第27話 ダンジョンマスター





 ――そうして数10分後。


 元の炎の姿に戻ったカリストが、ヒンヤリとした地面に大の字で寝転び、蒼い空と白い雲をホケー、と眺めていると、


「あら、幻覚魔法が解けてしまっているわね。かけ直してあげましょうか?」


「ヤッベェって何だよあれっ、死ぬかと思ったマジで!」


 近くに2人が転移してきた。


「……ほざけ」


 カリストはよっこらせ、と起き上がり大きく息を吐く。

 本気の技はこうも疲れるものなのか。使いどころを間違えれば、死んでいたのは自分だったであろう。


「カズナ、無事じゃったか」


「あ、ああ。召喚したモンスターは消し飛んだけど、ラヴィナが助けてくれた。……お前も大丈夫か?」


「愚問じゃ。褒め称えろ」


 カズナは砂漠の様になった周囲を見渡し、驚愕と呆れに乾いた笑みを浮かべる。


「いや、本当によくやってくれたよ。2人とも」


「ふん」

「当然よ」


「ハハっ、らしいな。……んじゃ」


 カズナは2人に感謝し、早速次の目的地を指し示すべく、地図を地面に広げる。


 しかしそんな彼を、


「……のぅ、カズナよ」


 真面目な表情を張りつけたカリストが、静かに見下ろした。


「ん?」


「お主に聞かねばならぬことがある」


 何やら重い口調に顔を上げるカズナは、彼女の深紅の瞳の奥に、有無を言わさぬ光を見てとった。


 彼女が求めているのは軽い問答ではないと理解し、立ち上がる。


「……どうした改まって」


「…………何故、貴様はそれ程までに弱い」


「……あー、」


 なるほど今来るか。

 カズナは言い難そうに頬を掻く。


「ここの王は、明らかに妾達よりも強かった。しかし反面、配下の女は気が抜けるほどに弱かった。

 ……貴様は、妾達が王以外に負けないのを、確信しているように見えた。しきりに自分と他の王を比べ、気をつけろと言うのも気になる。

 ……教えてはくれぬか?」


 いつになく冷静に尋ねるカリストに、カズナが唸る。


「……」


 ラヴィナも2人を見つめ、答えを静かに待つ。

 現にこの疑問は、彼女もずっと持っていたものであった。しかしカズナがその話題を避けているように感じたため、彼の気持ちを優先して触れないでいたのだ。


 もしここでその真実が聞けるというのなら、彼には悪いがカリストの肩を持たせてもらう。


 カズナはそんな2人の視線に耐え切れず、大きく天を仰ぐ。


「まぁいつかは言おうと思ってたけど……これ聞いたらお前ら絶対気ぃ使うもん」


「尚更だ。それに妾は貴様に気など使わん」


「……いやそれもどうなのよ」


「話すがよい」


 カズナは一息吐き、観念したように口を開いた。


「……俺達はな、ダンジョンマスターとして選ばれる際にスキルを授かった。自分で考えたスキルが現実になる神対応だ。

 このスキルは、他のマスターが殺せば奪える仕様になってる。

 2人が戦った奴も、何か強力なスキルを1つ、あるいは複数持ってたろ?」


 2人はリョウの『魔樹創世』を思い出し頷く。



「それでだ、俺が考えたスキルは2つ。『代償補正』と『召喚干渉』だ」



 代償……。

 言葉から来る不穏な響きに、2人の表情が険しくなる。


「……効果は?」


「まず『召喚干渉』は、……配下を生み出す際、自分の求めた心理的意図が酌まれやすくなる。それだけ。

 んで『代償補正』だけど、……




 自分が今を除いて、今後成長して得ていくスキル、魔法、身体能力値の9割を消失する代わりに、召喚する配下の能力にかかる、唯一無二の特大補正。




 ってとこだな」


 淡々と説明する彼とは裏腹に、カリストとラヴィナは目を見開き愕然とする。


「……何てことを」


「加えると、マスターを殺した際の経験値?成長のポイント?的なのは、『代償補正』に9割、残りの1割を『召喚干渉』に全て回すよう頼んだから、俺がいくら他のマスターを殺そうと、種の権限以外何も手に入らない事になるな。さっき証明されたし」


 カズナは両手を広げ、全然成長していない自分に安心する。

 リョウの持っていたスキルが何も手に入らなかったということは、自分の要望がしっかり通っていたということに他ならないのだから。


 反対にカリストは額を抑え、カズナを睨む。


「……道理で妾達が王に届くわけだ。

 ……なぜ貴様は、未来を捨ててまでそんなスキルを欲した?」


 そう問う彼女の疑問を、しかし彼は笑い飛ばす。


「未来を捨てる?バカ言っちゃいけねぇ。

 これが勇者召喚物や魔王召喚物なら、俺は迷わず、考え得る限りの最強スキルを積みまくっただろうさ!

 だけど俺は【ダンジョンマスター】だっ。配下を使って、冒険者どもを嬲り殺す者だ!

 主役は俺じゃねぇ、お前らなんだよ!」


「「――っ」」


「それに今後成長しないってわけでもない。成長速度は常人の1/10だけど、絶対値を増やせば、それに応じて容量もデカくなる。いつか1人で外を歩ける日も来るだろうよ。

 ……ほらっ。お前達が殺しまくってくれたおかげで。こんなことも出来るようになった」


 カズナの掌に、指先大の火が力なく灯る。


「……本当に、貴様は……」


 カリストの唇に、呆れとも取れない、小さな笑みが零れた。



「……俺がなりたいのは、最強の主人公じゃねぇ。

 最強の主人公に守られて、自由を謳歌するっ、生粋の脇役さ‼︎」



 カズナはモンスターの如く獰猛な笑みを浮かべ、声高らかと言ってのけた。


 興奮にマグマを揺らめかせるカリストも、額に手を添えクツクツと笑い出す。


「クフっ、クハハハハっ!良かろうっ!妾の力を以てして、貴様を最強の弱者にしてやるわッ‼︎クハハハハっ」


「くははははは」


「真似するでないわ、燃やすぞ」


「くはっふ……」


 彼はそっとそばに寄るラヴィナに、ニヤリと笑いかける。


「ヴィーネはどう?感動した?」


「……えぇ。再び全てを、あなたに捧げようと思えるくらいには」


「ぐへへ、男冥利に尽きるぜ」


 カズナは正直スッキリした心を自覚しながら、いよいよだ、と地図を叩く。


「それじゃあ今からこの街行って、ダンジョン落としました記念のっ、祝杯としゃれこもうぜェッ‼︎」


「クハハハハっ、オーー‼︎」


「ふふっ、おー」



 異世界の空の下、モンスター共の陽気な声が、溌溂と響き渡った。















【後書き】


 さぁさぁ、答え合わせといこうか!

 幸せ絶頂の中にいたリョウを、無慈悲に!残酷に!ノリでぶち殺したのはこいつらだったわけだが、読者諸君はどこで気づいたかな?

 1話、2話から既に伏線はばら撒かれていたんだが、気づいたかい?‎(՞≖֊≖՞)

 神の空間に拉致された時の、俺ら視点の人称が『』なのに対して、リョウから『』に代わっているのに気づいたかい?わざわざ・まで付けて強調してやったんだ。見逃した奴ぁいねぇよな?

 1人称も『俺』から『僕』になってる。

 襲撃した女剣士と女魔法使いはなぜかモンスターの言語を話せる。

 マスターが異世界に飛ばされたのは同時、ならば時系列も同時刻の筈。

 他にもちょくちょく疑問点を入れてたんだが、気づいたかね?まさかここまで読むまで何も疑問を持たなかったなんて奴は流石にいねぇよな?( ˙-˙ )いるならちょっとひっぱたいてやるからこっち来い!もっと目ぇかっぴらいて読め!集中しろ!!そして楽しめ!!

 作者がうるさいって?うるせぇ!(σ゚∀゚)出たがりなんだよ!!


 とまぁ早いもので物語も折り返し地点まで来たわけだが、このままだと読者選考通過できるかすら不安なんだけどいやマジで。やっぱ1巻分で戦うのキッついわもうマヂ無理リスカしよᕕ( ᐛ )ᕗ

 正直ここまでは序章も序章、こっから面白さ更に加速するからちゃんとついてきてくれよな!あと布教してくれ!!もう後がねぇんだよぉ!!( ;∀;)暇そうな友達に紹介してくれ!そこら辺に売り出されてるラノベ買うよか得だし面白いってよ!

 あと良かったら感想くれ!!星つけて!!一緒にデビューしようぜなぁ!!!?


 ここまで読んでいただき有難うございます。引き続き本作をお楽しみください。


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