第16話 階層ボス
俺が扉を開けると、中にはキングゴブリンが構えていた。その体躯は通常の人間の三倍は裕にあり、手には大きなナタが握られている。部屋は直径30mはあり、縦に10mほどの大きさでしっかりと戦えるようになっている。
奴は、俺が入ってきたとわかるや否や餌がやってきたとばかりに下品な笑みを浮かべた。これから俺に殺されるとは、欠片も思っていないのだろう。
「おい、その気持ち悪い笑み。すぐに消してやるよ」
俺の挑発が伝わったのか、こちらに向かって吼える。手に持っているナタを大かく振りかぶり、横薙ぎにこちらへとと振ってきた。
「おいおい、お前そんなわかりやすい攻撃当たるわけないだろうが。遊んでんのか?」
俺はその一閃を難なく避け攻撃へと転じる。ヴィヴィを抜き放ち、キングゴブリンの懐へと入り込む。エンシェント・エイプと同じように足の腱を切断してやろうと思ったが、エンシェント・エイプよりは賢いらしく背後を取られないように立ち回ってくる。俺は方針を切り替えた。
その瞬間、キングゴブリンがナタを振り下ろしてきた。それをスレスレで避け、すぐに振り下ろしてきた腕に飛び乗り顔の方へとダッシュする。大きいとはいえ体長は6mほど、腕はその半分3mといったところだろう。すぐに顔は到達できたため、そのままの勢いで両目を切りつけ視界を封じる。
そこからの展開は早かった。視界を封じられたことで、俺がどこにいるかを音でしか判別できず出鱈目にナタを振り回すだけの単調な攻撃になった。俺は、マジックスラッシュ等を織り交ぜながらどんどん体力を削っていき、ついに奴は膝をついた。その瞬間を逃さず、俺は接近し奴の首を切り落とした。
「あっけなかったな、エンシェント・エイプより少し強いくらいだろうか」
Information
レベルがアップしました。
Lv.08→→→→→→Lv.09
1人で倒したためレベルがアップしたらしい。エンシェント・エイプの時よりは上がってないな。自分のレベル自体が上がり、レベルアップに必要な経験値も上がっているから仕方ないだろう。ボス部屋の扉は開け放たれていたので、俺はキングゴブリンの亡骸を回収し、シェスカとルナの元へ帰る。
「お疲れ様! やっぱりルフレはすごいよ! 騎士団にもキングゴブリンを単騎で討伐できる人はなかなかいないのに!」
「お疲れ、相変わらず出鱈目な強さね」
「ありがとう。次はルナだな。大丈夫だとは思うが、気をつけろよ。慌てずにいけば大丈夫だ」
「そうね、気を引き締めていくわ」
「いってらっしゃい!」
「行ってくる。もしもの時はよろしく」
そういってルナはボス部屋へと入っていった。再び部屋の中にはキングゴブリンがスポーンしている。先ほどと同じように下品な笑みを携えて。
ルナは、そのキングゴブリンが臨戦体制に入る前に超速で接近する。勢いそのまま、ガントレットによるストレートを放つ。キングゴブリンは驚いていたが、なんとか防御が間に合ったようだ。両腕を体の前に重ね防御の姿勢を取る。
しかしながら、ルナのスピードが乗ったストレートには抗えずそのまま後ろへと吹き飛んでいく。自分の何倍もの質量がある相手を吹き飛ばすってどういうことだよ。あいつも大概、出鱈目だと思うんだが。
直接ルナの攻撃を受けたキングゴブリンの左腕がだらんと垂れ下がっている。骨折したらしかった。もう使い物にならないだろうな。激昂したキングゴブリンがルナへと接近していく。しかしながら巨体であるが故に、ルナのスピードに対応することができておらず翻弄されている。
その間にも、キングゴブリンの体にはルナによる殴打のダメージが蓄積されていった。それによって、ただでさえルナについていけてなかったキングゴブリンの動きがさらに鈍くなっていく。合わせてルナが攻撃できる回数も増えて、最終的にはキングゴブリンの体力が尽き動かなくなった。ルナの勝利だ。
「ルフレー! 勝ったよー!」
ルナがよほど嬉しかったのか飛び跳ねながらこちらへ手を振っている。いつもはちょっとクールぶってるくせに、嬉しくなると無邪気になるんだよな。彼女も自分のアイテムボックスの中にキングゴブリンの亡骸を収納しこちらへやってきた。
「お疲れさん」
「ルナお疲れ様!」
「ありがとう。思ってたよりも安全に討伐できてほんとによかったわ。レベルも上がったみたい。なんかルフレたちと出会ってからレベルの上がり方が半端じゃないけど」
「確かにそうかもね! 」
「シェスカは討伐しなくていいのか?」
「一度討伐経歴がある人は自由に出入りできるから大丈夫!」
「そうか、じゃあ少しここで休憩してからにしないか? お昼を一気に食べて満腹の状態になると集中力が下がるしな」
「そうだね! 軽く間食食べてから行こうか!」
俺たちは、一層ボス部屋の前のスペースに荷物を広げ、事前にヴィルネアスさんに渡されていた間食を取ることにした。一人二つずつバスケットを持たされていたのだ。さすがシェスカの師匠、俺たちがこうしてこまめに休憩をとるであろうことも想定してお昼ご飯を二つに分けてくれていた。
それぞれ、バスケットにかけられている布を開ける。そこには瑞々しい野菜や卵、ハムなどを挟んだサンドイッチが詰められていた。味も、汗をかくことを想定してか、しっかりと味がつけられていてものすごく美味しい。
「美味いな!」
「そうね! とても美味しいわ!」
「でしょ! マスターの料理は全部美味しいんだよ!」
「入ってる具材が結構違うんだな?」
「そうみたいね」
「ねぇねぇ! ルナのたまごサンド一口ちょうだい! 代わりに私の照り焼きチキンサンドあげる!」
「いいわよ。あーん」
「あーん! ん! 美味しい! お返し!」
「あーん。 美味しいわ」
シェスカとルナは自分のバスケットにはないものを交換し始める。こうして俺たちの小休止の時間は過ぎていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます