第5話 タクシー

 私が小学生だった頃。


 道で友達とふざけて遊んでいて、こけた。


 両手をばんざいするような格好で、こけた。


 そこへ運悪く、止まっていたタクシーがバックしてきて、私の手をひいた。


 うわあああん、と泣くと、タクシーはびっくりして前進し、もう一度手をひいた。


 母が呼ばれて駆けつけてきて、そのタクシーにみんなで乗って病院へ行った。


 治療後、母は言った。


「骨は異常ない。


 さすがにタクシー代は、タダやったわ」


 両手に包帯を巻いた私は、それを聞いて、どちらにもほっとした。


 私も、クセモノ! かもしれない。

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