第25話 ゲーム!

 俺はまだソファーの上で寝ている。ログインしたはいいもののヴィヴィが俺の上で寝ているために身動きが取れず、シェスカとルナもまだ寝ていて起こすわけにもいかないのでログインしてすぐの状態のままなのだ。せめてヴィヴィだけでも起きてくれないかな。


 そう思ったと同時にヴィヴィが動き出した。


「ん……。ルフレ。起きてた?」


「ああ、ついさっきな」


「ん、そっか。おはよ」


「おはよう」


 ヴィヴィが起きたので、俺は仰向けの状態から体を起こしソファに座る。するとすかさずヴィヴィが俺の膝の上に座ってくる。


「ソファは広いんだから、隣に座りなよ」


「や、ルフレの膝がいい」


「なんで」


「ここはヴィヴィの指定席」


「そうか」


 動く気はないらしい。膝に座っている彼女から暖かな体温が伝わってくる。ヴィヴィはどうなんだろう。剣なのに体温は感じるんだな。


「ヴィヴィ、あったかいな」


「ん」


「剣なのに体温あるのか?」


「インテリジェンスウエポンは生物に分類される。だから私から体温が感じられるのも当然」


「そうか、不思議だな」


「そう? インテリジェンスウエポン自体がなかなか出てこないから知らないのも無理はない」


「そう言ってくれるとありがたいよ。無知ですまない」


「んーん、気にしないで」


 不思議だな。やっぱりゲームの世界は違う。だが、やっぱりゲームにしてはあまりにもリアルすぎるんだよな。現実じゃない現実みたいな。


「二人はまだ起きそうにないな」


「ん、昨日も夜遅くまで話してた」


「ガールズトークってやつか。なら俺が介入していいものじゃないな」


「楽しそうだった。二人ともとても仲がいい。ヴィヴィは眠たくてすぐに寝ちゃったけど」


「そうか、仲良いのは本当にいいことだ。じゃあ、あいつらが起きるまで何かしてるか」


「ん、ゲームしよう」


 そうして俺とヴィヴィは、昨日夜更かしをしていた、シェスカとルナが起きるまで、宿の談話室から借りてきたボードゲームや、チェスをして時間を潰した。ちなみに、ヴィヴィはものすごくチェスがつよかった。一戦も勝てなかったです。


 しばらくすると、シェスカとルナが起きてきた。


「二人ともおはよう」


「「おはよ」」


「よく眠れたか」


「うん! ごめんね起きるの遅くなっちゃって」


「いや気にしないでくれ、別に急ぐ用事はないんだ。ゆっくり生きようじゃないか」


「ありがとう。私シャワー浴びてくるね!」


「ああ、いってらっしゃい」


 シェスカは寝起きがものすごくいい。起きてすぐシェワーを浴びにいった。羨ましいね、俺は現実にいる時五分おきにアラームを鳴らさないと起きれないのに。だが、前は寝起きが良かったはずのルナが今日はまだ布団にくるまっている。


「おい、ルナ。起きないのか?」


「んー……。もう少しだけ」


「わかったもう少しだけだからな」


「ん」


 まだ寝ぼけているのか、ヴィヴィみたいな返事の仕方になっている。まあ昨日の疲労もあるし、何より寝不足の状態で依頼をこなしても命の危険が高くなるだけだからな。しっかり寝かしてあげよう。お風呂場からはシェスカの上機嫌な鼻歌が聞こえる。いい睡眠ができたようだな。良かった良かった。


「今日何しようか」


「依頼受けにいく?」


「そうだな」


 Aランク依頼って受けれるのだろうか。俺は確認するためにステータスを開いた。しかし、そこではまだ確認することができない。


「Aランク依頼まだ受けれないっぽいな」


「そうなの?」


「ああ。まだダメっぽいな」


「多分私が受付に言ったら受けれると思うよ!」


 シェスカがお風呂場から出てきた。


「そうなのか?」


「うん! 対外的にはまだAランクではないから無理なんだけど。多分ギルドに話は通ってるからもう行けると思うな」


「なるほどな、じゃあ今日はまず冒険者ギルドに行ってみようか」


「わかった! ルナ起こすね!」


「あ、もう起こすのか?」


「流石に寝すぎだよー。これ以上寝ると逆に体が鈍っちゃう!」


「確かにな、よろしく頼む」


 シェスカはルナに声をかけ、彼女のことを起こした。まだ目が全然開いていないままシェスカに連れられてお風呂場に行ってシャワーを浴びさせられるようだ。


「2人がシャワーから帰ってくるまでなんかするか」


「トランプしよ」


「了解、スピードするか」


「ん、負けない」


 俺たちはスピードをする。現実世界ではあり得ない動体視力のもと、凄まじい速度でゲームが進む。シェスカとルナが帰ってくるまでに10試合はやった。5勝5敗だった。互角なようだ。


「いい試合だった」


「ああ、次は負けない」


 俺とヴィヴィはお互いの健闘を讃えがっしりと握手をした。


「何してるのよ」


 ルナが脱衣所から出てきた。握手をする俺たちを見てツッコミを入れてくる。突っ込めるくらいには目が覚めたらしい。シャワー浴びたなら当然か。


「いい試合ができた」


「ああ、100年に一度の激戦だったな」


「そ……そう」


 ルナがちょっと引いた。ふざけすぎたか。


「楽しそうだね! 私もやりたかった」


「一戦やるか?」


「やるなら私も混ぜなさいよ!」


 俺たちはギルドに行くはずが、午前中はゲーム大会に費やしてしまった。反省だ。



 いや、楽しかったからいい。全然いいじゃないかそれで。現実ではできない、自分たちのやりたいことができるスローライフ。最高だ。


 俺たちは散々遊んでから一回の食堂へ食事をとりに降りた。


「こんにちは」


「ああ、こんにちは。食事を取りたいんだが」


「わかりました! 三名様ですね。お好きなテーブルへどうぞ!」


「ありがとう」


 ヴィヴィはもちろん剣の状態なので、俺とシェスカとルナは3人で席についてメニューを開く。各々が何を頼むかを決めて店員さんを呼んだ。


「すみませーん!」


 シェスカの声早く通るな。


「はーい! ただいま!」


 店員さんも綺麗な大きい声で返事をする。


「ご注文は何になさいますか?」


 俺は唐揚げ定食を、シェスカとルナはハンバーグ定食を注文した。ここの食堂は現実世界の大衆食堂のような感じだな。注文してからしばらくして料理が出てくる。


「お待たせしましたー。鉄板の方熱くなってありますのでお気をつけください!」


「ありがとうございます」


 とても美味しそうだ。俺のプレートには揚げたての唐揚げがライトの光を浴びてキラキラと光っている。シェスカとルナのプレートには今にもはち切れんばかりに膨らんだハンバーグが乗っている。絶対に肉汁が溢れ出してくるやつだ。


「「「いただきます!」」」


 俺たちは食事を味わいながらあっという間に食べてしまった。見た目通り、噛めば噛むほど肉の味が溢れてきて、口の中がジューシーで満たされた。シェスカとルナもハンバーグを頬張り顔を蕩けさせている。


「ねーねー! ルフレの唐揚げ一口だけくれない?」


「私もくれないかしら」


 シェスカとルナからそんな提案がなされる。


「いいぞ」


「やった! 代わりに私達のハンバーグあげるね!」


 シェスカとルナからそれぞれハンバーグが渡される。俺はその代わりに1人ずつに唐揚げを分けた。2人とも唐揚げを美味しそうに食べている。ハンバーグも大変美味しかったです。


「「「ごちそうさまでした」」」


「お粗末さまです! また来てくださいね!」


 そうして、食事を食べ終わった3人でしっかりと店員さんにお礼を言ってから、ギルドへと足を向けたのだった。

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