第23話 あれは?



 ――召喚から少し経ち、2人はある建物内でようやく探していた物を見つけた。


「これがここ近辺の地図か?」


「そのようです」


 相変わらず何が書いてあるか読めないが、南方に2つ、街らしき物があることが分かる。

 しかし1つはかなり離れている。目指すは近い方の街だ。


「ここを拠点にして誘い込みますか?」


 ラヴィナは地図に目を落とし、再度ダンジョンの建設を促すが、


「まさか。俺達で行くのさ」


「……はぁ、自殺願望でもあるのですかあなたは?」


 何となく予想していたが故の、溜息とジト目を彼に送る。


 無数の目玉にジト目で見つめられ、いよいよ耐えられなくなったカズナも反論に出た。


「だってちょっとは冒険したいじゃん!」


「知らないですよ」


「現地の食べ物とか冒険者とか、見てみたいじゃん!」


「私達の食べ物は魔力で、冒険者は殺戮対象です」


「もっと文化を楽しもうよ⁉︎」


 カズナは冷め切った彼女に何とか泣き縋る。


「頼むよぉ冒険しようよぉ!」


「ちょ、やめ、そこ掴まないでください」


「この街行ったらダンジョン建てるからぁ!」


「…………本当ですか?」


「ほんとほんと!もう凄いの創っちゃう!」


「約束ですからね」


「おうともさ!」


 ガッツポーズするカズナに、彼女は苦笑してしまう。

 何だかんだ、彼のこういうところが嫌いではない自分もいるのだ。ほっとけないというか、そこが可愛いというか……。


「ほら、そうと決まれば行きますよ。いつまでそんなポーズ……カズナ様?」


 ガッツポーズのまま硬直する彼にラヴィナは呆れるがしかし、そこで彼の様子がおかしいことに気づく。


「カズナ様?」


「……」


「カズナ様っ、どうしたのですか?」


「っ、あぁ、ラヴィナ、悪い」


 一瞬精神攻撃を疑ったラヴィナだったが、そうではないと分かり安心する。


「今虫から信号が来てな、視覚共有したら、……ヤバいもん見つけた」


「……いったい何が?」


 カズナは腕を下ろし、一筋の汗を垂らす。



「ダンジョン見つけた」



「――っ」


 ラヴィナの目が見開かれる。

 まさかこんな近くに別のダンジョンがあるなどと、なんの冗談か。


「間違いないのですか?」


「ああ。ダンジョン自体は木みたいので判別難しかったけど、その近くで、人間と緑に発光してる女が獣狩ってる。

 それにありゃ、日本人だな。俺と同郷だ」


「なんと……」


 視覚共有を解いたカズナは、腕を組み、氷の椅子にドカっ、と腰掛ける。


「……さて、どうするか」


 これからの作戦を構築するべく、カズナは思考の海に身を投げた。

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