第10話 モテる男

 私は中学で、バドミントン部に所属していた。


 放課後、部活に遅れると、ひとりで基礎練習をしなくてはならない。


 その日、遅れた私はひとりで運動場を走っていた。


 突然、頭に衝撃がきて、私は倒れた。


 野球のボールが当たったのだ。


 そのボールを打ったのは、野球部の四番打者で、キャプテンのB君。


 まだ中学入りたての私は知らなかったのだが、B君は校内にファンクラブがあるほど、モテる男だった。


 B君は駆けつけると、私が「だ、大丈夫です」と言うにもかかわらず、謝りながら、なんと『お姫さま抱っこ』をした!


 ベタな学園ラブコメのようだった。


 私は、ほんまにこんなことあるんやー、と思いながら、皆の注目を集めつつ、保健室まで運ばれていった。


 私の頭はコブが出来ただけだったが、翌日、私の教室の廊下には、B君ファンクラブの先輩女子たちがやって来た。


 廊下側の窓から教室をのぞきこみ、私を指さし「ほら、あの子や」「あの子が、B君に抱っこされて……」「むかつくなぁ」


 私は再び、ほんまにこんなことあるんやー、いじめられるかも、と思って、おどおどしていた。


 もちろん、B君との間にラブなど発生せず、ファンクラブの先輩たちも、私の外見に、こいつはライバルにあらず、と納得してくれたのか、間もなく去っていった。


 学園コメディだけに終わった私は、クセモノ! である。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る