第18話 衝突



 ――「これからどちらに?」


 ラヴィナは周囲を警戒しながら、大樹を見上げるカズナの背中に問う。


「(でっけー……)そうだな、……ヴィーネ探知とか使える?」


「既に周囲は探知済みです。約1㎞先に集落らしき場所がありますが」


 彼はラヴィナの出来る女ぶりに目を丸くする。


「ははっ、流石だ。でもそういうことはまず言おうな?」


「カズナ様の好奇心が最優先です」


「カズナで良いって」


「そういうわけにはいきません」


「もー」


 彼は敬称呼びをやめてくれないラヴィナにジト目を送る。


「お前の情報次第で、俺のやりたいことも変わってくるんだよ。だから気づいたことがありゃ、遠慮なく言ってくれ」


「分かりました」


「そこは素直なのね」


 カズナは顎に手を当て、しばし考える。


「……その集落の規模は?」


「住人は500人程。四方をバリケードで囲っています」


「……勝てるか?」


「造作もないかと」


「ハハっ、頼もしいな」


 彼はパシ、と大樹を叩いた。


「うし、その集落落とすぞ」


「分かりました。転移いたしますか?」


「そんなことも出来んのかよ」


「魔法に属することであれば、大抵のことは」


「すげーな」


「して、転移は?」


「いや、そこまで急いでないし、のんびり行こうぜ」


「分かりました」


 そう言って目的地を定めた2人は、雑談を交わしながらエルフの里へと歩を進めるのだった。





 ――「っ止まれ。……異形種か、数100年ぶりに見たな」


 隊長の合図に全員がピタリと止まる。

 地面との平行距離で100メートルは離れている敵を目に、各々が弓や長剣に手をかけた。


「兄者、どうする?」


「……1度引き返して討伐隊を組、っ⁉︎」


「「「――⁉︎」」」


 隊長が撤退を指示しようとした瞬間、異形を中心として結界が張られる。


 エルフの全員が、その早すぎる魔法行使に瞠目した。


(……空間魔法だと?バカな、魔力の気配すら感じなかったぞ)


 隊長はこちらに向く無数の大きな瞳に、冷や汗を垂らす。


「バレていたのか。……兄者、あれは危険だ」


「……ああ。部隊を2つに分ける。4人は結界をこじ開け援軍を呼びに行け。他3人は俺について来い。足止めする。

 奴の見た目からして魔法系だろう、魔力の流れと初動に気をつけろ。いいな」


「「「了解」」」

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