第26話 歩む先に死を




 ――鬱蒼と茂る森の中、3つの影が高速で移動していた。


「そうぶすくれるなって」


 高速で飛行する魔法使い、ラヴィナの背中にしがみ付くカズナは、ムスっ、と頬を膨らませる女剣士、カリストを笑う。


「もし敵わなくて逃げる事になった場合、姿が割れてちゃ都合悪いだろ?」


「そんなこと分かっておる!理屈じゃないのじゃっ。妾が人間の姿を借りているという事実が、腹立たしくて仕方ないのじゃぁ!」


 走りながら駄々をこねるカリストが、嫌じゃ嫌じゃと大樹を殴り倒す。


「まるで子供ね。見苦しいわよ」


「そうだぞ、無駄な森林破壊はやめないさい」


「むぅ……」


 途端大人しく走り出すカリスト。


 何だかんだ素直な彼女に、2人してクスリと笑う。


「……そう言えばカズナ、私や緑の女が、特別なモンスターって言っていたわよね?」


「ん?ああ。何か聞き取り辛かったんだけど、ヴィーネ召喚した時、最初の1体は特別だよーみたいなのを神が言ってたんだよね。

 んで虫を召喚した時、それが聞き間違いじゃなかったってことが分かったのよ」


「……そうすると、今外で問題なく活動出来ているカリストは何なのよ?」


 ラヴィナの質問に、カズナは目を輝かせる。


「そうそこ!俺のスキルちょっと特殊でね、全力のスキルと膨大な迷宮素なら、同じ位の化物生み出せるんじゃないかと思ったのよ。そしたら案の定」


「とんでもないのが生まれたってことね」


「そゆこと」


 その説明に、ラヴィナが少しだけムッとする。


「……私、あいつに力負けしそうになったんだけど?神のバフが付いてる分、私の方が強いのが道理じゃないの?それとも私を生み出す時は、全力じゃなかったの?」


「え、嫉妬?」


「嫉妬よ」


「ナハハっ、可愛いなおい」


「……笑うんじゃないわよ」


 あまり見れないラヴィナの悔しがる表情を、カズナは微笑ましく感じる。


「前も言ったけど、ヴィーネの強さは、その頭脳とあらゆる魔法適正だぜ?それに対して、カリストは攻撃力ブッパの破壊の権化だ。土俵が違うって」


「……それでも、悔しいものは悔しいじゃない」


 彼女がここまで感情を口に出すのは珍しい。

 それならば、と、カズナも聞きたかったことを質問してみる。


「……そう言えば、ヴィーネ」


「何?」


「喋り方一気に変えたな。俺のこともカズナって呼んでくれてるし」


「……ダメかしら?」


「なわけ。俺は今のヴィーネの方が好きだぜ」


「……そう」


 そっぽを向く彼女を、カズナが微かにを含んだ微笑みで見つめていると、


「おい何を話しておる!妾も混ぜろ!」


 下から勢いよくカリストが飛びついて来た。


「ちょっ、何やっているの⁉︎重いわよ!」


「妾が重いだと⁉︎燃やすぞ貴様!」


「ハハハっ、ちょ、痛い痛い」


 高速で色々な場所にぶつかる3人は、やいのやいのと言い合いながら、決戦の場へと向かうのだった。

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