第17話 ビー玉

 小学校の頃、ビー玉遊びが大流行したことがあった。


 地面に、おとなの拳大こぶしだいの穴をいくつか掘って、穴から穴へ自分のビー玉をはじいて移動させる。


 相手のビー玉をはじきとばして妨害しつつ、ゴールの穴に一番に到達すれば、相手のビー玉がもらえる、といったルールだったと思う。


 私は、このビー玉遊びが得意だった。


 だが、運動場や校庭に穴がたくさん掘られると、それにはまって転倒する者が続出した。


 ビー玉を、取った取られたの行為も問題視され、学校でのビー玉遊びは禁止になった。


 禁止になっても、ビー玉遊びを愛する私たちはあきらめられない。


 給食調理室の裏に、私たちは集合した。


 そこの草をむしって、住んでいた大量のコオロギを放逐し、穴を掘って、裏カジノならぬ裏ビー玉遊技場を作った。


 禁止になってもやるくらいだから、裏ビー玉遊技場に来るのは、ビー玉遊びの強者つわものばかりである。


 競技は熾烈を極めた。


 それでも、私は強かった。ビー玉の女王、と呼ばれるくらい強かったのだ。


 しかし、裏カジノも裏ビー玉遊技場も、違法なのは確かだ。


 おかみに見つかれば、おしまいである。


 「こらあぁぁっ!!」


 教頭先生の怒鳴り声と同時に、私たちは一斉に逃げた。


 逃げた人数が多かったせいか(ギャラリーもいたので)めんは割れず、後での個人的なおとがめは、なかった。


 置き去りにした大量のビー玉は没収され、裏ビー玉遊技場は穴を埋められて、閉鎖になった。


 ああ、つまんない。


 ビー玉の女王は、クセモノ! であった。

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