第152話 死者の復活



ビート…………レオンの専属執事

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


俺はセラから話を聞いた。


俺が居なくなって変わったこと。

エレンから訓練をつけてもらっていたこと。

そして…………ボルトからのイジメの事。


「…………よぉく分かった。ボルトの事は任せとけ」


「!!だめだよ!ボルトは強くなってる!……レオンの想像以上に」


「……?ボルトなんかに負ける訳がないだろう?」


俺は不思議に思った。


いくら強くなったって、ボルトはボルトだ。

それ以上でもそれ以下でもない。

ただのクズ。その一点に限る。


「…………レオン様。ボルトが強くなっているのは本当の事です。多分、レオン様以上に…………いや、大丈夫ですか」


「ああ。俺なら大丈夫だ」


それだけを言って俺は、その場を後にした。


「…………ホントに止めなくて良かったの?」


「ええ。レオン様なら、出来ないことはないと思ったので」


「……そっか」


途中、セラとギルファのそんな話が聞こえた気がした。





ーーーーー





まず俺がするべきことはなにか?

それは、実家に帰ることだ。


流石に迷惑をかけすぎた。

多分、学校も退学……いや、停学処分になってるんじゃないか?

早く学校に行かないとな。


そして…………


……ああ、そんな事を考えていたらもう家についてしまった。


一応、街の人たちにバレてはいけないので変装はしている。


パリンッ………………!!


家の前から、そんな物音がした気がした。


「レ、レオン様……?」


「ビート?」


「どうして…………いや、おかえりなさいませ。レオン様」


「―――――ッ!!!……ああ、今帰ったよ。ビート」


ふと気づくと、俺の瞳から、涙がこぼれ落ちていた。


何故だ…………?



…………ああ、そうなのだ。そうだったのか。

俺は……ただ『ただいま』と言われただけで泣くような男だったのか。


ただ……これぐらいの人との繋がりで泣くような男だったのか…………


俺とビートは使用人長が来るまで、ずっと泣き続けていた。





ーーーーー





「……それで、なんであんな荷物を抱えて家の前で突っ立てたんだ?」


俺が家に帰った頃、ビートは私服を着ていて、大きなスーツケースを引きずっていた。


「私は…………レオン様が死んでも、この家に置いて貰えることになったんです」


ビートが、喋り始めた。


「けど……レオン様が居ないこの家はあまり楽しくはありませんでした。ただただ毎日雑用に追われる日々。そして…………ここの家の皆さんは、レオン様の事をなかったかのように過ごし始めたのです。勿論、ケイン様とサリー様。ベリック様とギルファ。そして使用人長はレオン様を気にかけていました。けど…………」


「けど?」


俺は問いかける。


「けど…………私とギルファ。それとベリック様だけしかレオン様が生きてると思っていなかったのです。だから私はレオン様を探すためにこの家を出ることにしました。そうしたら……レオン様とこうして出会えたというわけです」


「そうか…………」


いや、そうかじゃないな。

俺はなにより、言うべき言葉があるんではないか?


「……ありがとな。ビート」


「――――――ッ!!!!!…………いえ、当然の事をしたまでです」


「いや、当然の事ではない。周りの人が全員死んだと言った者を生きていると信じるのは難しい…………俺もそうだった。だから、お前は偉い。誰が何を言おうと、お前はとても偉いよ」


「…………有難き……お言葉………!!」


…………俺とビートが話している時、部屋の外から大きな足音がした。


「レオン!!!」


バンッ!と部屋と扉は開かれ、その先に居たのは…………


「……お父様」


それは間違いなくケインだった。


「お、お前、どうやって戻ってこれたんだ!?そしてあの時何があったんだ!?この1年以上何をしていたんだ!?」


うわぁ、怒涛の質問攻め。

めんどくさいったらありゃしない。


「…………家に帰るのが遅くなって申し訳ございません。少し大人になり、帰宅しました」


俺が少し上手い切り返しをすると…………


「……お前、本当にレオンか?」


ケインが急に身構え始めた。


「?ええ。そうですが」


「…………失礼。昔のレオンより度胸が着いたと思ってな。そして少し、強くなったか?また手合わせしような!じゃあ、俺は色々手続きしてくる!今度何があったか話してくれよ!」


…………思い他、すぐに帰ってしまったな。

流石に死んだ息子が帰ってきたのに居なくなるのが早すぎなしないか?


「…………許してあげてください。ああ見えても忙しいのです」


「そうなのか」


俺が生まれたばかりの頃は結構忙しかったが、俺が居なくなる直前はあまり忙しそうに見えなかったけどな。

この1年ちょっとで色々あったんだろう。そこには触れないでおく。


「…………レオン様これを」


「……ん?」


突然ビートが、変な生徒手帳らしきものを渡してきた。


「これを提出したら、休学が取り消されて、今まで通り学校に通えます。レオン様は今、年的に最終学年なので、授業についていけるかわかりませんが、レオン様なら大丈夫でしょう」


「……ああ。ありがとな」


一応、前世で東大には合格しているから結構頭はいいからな。


「そして…………直接あって話をしたい奴も、学校に居るでしょう?」


「――――ッ!!!ああ。当然」


「今ならまだ学校に間に合います。急いでいって下さい」


そう言ってビートは俺の背中を押した。


「…………いってきます」


「行ってらっしゃいませ。レオン様」


俺は、学校へと足を運んだ。





ーーーーー





ざわざわざわざわ……………………………………


……うん。なんだろう。とても落ち着かない。

久しぶりの学校だからか?


…………いや、全員に見られてるからだろ!?


まぁ、いい。別に俺の目的には関係ない。

俺が会いたかった相手はただ一人。


お前だ。


バンッ…………!!!


俺は教室の扉を蹴って吹き飛ばした。


「あ、ごめぇ〜ん!ちょっと学校行ってなかったから扉の開け方忘れたわ」


教室の中の人たちは、全員硬直している。

それは、頭がおかしな奴が来たからか、それとも…………


「お、お前!なんで居るんだよ!!」


扉の近くに居たボルトが、喋りかけてきた。


「あの時以来だね。ボルトくん♡」


俺は、強烈な笑顔でボルトに微笑みかけた。

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