第9話 すもう部

 私の通っている中学には、すもう部があった。


 部員は3人だけだった。


 彼らは放課後、体操服の上から、白いまわしを締めて活動した。


 その恰好を笑う者もいたが、まわしがなければ、ぱっと見、何部かわからないのも事実だった。


 運動場の草むしりをし、その一角の土をきれいにならして、土俵を作った。


 だがせっかくの土俵を、まずバレーボール部が「ファイト! ファイト!」と言いながら、団体で周回ランニングをして踏み荒らす。


 もちろん、おもしろがってわざと、である。


 野球部、サッカー部、テニス部、柔道部、などなど、みんな団体で踏み荒らしていくので、いつも土俵を荒らされ、彼らはすもうをほとんどとれなかった。


 けれども、彼らは全国優勝を果たした。


 当時、中学にすもう部があるのは全国でも珍しいことで、ライバルがほとんどいなかったから、らしい。


 それでも、優勝は優勝である。


 全校集会で、彼らはたたえられた。


 土俵を荒らす者は、いなくなった。


 すもう部は素晴らしいクセモノ! であった。 

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