第11話 宿にて

 俺はルナと共に〈精霊の止まり木〉まだ歩いてきた。


「あ! ルフレさんおかえりなさいませ! そちらの女性はお連れ様でしょうか?」


「ああ、そうだ。もう一部屋余分に取ることはできるか?」


「大変申し訳ございません。ただいま1人部屋の方が満室となってまして。2人部屋ならご用意できるのですがどうなさいますか?」


「「な!」」


俺とルナは揃って声を上げた。


「ルナ、どうする? 俺は別に大丈夫だが、まだ知り合ったばかりのよくわからん男と同じ部屋はいやだろ?」


「ベ、別に私は気にしないわよ?」


「そうか、じゃあ2人部屋で頼む」


「わかりました。助かります! こちら、ルフレさんが使用していた部屋の鍵です。荷物等移動ができたらフロントまで持ってきてください! こちらの都合での変更になりますので、追加料金は頂きません」


「分かった、すぐに持ってくるよ」


鍵を受け取って俺たちは部屋へと向かい諸々の移動を済ませ、新しい部屋へと入った。


「すごい! 思ってたより広いじゃない!」


「そうだな、いい部屋にしてくれたらしい」


「ベットが二つに、ダイニングテーブル、クローゼット、お風呂もある!」


「風呂もあるのか、どうする? 先に入るだろ?」


「ありがとう。終われたので結構汚れちゃったから、ちょうど入りたかったの」


「俺はこっちで荷物の整理をしてるから、ゆっくり入ってきな」


「分かったわ。絶対覗くんじゃないわよ!」


「覗くわけないだろ! 早く行け!」


「はーい」


と、彼女は鼻歌を歌いながら風呂場へと入っていった。

 お風呂に入れるとあって、大変ご機嫌らしい。また尻尾が左右に大きく揺れている。俺は窓際のベットへと歩いて行き、荷物を広げる。


『ルフレ、出ていい?』


「いいぞ、とりあえずルナが戻ってくるまでだな」


『ん』


ヴィヴィが返事をした直後、光って少女姿になる。


「今日のエンシェント・エイプどう思う?」


「楽勝」


またも、ヴィヴィは得意げな雰囲気を漂わせたピースをしてきた。かわいい。


「まだ強い魔物でもルフレなら倒すことができる。けど、レベルを上げることを考えたらもう少しレベルの低い魔物でたくさん狩る方が効率がいいと思う。エンシェント・エイプは出現する確率が少ない」


「なるほど。確かにそうかもしれないな、これからはルナも増えるし数を狩っていく方針でいいか」


「うん、そこでルナとの連携も構築していくのがいい」


「そうだな。それはそうとどうする? ルナにヴィヴィの正体言った方がいいと思うか?」


「ルナなら言っても大丈夫だと思う。パーティメンバーなら言っておいた方がいいし、悪い子ではない。あと言っても良さそうなのはシェスカと、ヴィルネアス。2人は私がインテリジェンスウエポンであることを知ってる」


「そうだな、今度あったら言ってみよう」


「受注できる依頼の確認でもするか」


「ん」


「オープン」


ーSTATUSー


 NAME :ルフレ Lv.06

 RACE :ヒューマン

 JOB :??????

 RANK : C

 SKIL : アイテムボックス サーチ Lv.01

  神眼 剣術 Lv.05


ちゃんとステータスも更新されてるな。依頼は何が増えてるんだ?


1〕コボルト討伐(推奨レベル)Lv.10〜

  依頼主:冒険者ギルド

  報酬 :コボルト1匹につき銀貨3枚

  場所 :クルルの森 中部

  危険度:★★☆☆☆


2〕オーク討伐(推奨レベル)Lv.10〜

  依頼主:冒険者ギルド

  報酬 :オーク1匹につき銀貨5枚

  場所 :クルルの森 中部

  危険度:★★☆☆☆


3〕薬草採取(推奨レベル)Lv.8〜

  依頼主:王立治療院

  報酬 :薬草1本につき大銅貨5枚

      中級薬草1本につき大銅貨8枚

      上級薬草1本につき銀貨1枚

  場所 :クルルの森 入り口〜中部

  危険度:★★☆☆☆


これ以外にも猫を探していますとか、都内清掃とかの依頼もあった。


まぁ効率を考えたら、コボルトか、オークだろう。


「コボルトとオークどっちがいいと思う?」


「ん? (ゴクン)ルフレはどっちでもいい、けどルナはわからない。相談してみるべき」


「それもそうだな」


ヴィヴィはいつの間にか俺がさっきフロントで買ってきたお菓子を勝手に開けて食べていた。


「君、別に食べなくてもいいんじゃなかったか?」


「むぅ。お菓子は別。お菓子は美味しい」


「さいですか。俺にもくれ」


そう言うと、ヴィヴィは手のひらの上にチョコレートを乗せてくれた。このゲームちゃんと味覚も再現されるんだよな。俺は口に広がるチョコレートの風味を味わいながらそう思った。


「うまうま」


「美味しいな」


それからしばらく、2人でお菓子を食べていた。


「ルフレー、上がったわ」


ルナがお風呂から出てきたらしい。タオルで頭を拭いている。


「おー、気持ちよかったか?」


「えぇ、さっぱりしたわ。温度もちょうど良かったし、待ってルフレ、その隣にいる子は誰?」


「そりゃ良かった、隣にいるのはヴィヴィだ」


「こんにちは」


「こ……こんにちは。じゃなくて! どこから連れてきたの!?」


「いや、ずっと一緒にいたぞ?」「ずっと一緒にいた」


「へ? どういうことなのよ! ずっとルフレと私だけだったでしょ?」


「ヴィヴィ、元に戻ってくれるか?」


「ん、がってん」


そうしてヴィヴィの体が光り始め、剣の状態へと戻る。


「こういうことだ」


「どういうことよ!」


『改めて、ヴィヴィはインテリジェンス・ウエポン、銘はソード・オブ・ユグドラシル』


「インテリジェンス・ウエポン!? あんたなんでそんなもの持ってるのよ!」


「見つけた」「見つかった」


「どこで!」


「そこの鍛冶屋で」


「はぁ。まあいいわ」


「いいのか?」


「いいも何も、嘘は言ってないみたいだし。そういうことなんでしょ」


と、ルナは驚き疲れたのか呆れた顔でそう言った


「分かってくれて嬉しいよ」


『ん、つまりはそういうこと』


また、ヴィヴィが光って少女の状態になった。


「ルナは信用できそうだとヴィヴィは思った。パーティメンバーでもあるからこうして正体を明かした」


「そうなのね、信用してくれてありがとう。あなたの強さはこの子のお陰?」


「それもあるな、てかほぼヴィヴィのお陰だ」


「違う、もちろんヴィヴィを持ってることも理由の一つにはなるけどルフレはヴィヴィを持ってなくても強い、シェスカにも認められた」


「は? シェスカってあの近衛騎士団長のシェスカ・ハプスブルグ?」


「そう」


「嘘でしょ」


「嘘ではないな」


「どういうことよ、何があったら近衛騎士団長から認められるのよ。あの人、相当強いでしょ? これだけ立て続けに色々出てきたら、疑い深くなるのだけど。ルフレまだなんかすごい何かを抱えてないでしょうね」


「抱えてないな、この二つくらいだ」


「その二つが重すぎるのよ」


「俺も意図してこうなったんじゃない。仕方ないだろ。そんなことより、明日受ける依頼の相談をしようと思ったんだが」


「そんなことって何よそんなことって。まぁいいわ。依頼は私たち2人ともCランクだし、おんなじ依頼が受けれるわよね?」


「そもそもパーティ登録すれば全員おんなじ依頼が受けれるだろう」


「確かに、そうね」


「コボルトか、オークにしようと思ってるんだが。ルナはどっちがいい?」


「私は、コボルトでいいと思うわ。コボルトの方が1つの群れの個体差が多いから2人でこなすにはいいと思う」


「そうか、じゃあ明日はコボルト討伐に行こう」


「そうね。午前中、鍛冶屋によってもいいかしら。武器を落としてきちゃったから新調しないと」


「いいぞ、じゃあレームネスに行くか」


「ありがとう」


そうして明日の方針が決まったところで、俺は風呂へと行き、上がってからすぐにベットに入った。


『ーーーーフレーールフレ』


「ん? ヴィヴィ俺のこと呼んだか?」


返事がない。


「ルナ、俺のこと呼んだか?」


「呼んでないわよ。いきなり何?」


「いや、誰かに名前を呼ばれた気がして」


「怖いこと言わないで、私は呼んでないわ! もう寝る! おやすみ!」


「ああ、おやすみ」


『ーールフレ、あなーーいる場所に遠ーーーーちに厄ーーものーーます。どうか気をつーー』


やはり誰かに名前を呼ばれた。しかも念話だ。途切れ途切れだが何かの忠告してくれたのか?前も呼ばれたんだよな。一体誰なんだよ。


あいにくこちらから話しかけることはできなさそうなので諦めてその日は寝ることにした。

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