第17話 異変
俺たちは、一層のボス部屋前の休憩スペースで休憩をした後、二層へとやってきた。階層の広さはさっきよりも少し広いくらいだろうか。しかし、一層のような洞窟ではなくどこかの屋敷の廊下のような雰囲気の階層だ。敵もおそらくは人型の敵が出てくるんだろう。
「この階層はこういう感じなのか」
「そうだね。出てくる魔物はスケルトンとかデュラハンとかだよ!」
そう答えた瞬間、廊下の突き当たりからスケルトンの集団がやってきた。身長は一般男性くらいだ。
「スケルトンは頭蓋骨を破壊すると倒せるよ!」
「了解。ワンパンだな」
「そうね、ワンパンね」
俺はともかく、ルナもガントレットを手に入れてから一撃が強くなってるから二人ともスケルトンに関しては一撃だろう。
一撃だった。
「もう強くなりすぎてるかもしれないね」
シェスカが俺とルナの戦いぶりを見てそう答える。レベルだけでみるとまだまだなのだが、二人ともSランク武器を手に入れている上に、俺はシェスカから仕込まれた剣術、ルナは種族特性のスピードまで持ち合わせているので普通の人とは違い、楽に攻略することができていた。
それからまたしばらくスケルトンだけが大量に出てきたので2人で倒し、経験値を稼ぎつつボス部屋へと進んでいく。俺たちが進んできた道には、大量の骨げ散乱しているだけだった。ちょうど一層のボス部屋までの距離と同じくらい進んだ頃合いに、少し開けた舞踏会をやるような大広間にきた。
「ここは?」
「私も知らない。私が前に来た時はそのままボス部屋につながってた」
シェスカのその言葉で緊張感が一気に高まる。以前シェスカがきたときにはこの部屋がなかったことを考えると、何かダンジョンに大きな変化があったのだろう。普通ダンジョンは造られてから内部構造が変化することはない。そう、普通はないのだ。
「ダンジョンの内部構造が変化したことはあるのか?」
「私は初めて見た」
「私もお聞いたことはないわね。普通はありえないとは思うけど」
「ヴィヴィは?」
『ん、知ってる。ダンジョンの構造をいじることができるのは悪魔族と呼ばれるものたちだけ。つまりはこのダンジョンに悪魔族がいるということ』
「それほんとなの!?」
「本当なのか?」
『うん嘘はついてない。それに悪魔族がダンジョンに住み着くのはスタンピードの準備をするため。たぶんこのまま放っておくと間違いなくスタンピードが起こる。それにダンジョン内の改修が終わっていることを考えると、発生までの期間は長くない。』
本当のことらしい。悪魔族と対抗するためにレベル上げをしに来たのに、悪魔族に出会ってしまうとはなんとも運がない。それにスタンピードまでの時間がないのであればここで引くこともできないだろう。
碌な相談もできないまま、奥の扉が開き馬に乗ったデュラハンが出てきた。明らかに今までの敵とは纏っている雰囲気が違う。漆黒の鎧を着ているが、頭がない。身長はおそらくだが2メートルを超えているだろう。馬に乗っていることもあり、ものすごくデカく見える。背中には大きなハルバードを背負っている。
「まずいな、どうする?」
「これは1人ずついくのは無理だね」
「3人でいくしかないわね」
俺たちは、各々武器を構え臨戦体制に入る。
「ルフレは正面から! ルナと私は左右に展開して横を叩く!」
「了解!」
「わかったわ!」
デュラハンとの戦いが始まった。まず、俺がマジックスラッシュで攻撃をするしかしながら到達まで時間がかかるために避けられてしまう。あからさまな遠距離攻撃は通用しない。マジックスラッシュを避けている隙を狙って、シェスカが仕掛けていく。
「はぁぁぁぁ!」
離れた間合いから以前見せたスピードでデュラハンとの距離を一気に詰めて、攻撃をする。しかしながら、デュラハンは自分の身長ほどもある巨大なハルバードをものすごい速さで振るいシェスカを退ける。シェスカもその一撃を無視することはできず攻撃を中断して防御へと転じる。
「個々に攻撃するのは無理だ! 俺が注意を引きつける! ハルバードをパリィした瞬間を狙って攻撃してくれ!」
「「了解!」」
俺はデュラハンの方へ向き、注意を引きつけんと間合いを詰める。デュラハンも馬を走らせこちらへ接近してきた。初めは俺もデュラハンの攻撃を受けるだけで誠意いっぱいだった。一撃一撃が重く、受けるたびにヴィヴィを持っている手が痺れるのがわかる。
しかし、次第にタイミングが掴めてきた。デュラハンの攻撃は強力だが単調で、シェスカのようにフェイクが混ざっていることがない。そのため、攻撃パターンを想定しやすい。俺はついにパリィをすることができた。身体強化も使っていたので、大きく弾き返すことができ、自分も振り抜いた勢いで攻撃へと転じる!
「シェスカ! ルナ!」
俺の掛け声に合わせて、すぐに彼女たちも攻撃へと移る。それぞれ左右からデュラハンへと接近。シェスカがハルバードを持っている右手を、ルナが馬の横っ腹に一撃を叩き込む。俺もそれに続き怯んだ馬の首を切り落とした。それによりデュラハンが馬から振り落とされる。ハルバードを持った右腕は、シェスカの一撃を持ってしても完全に切り落とすことができず、まだハルバードを握っていた。
俺は再びデュラハンへと接近する。すると、いきなりデュラハンの鎧の隙間から黒色の禍々しい魔力が噴出する。それにより今までとは桁違いのプレッシャーが俺たちに襲い掛かる。俺は一瞬そのプレッシャーに争うことができず硬直してしまった。その隙を見逃してくれるわけもなく、デュラハンは噴き出した黒色の魔力をハルバードへ纏わせ俺を排除せんとして振りかかる。ギリギリのところで俺は攻撃と自分との間にヴィヴィを滑り込ませる。
が、受け切ることができず後ろへと吹き飛ばされた。
「「ルフレ!」」
そのまま同じライン上にいたシェスカとルナを巻き込み壁際に叩き込まれる
「「きゃあ!」」
俺はすぐに起き上がり、下敷きにしてしまった二人を見た。
「大丈夫か!?」
「だ……大丈夫」
シェスカはすぐに起き上がってきたが、ルナからは返事がない。
「おい! ルナ! おい!」
呼びかけるが返事をする気配はない。呼吸は……あるようだ。気絶をしているだけだったらしい。
「シェスカ、頼みがある」
「何? まさか一人であいつと戦う気なの?」
「ああ、シェスカにはルナを守っていてもらいたい。ここに回復薬がある。ルナに使ってやっ」
「だめだよ! 三人で戦ってやっと互角程度に戦える相手だよ!? ルフレ一人でなんとかできるわけないでしょ!」
言い合いをしてる間にもデュラハンはこちらへと迫っていている。
「時間がない! スタンピードまでの時間がまだないことを考えるとここで撤退はできない! それに策もある」
「それでも!」
「すまない。けどやらしてくれ、絶対に負けない」
「わかった。そこまでいうなら任せる。絶対に負けないで」
そうしてシェスカは気を失ったルナを抱えて戦線から離脱する。それを見送り、俺は再びデュラハンと真正面から対峙した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます