第26話 Aランク依頼
昼食を食べ終わった俺たちは冒険者ギルドへと来た。3人で扉を開けてギルドの中へと入る。シェスカが受付へと歩いて行った。交渉をするんだろう。
シェスカがしばらく受付の人と話していると、唐突に受付の人がこちらを見てギョッとした。その後シェスカに何かを喋り慌てて奥へと引っ込んでいった。何があったのかと思ったら、シェスカがこっちこっちと俺たちを呼ぶので俺とルナはシェスカの方は歩いて行く。
「どうしたんだ?」
「いやそれが、私がパーティメンバーの名前を言ってルフレとルナがいる方向指さしたんだけど。ルフレの顔を見た途端職員の人があたふたし出して奥に引っ込んでいっちゃったの」
「なんでなのよ。私たち何もしてないじゃない」
「確かに、そんな慌てられるようなことはしてないと思うんだがな」
俺たちが揃って首を傾げていると奥からさっきの受付の人が出てきた。
「ルフレさんとそのパーティで間違いないですか?」
「ああ。同じ名前のやつがいないのであれば俺だな」
「そうですか。ギルドマスターがお呼びです。執務室に来ていただけますか?」
受付の人がその発言をした瞬間、周りがザワザワし始めた。あんまり目立ちたくはないんだが。好奇の目が俺たちに向けられる。
「いきなりどうしたんだ? 俺たち特に何もしてない気がするんだが」
「いや、そうなんですが……」
「大丈夫だよ! 特に何もしてないんだし!」
シェスカが言うなら大丈夫か。
「わかった」
俺が返事をした途端、受付の人の顔があからさまにホッとした。怖がらせたかな。申し訳ない。
「ありがとうございます。それではご案内しますね」
俺たちはギルドマスターの執務室へと案内された。
─────────────────────────
「ギルドマスター、ルフレさん達をお連れしました」
「おぉ、来たから入れてやってくれ」
「どうぞ」
俺たちは執務室へと入る。ギルドマスターの口調からとくに怒られることはなさそうだ。安心安心。
「よう。まあまずは座ってくれや」
「失礼する」
俺たちが入ったことでギルドマスターは席をたち、ソファーへ座ることを俺たちに俺たちにいった。自身も俺たちが座る方とは逆の席に座る。
「元気にしてたか?」
「ああ、おかげさまでな」
「そいつは良かった。俺としては元気すぎて少し困ってるくらいなんだがな。国王からお前のランクをAにするようにって依頼が来てるんだが? なにをした?」
「いやぁ、言っていいのか?」
「いいんじゃないかな? どうせ後からバレるからね!」
近衛騎士のシェスカからお許しを得たので今回Aランクに昇格するに至った経緯をギルドマスターに報告する。
「なるほどなぁ。そんなことになっているとは……」
「ああ、すぐに報告に来なくてすまなかった」
「いや、それはいいんだ。今聞くことができたからな。報告感謝する。全くお前は何なんだ。登録して1週間かそこらでAランクだと? 冗談も大概にしてくれ全く」
「俺だって何が起きたかわかってないんだ。いきなりAランクだなんて言われて正直びっくりしてるよ」
「まぁともかく昇格おめでとう。ルナもだな、ルフレと出会ってから急に頭角を表してきたなぁ」
「えぇ! とてもいい出会いができたわ!」
ルナが耳をピンッと立てて、尻尾をフリフリさせながら胸を張って答える。そこまで真正面から言われると恥ずかしいな。
「この様子だとシェスカ団長の方もか?」
「うん! なんと言ったってルフレの才能を最初に見つけたのは私だからね!」
シェスカもだよ、なんでそんなに自信満々に答えれるんだ。俺が縮こまっていると、再びギルドマスターが俺の方を向いて話しかけてきた。
「だそうだぞ? お前はどうなんだ?」
「俺には勿体無い仲間だと思うよ。感謝してるさ。出会えて良かったよ」
「で、今日はAランク依頼の受注だったか?」
スルーかよ! 絶対楽しんでるだろこのおっさん! 俺が睨むとギルドマスターはそれはもう満遍の笑みを向けてくるのだった。
「そう! 何か私たちでも受けれる依頼はない?」
俺の代わりにシェスカがギルドマスターの質問に答える。ギルドマスターはそれを聞いてソファから立ち机へと移動する。
「そうだな、うむ。これなんかどうだ?」
俺たちはギルトマスターが机の上から取り出して手渡された依頼書を見る。
「あ、Aランク依頼からは、ギルドリングじゃなくて紙の依頼になるからな。気をつけてくれや」
リングに表示されなかったのはそういうことだったのか。危険性が上がる分、簡単には受注できないようになっているんだろう。
─依頼─
炎龍討伐
依頼主:ウルカヌス村長
報酬 :白金貨 50枚
場所 :ウルカヌス火山内部
危険度:★★★★★
「なに!? ドラゴン討伐!?」
ルナが驚いたのか耳が伏せ、尻尾の毛が逆立ち膨らんでいる。
「おードラゴンか! いいね!」
シェスカは対照的にノリノリだ。
「行けると思うか?」
俺はギルドマスターに確認を取る。
「正直俺は、お前らなら行けると思ってこの依頼を選んでいる。それに俺は実力を押しはかる目は鍛えられているつもりだ、これでもギルドマスターだからな」
「なるほど、ならこの依頼受けさせてもらおう」
「受けるの!?」
ルナだけまだ心配なようだ。
「大丈夫だよ! ルフレもルナもここ数日でさらにレベルが上がってるし、負けないよ!」
「そ……そう?」
ルナが先ほどとは一転して尻尾の膨らみが収まり、耳がぴょこぴょこと忙しなく動き始める。
「そうだよ! 挑戦してみよう!」
「ヴィルさんも褒めてたぞ、大丈夫だろう」
「わかったわ。頑張る」
「全員の意見は一致したようだな。じゃあこの依頼、受注するぞ。気をつけて行ってこい」
「ああ、行ってくる」
俺たちは初めてのAランク依頼を受注した。俺たちは執務室を出る。
「今日は夕方になるから、必要なものを買い揃えて明日出ることにしよう」
「わかったわ! じゃあ買い物行きましょう!」
「そうだね! 泊まりがけになるし!」
俺たちはすぐにギルドルームを出て、食料品等を買い揃えに行った。
─────────────────────────
通りで買い物が終わった後、宿へと帰る。
「おかえりなさいませ!」
「ああ、ただいま。今日でここに泊まるのは最後にしようと思うんだ。明日から遠征でな」
「そうですか! 今日まで当店をご利用いただきありがとうございました! また王都に戻ってきた時には当店をご利用ください!」
「ああ、その時はまたお世話になるよ」
俺たちは部屋へ移動した。
「今日でこの部屋ともお別れか!」
「そうね、少し寂しいわ」
シェスカとルナが少し寂しそうな表情になった。
「けど、明日からはみんなで遠征だぞ? 楽しみじゃないか?」
「そうね! 楽しみだわ!」
「うん! 頑張ろうね!」
「ああ、頑張ろう。明日は早いし今日はもう寝て備えよう」
「「「はーい」」」
ヴィヴィもまたいつの間にか擬人化しており、三人が元気よく返事をした。各々入浴を済ませ、明日に備えて早く眠った。
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