拷問編(四)

 もう少しでクリスの授業の時間だってえ時に、仕事が入りやがった。

 うちの社員を殺した奴から情報を吐かせる仕事だ。

 せっかく可愛い生徒に会える筈が、むさ苦しいオッサンとデートする羽目になっちまった。


 殺し屋の入れられてる牢屋に行こうとしたら、クリスがやって来た。

「おう、クリス。仕事が入っちまった。すまねえが今日の授業はなしだ」

 クリスが不思議そうな顔をする。

「先生の仕事?」

「これからちょっと拷問してくるんだよ。俺は拷問官だからな。いつも遊んでる訳じゃねえ」

「見に行ってもいい?」

 クリスが物好きにもこんな事を言って来た。

「後学のために見ていくか? 知ってて損って事はねえだろ」

「見に行く」


 クリスが俺の仕事内容をどこまで知っているのか疑わしいもんだ。

 でも、まあ頭のいいクリスの事だ。

 なにも分かってねえような顔はしてるが、大体理解してるんだろう。

「着いたぞ。その辺に座っとけ」

 俺は鉄格子の外の床を指さす。

 クリスはなにも言わずにそこに座った。


 牢の中にいたのは四十過ぎのオッサンだった。

 壁から伸びた鎖に足が繋がれてる。

 俺は手元にある情報を確認した。

「拷問するのに大事な事は、情報を吐かす前に死なせねえ事だ。あと頭がおかしくなってもダメだ」

 俺は扉を開けて中に入った。

「殴る蹴るで吐く奴はそれでもいい。しかし、こいつみてえに口の固そうな奴にはそんな事しても意味がねえ。おまけに無駄に体力を削ってあとの拷問に差し支えるから、俺はしねえ」

 男が俺の方を睨んで来やがった。

「子供を連れて来て、なんのつもりだ?」

「俺がどうやって落とすのか見学させんだよ」

「俺は見世物って事か」

 僅かに顔をしかめた。

 プライドの高そうな奴だ。


「クリス。プライドをへし折る一番簡単な方法を教えてやろうか? なんだと思う」

 クリスの目が怪しく光る。

「強姦すればいい」

「その通りだ。むさい野郎の相手はしたくねえが、まあこれも仕事だ」

 俺は相手の手をひねり揚げ、床にキスさせた。

「見とくか?」

 クリスは頷いた。

「こんな事をしても無駄だぞ。俺は絶対に口を割らない」

「まあ、これは前戯みてえなもんだ。俺もこのくらいで落とせるとは思っちゃいねえよ」


 俺は奴を散々いじめ抜いた。

 このくらいで吐く奴が殺し屋なんてしてねえだろう。

 しかし、俺を見る目が恐怖に歪んでる。

 そして、プライドをへし折られて、惨めな顔になってやがる。

 俺はこういう顔を見ると興奮する質だ。

「じゃあ俺に屈服したところで、次に行こうか」


 強姦するのに時間を取られちまったから、吐かすのに二0分もかかっちまった。

「俺相手に二0分もったなら自慢してもいいぜ」

 屈服して屈辱に歪む顔は、俺にとってたまらないご馳走だ。

 しかし、怖えのはクリがそれを終始無言で見学していた事だ。

 しかも、目をそらす事は一切なかった。

「勉強になったか、クリス」

「なった」

 そう言って立ち上がった。

「殺すの?」

 吐いても吐かなくても、大抵の場合は最後には殺す事になっている。

 吐かねえで殺すってのは、相手がどうあっても落ちそうにねえ時だけだ。

 まあ、今まで俺が担当して来た相手で落ちなかった奴は一人もいねえが。

「銃かして」

 クリスが牢に入って来て左手を出す。

「なんだ?」

「殺すんでしょ?」

 さすがの俺もこれには躊躇ちゅうちょした。

 いくらクリスが人を殺すのがはじめてじゃねえにしても、なんの恨みもねえ相手を撃ち殺せるとは思えねえ。

「殺人の授業でね、どこをどうやったら死ぬかと言うのは習ってる。ただ実践した事は一度もない。だから実際にやってみるのも勉強かと思って」

 俺はクリスに銃を渡した。

「心臓でいいよね?」

「ああ。苦しませねえように殺してやれ」

 クリスはなんの躊躇ためらいもなく引き金を引いた。

 銃弾は左胸に命中し、壁にシミを作った。

「ありがとう」

 クリスはそう言って銃を返して来た。

「ああ」

 クリスは相手をいたぶるのが好きな俺とは違う。

 俺は人一人殺して平然としているクリスに畏怖いふの念を抱いた。

 どんなに痛めつけても根をあげねえのは知っている。

 これなら目の前で誰かがいたぶられても、助ける為に口を割る事もねえだろう。

 間違いなく、クリスは俺が絶対に落とせねえ相手だ。


「まだ時間あるけど授業はどうするの?」

「授業は終わりだ。俺はこのままシャワー浴びてくる」

 俺は服も体もあちこちに血やら体液やらが付着している。

「それとも俺に抱かれに来るか?」

 断られると思って言ったんだが、なんでか知らねえがクリスが頷きやがった。

「じゃあ来いよ」

 俺はその後、終業時間までシャワー室でクリスを犯し続けた。

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