第13話 かえる

 私が小学校の頃、近所にきれいな小川があった。


 春、その小川に、かえるが卵をたくさん産んだ。


 透明ゼリーの中に黒い眼玉のある、かえるの卵。


 太陽に照らされ、小川の流れになびく藻にからまって、きらきらと揺れていた。


 私が、目の細かいあみを流れに入れてすくいあげると、きらきら卵ゼリーはいくらでもとれた。


 私はバケツに一杯、卵ゼリーをすくいあげ、家に持って帰った。


 卵ゼリーの入ったバケツを、庭のあじさいの木の陰に置いて、四角い木の板でフタをしておいた。


 そしてそのまま、私は卵ゼリーのことを忘れた。


 ある日庭で、母が、ギャ―――ッ! と悲鳴をあげた。


 以前、私が卵ゼリーを入れておいたバケツの、木のフタを開けたのだ。


 なんとバケツから、小指の先ほどの細かいかえるが、ぴょんぴょんぴょんぴょん、大量に飛び出てきたという。


 私はもちろん、こってり怒られた。


 しかし、卵が孵化したのはわかるとしても、そこからおたまじゃくしがどうやって生き延びて、かえるにまでなったのか、今だに不思議に思っている。


 かえるは、クセモノ! である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る