第12話 デート?
「ルフレ、朝。起きて」
「う……。うーん。ヴィヴィか?」
「寝ぼけてないで。早く」
「あぁ。おはよう。珍しいなヴィヴィが朝から元気いいの」
「ん、なんか今日は元気」
今日は小鳥の囀りではなく、ヴィヴィに起こされた。俺を起こしたヴィヴィは、ルナの布団へとダイブしにいった。容赦ないな。
「うげぇ!」
後ろから聞こえてはいけない声がした気がしたが。気にしないでおこう。俺は手短に身支度を済ませる。
「ちょっと! ルフレ! ヴィヴィのあの起こし方どうなってるの!?」
例のお布団ダイブで起こされたお方が、耳と尻尾の毛を逆立てて抗議してきた。
「俺に言うな。本人に言ってくれ」
「ヴィヴィ! なんとかならないの!?」
「悪戯したくなった」 ピース!
誇らしそう。
「はぁ」
お、尻尾が萎んだ。諦めたらしい。まあ、あの状態のヴィヴィじゃあ何言っても無駄だから諦めるのが最善策だ。
「ルナ、準備してくれ。レームネスに行くぞ」
「わかったわ。ちょっと待ってて」
そう言って、ルナも身支度を始めた。ヴィヴィも剣の状態になったようだ。俺はヴィヴィを装着し、ルナの身支度が終わるのを待つ。
「お待たせ」
ルナの身支度が終わったらしい。
「じゃあ行くか」
俺たちは部屋を出てフロントに鍵を預けに行く。
「おはようございます。昨日はありがとうございました。お部屋の方はどうでしたか?」
「あぁ、とてもよかったよ。ありがとう」
「それはよかったです。お出かけですか?」
「ああ、鍵をお願いする」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ」
「いってくる」「いってきます」
俺とルナは宿屋を出た。まだ朝少し早いのだろう。通りにいる人はまだまだまばらだ。それにしてもお腹すいたな。
「ねぇルフレ。お腹すかない?」
「確かにお腹すいたな」
「ここからちょっと行ったたところに教会があるじゃない? そこが大きな広場になってて屋台とかがいっぱい出てるのよ」
「そうなのか! 知らなかった。いってみるか」
「えぇ!」
レームネスに行く予定を変更し。教会の広場へと向かう。教会周辺にはまだ朝早いにもかかわらず、多くの人で賑わっている。
「すごいな!」
『いらっしゃい! 肉串はどうだい! 1本銅貨2枚! 焼き立てだよ!』
『具だけじゃ足りないだろう! 一緒にパンもどうだい!』
それぞれの屋台で店主が声を張り上げ呼び込みをしている。
とりあえず肉串を俺とルナでそれぞれ2本づつ計4本とパンを2つ購入した。2人で広場の端にあるベンチに座って食べる。
「「いただきます」」
「おいしい!」
肉串はルナさんのお気に召したらしい。尻尾をパタパタと振りながら頬張っている。確かにおいしい。1本の量がとても多く食べ応えがあっていい。味は少し濃いめだな。現実だと牛肉が一番近いだろうか。焼肉食べてる気分だ。美味しすぎて、気づいた時にはもう食べ終わっていた。
「あーー! おいしかった!」
「美味かったな。また来ようか」
「そうね、また来たいわね」
「じゃあ武器を買いに行こう!」
俺たちはレームネスへと向かった。
「店長、お邪魔するよ」
「おう! ルフレか。 今日はどうしたんじゃ?」
「新しくパーティメンバーになったやつの武器を買いにな」
「そうか、そっちの嬢ちゃんは。拳闘士か」
「ルナよ。正解、職業はこの間拳闘士になったばかりよ」
「そうかそうか。俺はへスパってんだ。ゆっくり見ていってくれ」
店長へスパって名前だったのか。
「そうさせてもらうよ、ルナ、何がいいんだ」
「そうね、私はガントレットが好きかしら」
そうルナが言ったので俺は、神眼を発動してガントレットを一つずつ見ていく。すると、目立たないところにおいてあるがいいスキルを持ったガントレットを見つけた。
ーSTATUSー
NAME :ピュクス
RANK : S
SKIL : ラッシュ[攻撃が途切れない限り攻撃力を上昇させ続ける]
装備最適化[装着者に合わせて最適化する]
「店長、なんでこんなにいいガントレットがすみの方で眠ってるんだ?」
「そいつを見つけたか、やっぱりお前は目利きの天才じゃな」
「なになに? それすごいの?」
「ああ、Sランク装備だ」
「Sランク!? 無理無理! そんなの買えないよ!」
「俺がだそう。いい装備をつけるに越したことはない」
「それはそうだけど。いいの?」
「ああ、パーティメンバーに死なれても後味悪いしな」
これは必要経費だろう。
「店長これを頼む」
「よしきた、ちょっと待ってな。 そいつを見つけたってことで、本当なら金貨2枚だが金貨1枚と銀貨5枚に負けてやる」
「助かる」
「あれから剣の調子はどうだ?」
「元気すぎて困ってるよ」
「元気? どう言うことだ?」
「こっちの話だ。気にしないでくれ」
横を見るとルナが苦笑いをしている。思い当たる節がありすぎるからな。俺とルナはそのほかにも色々必要なものを購入してから店を出た。ルナがガントレットを大事そうに抱えている。鼻歌も聞こえるような。
それにしても、シェスカやルナ、ヴィヴィ、店長とかみんなAIなんだよな。それにしてはものすごく人間に近い。自然に会話もできている。俺は驚きと共に少し寂しさを感じた。現実には、この世界で俺と関わっている人は存在することはできない。こっちの世界でずっと暮らせたらいいのにな。
俺はあり得ないとわかってながらもそんなことを思ってしまった。
「ルフレ! 早速依頼を受注しましょう!」
「そうだな、コボルト討伐しにいくか!」
俺はルナからかけられた言葉によって考え事から引き戻された。今はそんなこと考えずにここで過ごすことを目一杯楽しもうか!
俺は依頼受注画面を開き、依頼を受注した。
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