第14話 ヘビ

 小学校の集団登校の集合場所で、ヘビ、が発見された。


 1メートルほどの、青大将である。


 うっかり、だとしても、男子児童の集まっている場所に出現するのは、小動物にとって、最悪の事態、を覚悟しなければならない。


「うほーっ、ヘビやー!」


「ヘビがおるでー!」


「つかまえろー!」


 ヘビは必死で逃げた。


 が、真っ黒に日焼けしこなをふいた足を持つ、当時の男子児童にかなうわけがない。


 すぐにしっぽをつかまれた。


 原始人のような奇声をあげる男子に、ヘビはぐるぐるぶん回された。


 ヘビの体は宙を飛び、別の男子に「キャッチー」と言ってつかまれ、また、ぐるぐるぶん回される。


 もしこれが、犬とか猫とか鳥ならば、正義感のある高学年女子に、


「チョットー、あんたたち、カワイソウだから、ヤメナサイよー」


 などと、気取った標準語で止めてもらえたりもするのだが、ヘビでは無理だ。


 止めたら、


「ほな、おまえにわたしといたるわー」


 と、ヘビを投げつけられでもしたら、いやだからだ。


 ヘビー・フィーバーでほたえまくる男子を遠巻きに、女子は黙っている。


 ヘビはぶん回され、手から手へとキャッチーされ、小学校まで連れていかれた。


 私が下校時、最後に見たときは、校門に結ばれていた。


 ごめんね、助けてやれなくて。私もヘビは苦手なんだ。


 男子児童は、クセモノ! である。

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