第20話 シェスカとルナ
俺たちは、精霊の泊まり木へと到着した。
「おかえりなさいませ!」
「ああ、ただいま」
俺は、相変わらず元気な受付さんに挨拶をする。俺たちパーティを見て、彼女は少しムッとした表情が漏れたがすぐに営業スマイルへと戻った。そうだよな、また一人女の人が増えてるからそういう表情になるのもわかる。しかし、不可抗力だ、俺にはどうすることもできなかった。仕方がないことだ。許していただきたい。
「そちらの方は?」
「新しいパーティメンバーだ」
「そうですか。すみません。ただいま全部屋満室となっておりまして。代わりのお部屋をご用意することができないのですが」
「かまわない。俺がソファーで寝る」
「わかりました。それではこちら、お部屋の鍵になります」
「ありがとう」
俺たちは鍵を受け取って部屋に向かった。
「おぉ〜! 広いお部屋だね!」
「そうだな、前回運良く広い部屋しか余ってなかったらしくてこの部屋になったんだ。ベットは二人で使ってくれ。あ、ヴィヴィもか」
そう声をかけるとヴィヴィが光り人化する。
「ん、ありがとう」
「ああ、今日はゆっくり休もう」
「あ! お風呂もある!」
「もう溜まってるんじゃないか?」
「本当! ねえ! ヴィヴィちゃん一緒に入らない?」
「ん、いいよ」
そう言ってヴィヴィとシェスカは溜まったばかりのお風呂へ入るために脱衣所へと消えていった。俺は、ソファーの前へと歩いていき、装備品などを片付け始めた。やはり、職業についたことによって得ることができた装備品はいいものばかりだ。Sランクに匹敵するんじゃないか? など色々観察していると、突然服の裾を摘まれた。
「ん? ルナか、どうした?」
「あの……私も…頭撫でてもらってもいい?」
振り向いたところには、耳がぺたんこになり、少しうつむき気味で頬が紅潮し今にも消え入りそうな声でお願いをしてくるルナがいた。普段のサバサバしている感じとは打って変わって潮らしい感じだ。
「急にどうしたんだ?」
「二人きりになったし。私だけ撫でて貰ってない」
語尾になるにつれてどんどん声量が下がり最後の方は聞きとることができなかった。
「なんだって?」
「もう! いいから撫でなさいよ!」
いつものルナだ。先ほどまでのしおらしいルナは見る影もない。
「わかったよ。ルナも、今日はありがとう。俺のせいで気絶させてしまってすまない」
そう俺はルナに伝えながら彼女の頭を撫でる。
「いいのよ。気にしてないわ。気絶したのは私の落ち度だもの。それにルフレに謝られたくなんかない。こういう時はありがとうだけで十分なの。こちらこそ、デュラハン倒してくれてありがと。その……かっこよかったわ」
「ああ、守れてよかったよ。これからもよろしくな。ルナがいなくなると俺もしんどいからな」
「そっか。これからも強くなれるように頑張るわ。これからもよろしくね」
そう言ってルナは俺から離れ、ベットの方へいった。相変わらず尻尾は揺れている。
「ルフレ! 上がったよ!」
シェスカがお風呂から上がったらしい。振り向こうとした瞬間」
「わーーーー!!」
ものすごいスピードで突っ込んできたルナにソファーへと突き飛ばされてしまった。
(ゴンッ!)
「あ……」
ものすごい音がして、俺はそのまま気を失った。
─────────────────────
「ルナ!? 何してるの!? ルフレ気絶してるよ!」
「あんたのせいでしょうが! なんて格好で出てきてるのよ!」
シェスカは、あろうことか下着も何も身につけず上からバスタオルを巻いただけの格好で脱衣所から出てきた。そんな格好ルフレに見せれるわけがないでしょう。
シェスカは初めは自分がなぜこんなに言われるのか理解していないらしかったが。徐々に自覚してきたのか、どんどん顔が赤くなっていきそのまま脱衣所へと消えていった。
「シェスカ、ここをどこだと思ったの?」
「家にいる時と同じ感じで出ちゃった……」
騎士団長様も何かを間違えることがあるのね。私はちょっと親近感を覚えた。
「多分、ルフレ明日の朝まで起きないから。ゆっくり拭いてから出てきなさい。あんたたちが上がったら私も入るから」
「「はーい」」
脱衣所から二つの返事が聞こえた。ルフレ、大丈夫かしら。ごめんなさい。私はルフレを、ソファーの上に寝かせて、毛布をかける。
「上がったよー」
シェスカ達が再び脱衣所から出てきた。今度はちゃんと服を着ている。
「じゃあ私も入ってくるわ」
「いってらっしゃい」
私は脱衣所へと入り服を脱ぎ、お風呂に行く。シャワーを出して頭からお湯を浴びる。体に溜まった疲労が拭い去られていくような、そんな気持ちよさがある。その後、しっかりと湯船に浸かり体を温めた後、私はお風呂から上がった。
脱衣所から出ると、シェスカがヴィヴィを寝かしつけていた。もうすでに規則的な寝息を立て始めている。私はシェスカ達が寝ているベットとは別のベットに腰掛ける。
「こうしてみると普通の女の子なのよね」
「そうだね、剣だって言われても信じられないよ」
「私はここ数日、信じられない事ばかり起こっているんだけど」
「あはは、ルフレは本当に規格外だよね。私もここまでとは思ってなかったよ」
「そうよね、冒険者になって数日でAランクだもの。めちゃくちゃだわ」
「ね! これからもっとすごくなると思うよ!」
「置いていかれないように頑張らないと」
「私も気を抜いてたらすぐに追い抜かれちゃいそう」
そう答えながら、ヴィヴィを寝かしつけ終えたシェスカが私が座っている方のベットへ移ってきた。
「話変わるんだけど、シェスカってルフレのこと好きよね」
「にゃに!? きゅっ、急にどうしたの?」
「……にゃに……フふっ」
「もー! いじらないで!」
「ごめんなさい…でも可愛くってついね? そんなに騒いだら2人とも起きちゃうわよ。で、どうなの?」
「う……。好き……だと思うな。こういうの初めてだから。よくわからない」
「やっぱりそうなのね。私も好きよ。ルフレのこと」
「ルナも好きなんだ。そっか……。」
私の言ったことを聞いて、シェスカの顔が暗くなる。
「ちょっと。諦めるとか言い出さないでね」
「え?」
「その顔。本気でそう言うつもりだったのね。私は嫌よ、私のせいで誰かが気持ちを伝える前に諦めるなんて」
「でも1人しか」
「誰を選ぶかなんてルフレの決めることよ。さらにこの国一夫多妻制でしょ? 私はシェスカとなら上手くやれる。2人で押しかけましょう?」
「いいの?」
「うん。それに今のルフレを見てる感じだと私たちの気持ちには何も気付いてないみたいだし」
「ルナ! 大好き!」
そう言って、シェスカは私に向かってダイブし、そのまま私はベットに押し倒された。
「ちょっ! 危ないじゃない!」
「えへへ、嬉しかったんだもん!」
そうシェスカは私の胸の間から顔を覗かせ言い訳? をした。
「正直怖かったの。さっきも言ったけど私誰かを好きになるとか初めてなの。これが本当に好きなのかどうなのかもわからない。だから一緒に頑張ってくれるって言ってくれたとき本当に嬉しかった! ありがと!」
「そう。よかった。ねぇ、シェスカがルフレを好きになった理由教えてくれない?」
「もちろん! ルナも後で教えてね! 私は……」
そうして私とシェスカは、2人で並んで寝転ぶ形になり眠たくなるまで話していた。
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