第3話 初依頼
俺はギルド本部から出て、王都アルブンガルドを依頼場所のクルルの森へ向けて歩いている。
こうして色々あらためて見てみるとすごいな。初めてフルダイブ型VRで遊んでるけど、もっとCGみたいな感じなのかと思いきや、ものすごくリアルだ。まさかこんなに発展してるとはねぇ。意外と多種族はいないんだな。
周りを見ながら歩いていると、大きな壁にたどり着いた。
これは、城壁か?
「兄ちゃん、外に出るのか?」
甲冑を着た門番のような中年の男性が話しかけてきた。
「ああ、ちょっと薬草を取りにな」
「そうか、薬草採取ならクルルの森だな。あそこは魔物ととかが出るわけじゃないが、城壁の外に出るってんなら。気をつけてけよ」
「ありがとう。気をつけるよ」
ギルドリングを見せて俺は、城壁の外に出た。体に爽快な風が吹きつけ、前を見ると草原が広がり。城壁の門から一本道がのびて、奥に広がるクルルの森へと伸びている。
よし、初依頼。気合い入れていくか!
といっても薬草集めるだけなんだよなぁ。しかも見つかりにくい!! めんどくせぇ。なんか楽できねぇかな
「サーチ! 薬草!」
とかいって。そんな簡単にスキルゲットできるわけないよな。
ピロン!
Information
スキル:サーチLv.1を獲得しました。
視界の右上にに通知画面が出た次の瞬間。
左上に浮かんでいるマップに赤いドットが無数に現れた。
「ナンデ!? ウソでしょ!?」
獲得できちゃった……。
なぜなんだ。そんな仕様どこにも書いてなかったぞ? バグなのか? まぁ……いいか。とりあえず、薬草集めよう! それから俺は、周りの薬草をひたすら取り続けた。
気づいたら日が暮れ始めていた。全部で集めた薬草は、125本か。実はレベルも2になったんだよな。1本につき大銅貨5枚だから、大銅貨625枚分か。待てよ、大銅貨1枚が100円だから……62500円!? 冒険者ヤベェ。いや、サーチが使えるようになったせいか? とりあえず、換金しに行こう!
俺はギルドまで戻ってきた。登録した時にいた金髪ロングのギルド職員に話しかける。
「すみまない。依頼の完了手続きがしたいんだが」
「依頼の完了手続きですね。Eランクの依頼ですと、6番窓口もしくは7番窓口になります」
「わかった。ありがとう」
6番窓口まで行く。
「依頼の完了報告をしたいのだが」
「わかりました。ギルドリングをそちらの端末にかざしてください」
俺は自分のギルドリングを端末にかざした。
「ルフレさんですね。依頼は薬草採取だったんですね。薬草をテーブルの上に出してもらってよろしいでしょうか」
俺は机にアイテムボックスから採取した薬草125本を取り出しておいた。
「こんなに!? 初依頼ですよね!?」
「あぁ。ーーーー(サーチが獲得できたことは黙っておいた方がいいよな)ーーーーたまたま群生地帯を見つけたんだ。運がよかったよ」
「むぅ……。なるほど、集計するので少々お待ちください」
ちょっと疑われてしまったな。まあ仕方がない。
「集計が終了しました。全部で125本で、報酬が金貨五枚、銀貨10枚、大銅貨25枚でのお渡しになります。お疲れ様でした」
「ありがとう。また来るよ」
これからどうしようかな。とりあえず飯食うかな。俺はギルドに併設された酒場へと足を伸ばした。
酒場は夕暮れ時だったのもあってだいぶ賑わっていた。とりあえず座るか。
「すみませーん」
「はいよー! すぐ行くから、ちょっと待ってな!」
すぐに、忙しなくホールを動き回っていたふくよかで赤茶の髪を一つにまとめた女性から返事がくる。あの人が女将さんか、いいね元気が良くて。
「お待たせ! あら、新顔かい? あたしゃハイネってんだ! よろしく頼むよ! で何頼むんだい?」
「今日王都に来たばっかりなんだ。名前はルフレだ。よろしく頼む。じゃあエールと、何か腹に溜まるものを頼む」
「はいよ! あんたー! エールとステーキだ!」
「あぁ」
「うちの旦那、ルースが焼くステーキはでかいんだよ! しっかり食べな! 残したら許さないからね!」
なるほど、旦那さんと二人で夫婦経営か。しかも元気溌剌な女将さんと対照的に、旦那さん寡黙! 目は細く現実でいたのならばボディビルの大会で優勝してもおかしくないような体躯の男だった。素晴らしい、運営ちゃんとテンプレをわかってやがる。
「はい! エールとステーキだ! 焼き加減は鉄板が熱くなってるから自分で調整しておくれ!」
「あぁ、ありがとう。いただくよ」
俺はその後、美味しいステーキに舌鼓を打ち。料金を払って食堂を後にした。
もうこんな時間か! ログインしてから大体6時間が経過してるな。よし、そろそろログアウトするか。
「──────」
「ん?……気のせいか?」
確かログアウトする時は宿屋に行くんだっけか。宿屋は、ここからそんなに遠くないな。
しばらく街を歩いていると、宿屋の看板が見えてきた。
【宿屋 精霊の止まり木】
精霊の止まり木? この世界には精霊がいるのかな?俺は扉を開けた。
「いらっしゃいませ! 精霊の止まり木へようこそ! 宿泊ですか?」
「宿泊だ。一部屋頼む」
「わかりました! 何日分取られますか?」
「一週間でお願いできるか?」
「はい! 一週間だと一泊銀貨二枚なので、銀貨14枚です!」
俺は金貨一枚と銀貨四枚をアイテムボックスから取り出しテーブルに置いた。
「ちょうどいただきました! こちら部屋の鍵になります。2階の角部屋です!」
「ありがとう」
俺は2階に上がり部屋に入った。
シンプルな部屋だ。ビジネスホテルと構造は似てるな。違うのは、トイレと風呂が共用なくらいかな。
ベットに横になる。初めてのダイブで疲れたのだろう。俺はすぐに微睡んだ。
「──ェ──フレ────ルフレ」
誰かが自分の名前を呼んでいるように感じたが。俺は睡魔に抗えずそのままログアウトボタンを押し、眠りに落ちた。
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