二・五 近況報告

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 さて、とりあえず世界の中心たる二人と、不純物となってしまった迷い子に挨拶を終えたことを、ここに報告する。

 お前の世界を訪ねたものの、お前が図書館にいなかったので、手紙をここに残すことにした。学校というものに行き始めたのか? それもいいだろう。お前が集団に馴染めるのかという不安が全くないとは言えないが。

 それにしても、時間の流れ方が違うという点もあるだろうが、行き来しているこちらが気持ち悪くなるくらい、対称的な世界だった。対称的――つまり、王国の幸せという曖昧なもののために命を賭ける者たちと、幸せが当たり前すぎて、感じることも忘れてしまっている者たち。どちらがいいとも言わないし、どちらにも罪はないのだが、ただ、後者の方は俺にとってとても居心地が悪かった、とだけ言っておこう。

 少し訂正する。ヨセフ・ニコラスは、王国の幸せというよりも、カノン・ジュラのために命を賭けている。そもそも、あの二人の関係は一体何だ? 友達というほど関係が浅くもないし、恋人という訳でもなさそうだ。強いて言えば、姉弟に近いものを感じるが――あぁ、何でお前の使う言葉はこう貧弱なんだ。ドラゴンの言葉の方がよっぽど豊かだぞ。

 それにしても、あのヨセフ・ニコラス。何故彼のような人間があんな場所にいて、しかもルーク王国の人々の中に溶け込んでいるのか……。謎だ。いや、大した問題ではないのかもしれないが。

 さて、井伏真緒は面白い子だとは思う。けれど、暴走癖がある可愛げがない頑固者だ。非日常に憧れを抱く安藤勇希という名の少年に、憧れを抱いている。持ち前の無邪気さで。全くもって、危なっかしい。安藤勇希も、井伏真緒も。特に安藤勇希、非日常ほど恐ろしいものはないというのに、それを知らない。それに着いて行こうとする井伏真緒もまた然りだ。いつか、全てが壊れてしまうんじゃないかと思うのは、俺だけか?

 それにしても、全く彼らは何故そこまで他者に思いを馳せられるのか、他者のために動けるのか。俺には理解ができない。無理もないだろう、俺にとって他者の存在などないに等しい。対等な者がいないからだ。〈一律の番人〉、お前はどうなんだ。お前も他者を思うことで生きられる者なのか? ……あぁ、すまない。俺にしては無意味な質問だった。

 一体、俺は何なのだろう。決まった姿も名もなく、どこの世界の住人でもなく、何をするでもなく、ただ放浪することしかできない。彼の三大神よりもずっと孤独……。

 俺は何を書いているのだろうな。自分が孤独だと書いてしまった。全く、俺も自分がここまで愚かだとは思っていなかった。この上なく愚かで、低俗だ。反省する。

 あと少しで、全てが終わるだろう。また報告する。では。

                        

追伸

せっかくお前に貰ったヒースクリフという名前を使う機会があったというのに、俺 の正体が奴らにバレているも同然になってしまった。けれど、俺は結構この名が気に入ったとだけ言っておく。(名など意味がないというのが俺の口癖なのに、おかしなものだ)


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