第22話 鍛錬
広場で作ったサンドイッチを食べて、俺たちはヴィルネアスさんのカフェへやってきた。
「いらっしゃいませ」
「ヴィルネアスさん、おはよう。修練場使ってもいいか?」
「もちろんです。どうぞお入りください。それと、ヴィルネアスは長いでしょう。ヴィルかマスターとお呼びください」
「じゃあヴィルさんで! 俺もルフレで頼む」
「はい。よろしくお願いします、ルフレ。職業を獲得したのですか?」
「ああ、聖騎士になった」
そう答えた瞬間、ヴィルさんの顔がいきなり強張った。普段冷静なヴィルさんには珍しい今までに見たことない表情だった。
「ルフレ、それは私以外に誰か知っていますか?」
「いや、パーティメンバーだけだな」
「そうですか、聖騎士になったことは誰にも言わない方がいいです。できるだけ隠してください」
「なぜだ?」
「教会です。教会は聖騎士を探しています。聖騎士は悪魔に対して強力なカードとなります。聖騎士であることがバレると間違いなく教会に囲われ、自由に動くことができなくなります」
「それはまずいな」
「はい。ですので、対外的には騎士と名乗っておいた方がいいでしょう」
「わかった。そうするよ」
「はい、気をつけてください」
「ありがとう、気をつけるよ」
「では、修練頑張ってくださいね」
「ああ、行ってくる」
俺たちは地下の修練場へ移動した。ドアを開き、全面が真っ白の部屋へ入る。
「シェスカ、稽古つけてもらってもいいか? レベルは上がってきたが、剣術スキルのレベルが上がらないんだ」
「いいよ! 今日は1日頑張ってレベル上げをしてこう!」
「私は隣の修練場でやってくるわ」
「ルナさんのお相手は私が務めさせていただきましょう」
「ヴィルさん。いいのか?」
「はい、近接戦闘も心得ておりますので」
「よろしくお願いするわ」
「助かる。俺たちではルナを鍛えられないからな」
「マスター! ありがとう!」
「いえいえ、ではまた後ほど」
そう言ってルナとヴィルさんは隣の部屋へと移動していった。
「シェスカ、これから剣術のレベルを上げていく上で何が大事なんだ?」
「んー、ルフレもう結構形になってきてるからなー。もう、ひたすら模擬戦形式で私から技を盗んで!」
「やっぱそうだよなぁ。基礎はだいぶ出来てきたと思うんだが、あとは応用ってことか」
「そうだね! あとは、縮地とかもできるようになるといいかも! これは見てやった方がいいから! 早速やってみようか」
「わかった」
そういうとシェスカはいきなり体を屈ませ、部屋の反対へ移動した。いくら部屋の中といえど結構な距離があるぞ! これ初めて会った時に子供助けた時にしてたやつか!
「今のが縮地ね! じゃあやろうか!」
彼女は縮地を使いこちらへと攻撃を仕掛けてきた。
「……ッ!」
はっやいなぁ!
「やっぱりルフレはすごいね! 今の防げる人、騎士団でもなかなかいないんだよ!」
それに返事をしようとしたが一息つく前に二撃目がくる。
「さあさあ! スキルは実戦の中で身につけよう!」
「ああ! わかったよ!」
俺は、防ぎつつ攻撃できる隙を伺う。それにしても縮地難しいな。ただただ地面を強く蹴ってるくらいにしかならない。
「縮地は、身体強化よりももっと魔力を鋭く練らないとダメだよ! こう、ギュッて!」
「ぎゅっとか言われてもわかんないっつうの!」
「まあまあ! やってみてよ!」
「言われなくてもやってやるよ!」
ただただ強化するだけじゃいけないってことか。今までよりも高濃度の魔力を、短時間で。
お。なんかちょっといけた気がする。
「すごい! そうだよそうだよ! その感じ!」
合ってたらしい。俺は先ほどと同じことをシェスカの攻撃を避けながら繰り返す。
Information
縮地を獲得しました。
獲得できたらしい。試しに俺はシェスカへと肉薄してみる。
「うわぁ! もう獲得したの!? 早くない!?」
「これで対等だ! これからもっと行くぞ!」
「いいね! これでやっと私も本気を出せるよ!」
シェスカの攻撃のペースが上がった。周りから見てたらもう何が起こっているのかわからないだろう。なんとか俺もそのペースについていく。
シェスカがジャンプして足が地面から離れた瞬間を狙い攻撃をした。が、シェスカが空中を蹴りもう一段ジャンプして俺の首筋に模造刀を当てた。
「なんだよそれ!」
「いやぁ、危なかった。これで私の勝ちだね!」
「くそぅ。もう少しだったのにな」
「さっきのは重縮地っていう縮地の応用だよ! 縮地よりも強い力で空中を蹴ることで空気を一時的に凝縮して足場を作るの!」
「なんだよそれ」
「縮地ができたらすぐできるようになるんじゃないかな?」
「やってみるか、もう一戦頼む」
「いくらでもいいよ! もっと戦おう!」
俺もルナもだがシェスカも戦うことが好きだよな。二戦目からはさらに高度な戦いになり始めた。今までは地面だけの二次元的な戦いだったが空間を利用した三次元的な戦いになっている。俺も四戦目くらいで重縮地を獲得し、さらに三次元的になる。俺たちはそこから昼くらいまで戦い続けた。
「はぁ……。疲れた」
「結構やったね! どうする? もう一戦やる?」
「俺のこの様子を見てまだそれ言うのか? なんでシェスカはまだ元気なんだよ」
「そんな柔な鍛え方してないから、これくらい余裕だよ!」
「そうか」
「一度そこら辺で休憩してはいかがですか?」
ヴィルさん! 助かった! 後ろには、俺と同様にへとへとのルナがいた。
「じゃあお昼にしようか!」
「そうしてくれると助かるよ」
そうして俺たちは昼休憩に入った。
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