第21話 エルフ!エルフ!



 ――数10分後。


「ここか」


 カズナは大樹で造られたバリケードを見上げ、その威容に感心する。


 大樹を何層も重ね造られたバリケードの奥、集落の中心には、数100メートルはあろう超巨大樹が君臨している。


 正に非現実。異世界の植生をまざまざと見せつけられ、彼は改めて自分が異世界にいることを理解した。


「……ん?」


 感動に打ち震えていたカズナは、集落から何やら慌ただしい空気が漏れ出ている事に気付く。

 そんな彼に、ラヴィナが答える。


「連絡を取られると面倒なので、事前に隔離しておきました」


「気が利くな〜」


 2人が呑気に駄弁っていると、門番らしき人物が彼らを見て激しく鐘を鳴らしだした。

 門の上に、すぐさまエルフの戦士達が集結する。


 しかし2人は構わず、隔離空間の中へと足を踏み入れた。

 当然容赦なく無数の矢が浴びせられる。


「……うん。やっぱ何言ってっか分かんねーわ」


「他種族の言語には興味がありますね」


 2人は魔法で消し炭にした矢を前に、言語の壁はやはり大きいことを実感する。


 彼は腕を組みしばし考えながら、怒声を飛ばすエルフを眺める。そして何かを決意し、ラヴィナを見た。


「すまんヴィーネ、ちょっと戦ってみたいから見繕ってくんね?」


 カズナは思う。

 今の自分の実力を知っておきたい、というのは、当然の欲求だろう。

 それに、この脆弱な精神のままでは、ダンジョンマスターなんて到底こなせない。他のダンジョンマスターは獲得したであろう、『殺人への耐性』が、自分には無いのだ。

 こうなることも覚悟していた以上、その耐性は自ら獲得していかなければならない。


 果たして、真剣な眼差しで彼に見つめられるラヴィナは、


「危険です、嫌です、反対です」


 即答であった。


「頼むよ。あともしもの時は助けてくれ」


「万が一があります。それを提言するのが、私の仕事だと心得ています」


「俺の好奇心が最優先なんじゃ?」


「前言撤回します。あなたの命が最優先です」


「俺はお前を信頼しているし、俺が傷付くなんて微塵も思ってないぜ?」


「……それは、断言しますが、」


「じゃあいいじゃん」


「……」


「……俺は弱い。お前にしか頼めないんだよ、ヴィーネ」


 ラヴィナは優しくかけられた言葉に、一瞬だけ身体を震わせ、小さく溜息を吐いた。


「……ずるい言い方ですね。……用意してください」


「よっしゃ。サンキューな!」


 カズナは呆れる彼女に礼を言い、先程死体からパクり引きずってきた長剣を引き抜く。


「おっも」


 警戒していたエルフ達が、仲間が持っている筈の長剣を見てざわついた。


 彼は長剣を正眼に構え、気合一括。


「うりゃ来いっ」


 異世界での初めての戦闘に心躍らせた。

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