサミとホッチキスを手に入れた」

「なんだその凶悪そうな文房具は」

 俺はホッチキスで止められるのか?

「機械の設定はどうしようか?」

 クリスの瞳が妖しく光る。

「あんまり細かい設定は出来そうにないし、選ぶなら切り刻まれた時の痛みかな」

 クリスは機械の設定を終えると、満面の笑みを浮かべて俺に機械を付け始めた。

 俺は我に返ってクリスの腕をとって作業をやめさせる。

「待て。俺を痛めつけるんじゃ授業にならねえだろ」

「なにを言っているの? 今日は僕が相手を拷問するやり方を学ぶ授業だよ」

 そんな授業もありかも知れねえが、俺が相手になる必要はねえだろ。

「扉の向こうにいる、お前の付き添いの男を拷問にかけるのはどうだ?」

「ダメだよ。僕はあの人には恨みがない」

 俺には恨みがあるらしい。

 まあ、授業という名の元に、いつも俺の快楽を満たす為に色々やってるからな。

「でもダメだ。これは没収だ」

 俺はクリスから凶悪な文房具を奪い取った。


 いつものようにクリスが睨んで来るが、それは俺を興奮させるだけだ。

 こいつに、その顔は相手を興奮させるだけだからやめろと指導するべきかも知れねえ。

 だが、俺はこのゾクゾクを味わいたいから注意する気はねえがな。


「で? これでどう拷問する気だったのかだけ聞こうか」

 クリスは持って来た凶器を奪われて不満そうだ。

「カッターナイフは肛門に入れる。ホッチキスは目に刺す。ハサミは陰茎と精巣を挟んで痛めつける」

 目的を持って選んでやがる。

 クリスが仕返ししないと気がすまねえ性格なのはこの前身をもって経験したが、こいつの拷問ヤバくねえか?

「絶対やめろ。それはリアルに死ぬ」

 俺はクリスから没収した文房具を箱にしまって鍵をかけた。

 まあ、今度拷問する時の参考にさせて貰うとしよう。

「そもそも、俺があの鞭を選んだのは傷付けねえでいたぶる為だ。お前のはその辺の配慮が全くなってねえだろ」

 クリスの瞳に一瞬殺意の光が走った。

「仕返しするのに手段を選ぶ必要はないよね」

 こいつを敵に回したらなぶり殺しにされそうだ。

 これはさすがに手段を選んでいられねえ。

「クリス本当にすまん。やり過ぎた。今度から気を付ける。許してくれ」

 俺が謝るとクリスはため息をついた。

「授業でやられるのは構わないけど、逸脱いつだつするのは絶対にやめてよね」

 逸脱しまくってる俺は、クリスに平謝りに謝った。

「分かった。本当にすまねえ」

「まあ先生が約束を守れるとは思ってないけどね」

 クリスがすげえ冷たい目で見て来た。

 謝っている最中になんだが興奮して来ちまった。


「とりあえずまだ時間があるし授業してもいいか?」

逸脱いつだつしない範囲でなら」

善処ぜんしょする」

 俺は政治家でも言いそうなセリフを吐いてクリスを押し倒した。

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