第30話 キャラクリエイト



「集落側から町に入ったら、きっと警戒される。反対から行こうぜ」


 ダンジョンを攻略した3人は西側から町を大きく迂回し、現在森と草原の境界を歩いていた。


「わざわざ門を叩かんでも、勝手に入ってしまえば良かろうて」


 愚痴るカリストに、カズナは地図をヒラヒラと振る。


「分かってねーなー、ロマンだよロマン。正面から入ってこその観光だろ。それにこーゆーのは、記憶喪失です、て言っときゃ何とかなんだよ」


 カリストは、(は?)という顔でラヴィナを見るが、彼女も既に理解を捨てている。(諦めろ)と首を横に降った。


 そこでカズナは遠くに見える米粒のような町を前に、2人に向き直り1度足を止めた。


「んでだ、町に入る際だが、その姿だと確実に殺し合いになる」


 片や眼球の化物。片や溶岩の化物だ。これで歓迎されるなら、モンスターは絶滅していない。


「まさか、また幻覚魔法か?嫌じゃぞ!」


 察したカリストが駄々をこねる。


「じゃあお前だけ置いてくぞ?」


「……むぅ」


 カズナは口を尖らせる彼女を笑い、しかし、と続ける。


「今回は他人の皮を被るわけじゃない。……ヴィーネ、解析は済んでるか?」


「ええ、とっくに」


「……何を?っ」


 不信がるカリストを、振り返る彼がビシッ、と勢いよく指差した。


「俺がお前達をキャラメイクしてやる!」


「妾を指差すな。燃やすぞ」


「はいごめんなさい」


 摘み上げられる彼に代わり、ラヴィナが幻覚魔法を起動しながら説明する。


「私はカズナに頼まれて、あの集落にいた全ての人間……エルフの身体的パーツを解析していたのよ」


「何故じゃ?」


「カズナの好みの女性を作るため?」


「ああそうだ!」


 首根っこを掴まれる彼が、意気揚々と返事する。

 その目は、RPGで自分だけの最高キャラを作ろうと気合を入れる、生粋のオタクの目だ。


「俺がお前達の性格や仕草に合わせた、最高の人間的美女を作ってやる!」


 既にプロットは出来ている。あとは筆を持つだけだ。ああ早く作りたい、作りたくてしょうがない。


 カリストもカズナの言葉に、目を細め口元を緩めた。


「ほぅ……それは興味深いな」


「だろ?」


「妾に相応しい見目にせよ」


「あたぼーよ」


 自信満々に告げるカズナは、ラヴィナに指示しながら、彼女達に人間の皮を貼り付けてゆくのだった



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