第9話 新たなスタート
ルゼル達が起きてから森を進んでいく。
「あ、ありがとう、ずっと監視してくれてて」
「気にするなよ、俺の役目だ」
ルゼルを連れて歩いていく。
道中出てくるモンスターを剣を振りながら倒していく。
そんな俺を見てルゼルが口を開く。
「すごいよねクロノは」
「何が?」
「モンスターをこんな風に倒せるのが凄いと思う」
「あー俺は慣れてるからさ。雨天演習とかでモンスターを倒したり悪路を歩いたり」
流石に冒険者程動けはしないだろうが。
それでも奴隷の中じゃ動ける方だと自負している。
実際俺はディーノ達三人を圧倒出来るほどの力を身につけていたわけだし。
そうして森の中を歩いていると木々の間から村のようなものが見えてきた。
「あ、言っていた村ってあれのことでは?」
ルゼルの言葉に頷いて俺達は足早に村に向かっていった。
歩くと直ぐに村が見えてきて門の前にいた兵士に目を向けられた。
「何者だ?」
と槍を向けてくる。
え?
もしかして話が通っていないのか?と思いながらも名乗ろうと思ったけど女の人が先に俺たちのことを説明してくれた。
驚いたような目を俺に向けてくる兵士。
「分かった。入れ。それとすまないな、槍を向けたこと謝罪する」
兵士が俺を村の中に入れてくれる。その瞬間
「これから頑張ってね」
と先に村に入っていった。
俺は俺で兵士に質問。
「マーズさんはどこにいる?」
「マーズさんは今なら広場にいるだろう」
「ありがとう」
門を通り歩いていくと広場っぽいのは直ぐに見つかった。
とりあえずマーズに話を聞いてみようと思いルゼルと歩いていった。
「マーズさん」
俺が声をかけると振り返って驚いたような目で俺を見てくる。
「え?な、何故ここに?」
「え?」
独り言を言ってたじゃないか。
まさか独り言を聞かれてると思わなかったとか、そういう演技なのか?
でもそんなことないよな。多分。
「えっと、それはどういう?」
「君は本来ここにはいない人間だよクロノ。すまないな昨日は雨が降っていただろう?」
「は、はい」
「雨天時はデスワームが活発になる。デスワームは雨天時に能力が上がるんだ。それは奴隷では逃げきれないほどにね。偵察からは全滅だろうと言う報告だったが」
俺の顔を驚いた顔で見てくるマーズ。
「君はいったい何者なんだ?」
返答に困るな、そんなこと言われても。
俺はただの奴隷なんだから。
「それよりマーズさん、俺達はこれからどうしたら?」
そんなことよりも先に説明して欲しいことがあったので聞いてみた。
俺の正体なんてただの奴隷なんだからこれ以上何も答えようがないし。
「あー、それなんだが、逆に君はこれからどうしたい?」
「俺は冒険者とか剣士を目指してみたいんです」
「ふむ、そうか。少し見よう」
頷くマーズ。
それから俺に剣を渡してきた。
振り下ろしてみて、と言われたので剣を上に振り上げて振り下ろしてみた。
どうなんだろうか。
ちゃんと剣を習ってきた人達に我流の剣を見せるのはすごく恥ずかしいけど。
「難しい、ですかね」
「いや、全然いけると思うよ」
「そ、そうなんですかね」
「うん。見ている感じ君はかなり筋がいいし」
その言葉には驚いたな。
俺の筋がいい?
横でルゼルが自分の事のように喜んでいるが、でもどういう事なんだろう?
「俺はただ毎日ピッケルを振っていただけだけなのに?」
「それだと思うよ」
「え?」
答えると彼女は両手で剣を握って上に掲げた。
それを振り下ろしながら説明してくれる。
「ピッケルを振り下ろすのと剣を振り下ろすのと多分君は全く同じ振り下ろし方をしてるんだ。だから体に型が染み付いてるんだろうね」
な、なるほど。
「君はピッケルを振りながら剣の練習もしていた、と思えばいいと思う」
語ってくれた彼女。
俺がそんなふうに……?
「いきなり冒険者生活というのも中々ハードルが高いと思うからひとまず、この村で軽く村人の頼みを聞いてみる、とかでもいいんじゃないかな?丁度いいのがあるよ」
そう言ってマーズは俺に紙を渡してきた。
それは村人からの依頼書だった。
中に目を通すと、最近村の近くにスライムが出て農作物を荒らしているから討伐して欲しい、というものなようだが。
「私が頼まれたものだけど君に任せても、いいかな?」
「やってみます」
「あ、それと別に話す時はもっと砕けてもらっていいよ」
との事らしいので。
「わ、分かった」
とこれからは砕けて話すことにする。
さて、早速ルゼルを連れてこの依頼に行ってみようかと思ったが
「生き残りは君とその子だけか?」
と聞いてくるマーズに頷いた。
「多分だけど、デスワームに襲われてからのことは分からないんだ」
「そうか。すまないな。嫌なことを思い出させたかもしれない」
今までは仲間だった奴らだけどもう過去の話だ。
「いや、別に。もうどうでもいいよ」
俺はそう答えて依頼に向かうことにした。
また森の中に戻ってきて依頼のスライムを討伐していく。
「ご、ごめんね……私なにも出来なくて……」
と落ち込むルゼルに答える。
「別に気にしないでよ。誰だって初めはそんなものさ」
俺がスライムを全部倒せているしその辺は問題がない。
そう思っていた時
「グルルルルル……」
ウルフに囲まれていた。
ウルフが出るなんて聞いていないが森の中だからそりゃ出るよな、とも思う。
(スライムを倒すのに夢中で気付かなかったな……)
囲んでいるウルフは5匹だった。
その5匹が一斉に向かってきた。
「っ!」
一振りで三匹をとりあえず吹き飛ばしてから残りの2匹を順番に処理する。
その時最初のとりあえず吹き飛ばしただけの3匹が襲ってきた。
2匹までは処理できたが、続く最後の1匹
(どうしても処理が追いつかないな。まぁ負けるほどでは無いが……)
その時だった。
「伏せろよ、少年」
聞き覚えのない声が聞こえて俺は伏せた。
その時最後に俺に飛びかかろうとしていたウルフが真っ二つにされて燃えて灰となった。
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