第59話 こんばんわ


 ――第2階層中腹地点。


 ドーラは自身の中にある王の残骸と、現在の樹形種の王の繋がりを通じ、確実に2人へと近づいていた。


 しかし彼女はそこで、ふ、と顔を上げる。


「……あら?」


 全方位から迫り来る、徐々に大きくなる地鳴りの音。


 鳴りを潜め隙を窺っていたモンスター達が、王の命により一斉に動いた。


 空を掻き乱し、木々を薙ぎ倒し、地を蹴散らし、異形の化物共の行進が空気を揺らす。



 しかし彼女はその中心で、小さく笑った。



「ごめんなさいね。貴方達に付き合ってる暇は……ないの」



 瞬間、轟音を上げ、うねる巨大な根が密林を吹き飛ばした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る