第8話 たくさんのスライムが
リュール草原へ向けて、俺はまだ気温が上がりきっていない爽やかな空気が残る王都アルブンガルドを歩いている。人はまばらで、街全体が寝静まっているような雰囲気を感じる。そうして、リュール草原側の城壁へ辿り着いた。
「身分証を見せていただけますか?」
門番にそう言われたので、俺はギルドリングを見せる。
「確認しました。お気をつけて」
門を出ると、そこには地平線が見えそうなほど大きな草原が広がっていた。日本では、なかなか見ることのできない光景だろう。
門から出てしばらく行ったところで俺はサーチを発動する。
「サーチ、スライム」
左上のマップに、赤いドットでスライムの位置が表示された。
「ヴィヴィ、起きてくれ。草原に着いたぞ」
『......ん、起きる』
「よく眠れたか?」
『寝れた。準備万端、いつでもおーけー』
「じゃあ行くか」
確かスライムは、体の中の核を破壊することで倒せるんだったっけ。そうやって討伐方法を確認しながら1番近くに表示されているスライムの集団まで歩いて行った。
しばらく歩くと、6匹ほどのスライムの集団が見えてきた。青くて丸い、典型的なスライムの形をしている。そして思ったよりも不透明だ。
「あれじゃ核が見えないな」
『神眼を使えばいいと思う。魔力を見ることができるようになる』
「そういえばそんなスキル獲得してたな」
俺は神眼を発動した。
「スライムの真ん中あたりが光ってるように見えるな」
『そう、それが核。核は魔力の塊みたいなものだから神眼を使えば魔力の流れが見える』
「これならいくらでも狩れるな。とりあえず昼までやってみよう」
それから太陽がちょうど頭の真上まで昇るまで、俺とヴィヴィはスライムを狩り続けた。
「もう昼か」
『いっぱい倒した』
50匹討伐したあたりから数えるのをやめたから、何匹討伐したのかがわからない。
「何匹討伐したんだろうな」
『わからない、100匹は倒した?』
「確認してみるか」
スライムは討伐されると核をそのままドロップするため、それが討伐証明になる。アイテムボックスを開きスライムの核の数を確認した。
アイテムボックス
1. 整備道具一式
2.スライムの核×108
108匹討伐していた。1匹につき銀貨1枚だろ。銀貨108枚、10万8000円分か。意味がわからんな。もう意味がわからない。1日で10万か。現実でもこんなに稼げたらいいんだけどな。まぁ、非現実的すぎて逆に面白いか。ここら辺で一旦戻って、換金しよう。俺は、冒険者ギルドに行くために城壁まで歩き始めた。
「身分証を見せていただけますか?」
そう門番に声をかけられたので俺はギルドリングを見せた。街の中に入り、冒険者ギルドまで歩いて行く。
「そういえば、ヴィヴィってお腹空かないのか?」
『ルフレから少しずつ魔力をもらってるから減らない。ルフレたちと同じように食事をすることはできるけど、ルフレから直接もらった方が効率がいい』
「なるほどな。気になってたんだが、俺はそんなにヴィヴィに魔力をあげても魔力が枯渇したりしないのか?」
『ルフレの魔力量は他の人より圧倒的に多い。そうじゃないとヴィヴィを使えてない。それに、枯渇しないように調整はしているから大丈夫』
「そうなのか、じゃあ安心だな」
ヴィヴィの生態とか色々質問をしながら歩いているといつの間にか冒険者ギルドについていた。俺はギルドの扉を開け、以前と同じように6番窓口まで行く。
「依頼の達成報告をしたい」
「わかりました。そちらにギルドリングをかざしてください」
ギルドリングをテーブルの上の端末にかざした。
「ルフレさんですね。今回はスライム討伐ですね。スライムの核はお持ちですか?」
俺はアイテムボックスの中からスライムの核108個をテーブルの上に出した。すると周りがざわつき始める。
「あー! 思い出しました! あなたこの間薬草125本持ってきた新人さんですね!? 依頼受注したの今日の朝ですよね!? これほんとに1人で討伐したんですか!?」
「ああ、もちろん1人で全部討伐した」
「はぁ、ちょっとギルドマスターに話を通してきます。少々お待ちください」
俺は、待たされることになった。
しばらくして、綺麗な逆三角形の上半身をしたダンディなおじさんが出てきた。
「お前か? ありえない数の薬草と討伐部位を持ってきたルーキーってのは」
「ああ、そうだ」
「俺はギルドマスターのアルバってもんだ」
「ルフレだ」
「まぁ、今更お前に、これお前が本当に全部とってきたのかなんていう野暮な質問はしねぇ。証明もできねぇからな。だから、お前に特別依頼を出す」
Information
ギルドマスターアルバより指名依頼が届きました。
1〕エンシェント・エイプ討伐(推奨レベル 18)
依頼主:ギルドマスター
報酬 :白金貨2枚
場所 :クルルの森 深部
危険度:★★★☆☆
エンシェント・エイプ討伐か。
『どうだヴィヴィ、いけると思うか?』
『ん、普通なら今のルフレのレベルじゃ無理。けど、ルフレは昨日のシェスカの修練に耐えた。それにヴィヴィもいる。絶対に大丈夫』
『なるほどな、じゃあ受けるか』
「エンシェント・エイプ討伐か、いいぞ。受けよう」
「な! エンシェント・エイプ討伐ですか! ギルドマスターそれはルーキーには無理です! Cランク依頼ですよ!?」
「いい。こいつがいけるって言ってるんだ。もし帰って来なかったらその時はそういうことだっただけのことだ。いけるんだろ?」
「ああ、もちろんだ」
「じゃあ依頼を受注してくれ」
俺は通知の依頼内容をタップする。
受注しますか?
YES / NO
もちろんYESを選択した。
「じゃあ、気をつけて行ってこいよ」
「ああ、楽しみに待っててくれ」
そう言って俺とヴィヴィは冒険者ギルドを後にした。
俺とヴィヴィが冒険者ギルドを去ったその後。
「ギルドマスター、本当に良かったんですか?」
「俺がそんな考えなしなことするわけがないだろ。そんなことじゃギルドマスターの椅子になんか座ってない。ナーシャ!」
「はーい。お呼びでしょうかー」
「今出て行ったやつのことを監視してくれ、もし危なくなるようだったら助けてやってくれるか?」
「わかりましたー。あの子は私も気になっていたので、精一杯監視させていただきますー」
そう言ってナーシャは奥の控え室へと消えて行った。
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