第49話 攻略開始




(……見られていたな)


 ダイアナは抜き放った長剣を鞘に仕舞い、雲の上を睨みつける。


 だが今はそれよりも、


「……何だ、あれは」


 草原のど真ん中に位置する漆黒のドーム。あの場所には、元々マルテロがあった筈だ。


 2人は予想もしていなかった光景に驚きつつも、そのドームの入口と思われる場所に近づき、黒曜の門を仰ぎ見る。


「……空間魔法か?」


「……似てるけど、違う。もっと別の何か」


 扉に触れるマミンは、その力の異質さに冷や汗を流す。


 ダイアナも扉に触れ、1度深く深呼吸した。


「しかしまぁ、この中に囚われた者がいるのは確かだ。準備はいいか?」


「いい」


「よし」


 2人は一思いに、思ったよりスムーズに動く門を開け放った。


「……ギ?」

「……ん?」

「……ふぁ?」


 そして目が合う、1匹と2人。


 門は押し開け式、真前に陣取っていたザラザラの身体に、勢い良く開いた門がぶつかるのは当然である。


 ザラザラの脳裏で、瞬きの計算が行われる。


 与えられた命令は人間を逃さない事→侵入者はどうする→聞いてない。


 結論。→よし食おう。


「ギシャァアアッ‼︎」


 ザラザラは首を反転し、見上げる人間達に向けて十字の口を叩きつける。


 土煙の中、口の中に入ったであろう物を咀嚼しようとし、


「ギ?」


 視界がズレている事に気がついた。


「……ふむ、中々いい鱗を持っている」


 キン、と長剣が仕舞われる音と共に、背後から響いてくる声。


 ザラザラが振り向こうとした途端、輪切りにされた首がバラバラと空中分解を始めた。


「『イグニ』」


「ギシャバッ⁉︎ボボッボボ――」


 そこにすかさず超高熱が襲い掛かり、ザラザラを身体の内側から燃やし尽くしてゆく。


 暗い町に一瞬差す、魔法の灯火。


 数秒後には、化け物は黒い炭へと姿を変えていた。


「いい炎だ。流石天才と呼ばれるだけはある」


 ダイアナは空を飛ぶマミンを見上げ、その練度を賞賛する。


「……嫌味にしか聞こえない」


「……そんなつもりはないのだが、」


 この町を蹂躙していた化物を瞬く間に抹殺した2人は、自分達に向かって続々と集まってくる気配を感じ、目を細めるのだった。




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