第7話 ヴィヴィ?

 夕方になり、あちこちで食事をしている人を横目に俺は精霊の止まり木まで歩いてきた。


「おかえりなさいませ!」


「ただいま。すぐに部屋に上がらせてもらうよ」


「かしこまりました。こちらお部屋の鍵になります」


「ありがとう」


 俺は2階に上がり、自分の部屋までやってきてすぐにベットへ座った。


「明日は、依頼をこなしに行くか。まだスライム討伐しか受けれないんだったよな。一応確認しとくか。オープン」


 ーSTATUSー


 NAME :ルフレ Lv.03

 RACE :ヒューマン

 JOB :??????

 RANK : E

 SKIL : アイテムボックス サーチ Lv.01

  神眼 剣術 Lv.05


 スワイプする。


 依頼


 1〕薬草採取(推奨レベル1〜10)

 依頼主:冒険者ギルド

 報酬 :薬草1本につき大銅貨5枚

 場所 :王都郊外 クルルの森

 危険度:☆☆☆☆☆


 2〕スライム討伐(推奨レベル1〜10)

 依頼主:冒険者ギルド

 報酬 :スライム一匹につき銀貨1枚

 場所 :王都郊外 リュール草原

 危険度:★☆☆☆☆


「ま、変わってないよな。まだ現実世界では2時間ぐらいしか経ってないはずだから、このままこっちで寝て、明日依頼を受注しよう」


 明日の予定について考えているとヴィヴィが突然話しかけてきた。


『ルフレー、魔力もうちょっとちょうだい』


「お? ヴィヴィいきなりどうしたんだ? 魔力ちょうだいって言われても、魔力の操作方法とか知らないんだが」


『んー、自分のおへそのちょっと下辺りから白いあったかいのが全身に巡ってるイメージ? を持てば、できると思う?』


「そんな曖昧な感じで言われてもな」


 俺は目を閉じて自分の下腹部に意識を集中させてみる。


 確かに身体中を何かが巡ってる感じがするな。こんどは、その何かを意識的に動かそうとしてみる。


『何か感じた?』


「ああ、なんていうのかな。温かい何かが身体中を巡っているのはわかったよ」


『それ、動かせる? 例えば、脚に集めたりとか」


「できそうだぞ」


 俺は、言われた通りに脚に集中して温かい何か、魔力を集めようと意識してみる。


『ん、ちゃんとできてる。じゃあ、それで跳んでみて』


 俺は、跳んだ。


 ゴンッ!!


 そう、びっくりするぐらいとんだ。勢い余って思いっきり天井に頭をぶつけるくらいに。


「イッテェ! なんだこれ!?」


Information


スキル:身体強化を獲得しました。


『うまくいった。これは身体強化。魔力を任意の場所に集中させることによって身体能力を一時的に操作している』


 また、スキルが増えた。なんかスキルがポンポン増えてくな。そう思ったがもうそういうものだと割り切ることにした。それはそうと、


「先に言ってくれ!」


『ごめん、こんなに跳べるとは思ってなかった。』


「次からはちゃんと教えてくれよ」


『ん、ごめんなさい。魔力が意識できたらあとは簡単。ヴィヴィを持って魔力注いで欲しい』


「りょーかい、こうか?」


 俺はヴィヴィを手に持ち、魔力を注いでいく。するとヴィヴィが光だした。俺は眩しくて目を閉じてしまった。その後も、しばらく目を閉じていると、急にベットに体が倒された。


「なんだ!?」


 俺が目を開けると、緑色の艶やかなロングヘアのワンピースの少女が上に乗っていた。


「君は、ヴィヴィなのか?」


「ん、そう。もう少し魔力を貰えば擬人化できそうだからおねだりしてみた」


 そう言って、俺の上に乗ったままの緑色の髪をした少女、ヴィヴィは無表情ながら少し自慢げな雰囲気を漂わせてピースをしてきた。


「はぁ」


 思わず、目を押さえながらため息をついてしまう。


「ん? ルフレどうしたの? 嫌だった?」


「いや、別に嫌とかでは無いんだが。今日1日で色々なことが起きすぎて、ちょっと理解が追いついてないだけだ」


「そう、ならいい。今日はルフレに出会えた特別な日。それだけで説明は十分」


「あぁ、そうだな。俺もヴィヴィに会えて嬉しいよ。これからよろしくな」


「ん、よろしく。ルフレならすぐに私を使いこなせるようになる」


「そうなれるように頑張るよ。けど人前に出る時は擬人化はダメだからな? そんな剣持ってることが知られたら、何に狙われるかわかったもんじゃない」


「ん、わかった。まだヴィヴィの力も完全に回復してない。ルフレと二人だけの時以外は、人にはならない」


「ああ、そうしてくれ。じゃあ、とりあえず今日はもう寝るか」


「ん、さっきよりも眠たい。お昼寝の続き」


「もう夜だから、普通に寝るんだけどな。おやすみ、ヴィヴィ」


「おやすみなさい」


 すぐに俺の横で、ヴィヴィの寝息が聞こえ始める。それを聴きながら俺も段々と睡魔に抗えなくなっていった。すぐに視界が暗転し、俺は眠りについた。




 次の日の朝、俺は窓から差し込む光と鳥の囀さえずりで目を覚ました。


「んーーー」


 俺は、固まった体をほぐすように目一杯体を伸ばす。それにしても、鳥の囀さえずりを聴いて起きるとか、現実ではありえないな。うるさいアラームで起きなくていいだけでこんなにもスッキリ起きれるとは。


「ふぁ。ルフレ、朝? おはよう」


「あぁ、おはよう。今日は身支度をしたら早速リュール草原に行こう。スライム討伐の依頼を受けようと思う」


「ん、ヴィヴィはいつでも大丈夫。ルフレが準備できたら言って」


 そう言って、ヴィヴィはまた折角起こした体をベットに横にしてしまった。仕方ないやつだ。俺は、そんなヴィヴィを横目に、身支度を始めた。


「ヴィヴィ、準備できたぞ。起きてくれ」


「……ん」


 まだ眠たそうな声で返事をしながら、ヴィヴィは光って剣に戻った。俺はベットの上からヴィヴィを取ると腰に装備して部屋を出る。 


 エントランスに降りると、フロントの少女が挨拶をしてきたのでそれに返事をして、鍵を預けて宿をでる。


「やっぱこの世界の朝はいいな! 現実世界とは違った気持ちよさがある」


『ん、朝は気持ちいい。眠いけど』


「それは二度寝するからだろ。」


『ん、また寝る。戦う時に起こして』


 しょうがないやつだなぁ、まぁ起こした時にはちゃんと起きるからいいけど。そうして俺は依頼を受注しようと思い、ステータスを開いた。


「オープン」


 ーSTATUSー


 NAME :ルフレ Lv.03

 RACE :ヒューマン

 JOB :??????

 RANK : E

 SKIL : アイテムボックス サーチ Lv.01 神眼 

  剣術 Lv.05 身体強化



 依頼


 1〕薬草採取(推奨レベル1〜10)

 依頼主:冒険者ギルド

 報酬 :薬草1本につき大銅貨5枚

 場所 :王都郊外 クルルの森

 危険度:☆☆☆☆☆


 2〕スライム討伐(推奨レベル1〜10)

 依頼主:冒険者ギルド

 報酬 :スライム一匹につき銀貨1枚

 場所 :王都郊外 リュール草原

 危険度:★☆☆☆☆


 スライム討伐を選択する。


 受注しますか?


 YES / NO


 もちろんYESを選択する。


「行くか」


 俺はリュール草原へと足を向けた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る