第7章 親縁

第151話 この約2年間で起きたこと


〜セラ視点〜



「う……うそ…………」


私が家に帰ると…………家が燃やされていた。





ーーーーー





もう、レオンが居なくなってから1年以上が経つ。

もうみんなはレオンの事を過去の者だとして忘れ、何事もなかったかのように生活していた。


レオンの死の1ヶ月後、レオンの葬式があった。


けど、私達は行かなかった。

だってレオンが死んだと思っていないから。

レオンが生きていると思っているから。


まぁ、そのせいで私達は良くない目で見られているけど。


そんなのは何も苦痛ではなかった。

レオンが死んでいると思う方が何倍も苦しかった。


……もちろん、今でも眠れない夜はある。

レオンの事を思い出すと胸が張り裂けそうになる。

けどがんばれた。


アテネやルーク、ギルファ達が居たから。


レオンのお兄さんも、レオンが死んでいることを受け入れず、葬式の当日に家を飛び出していった。

本人曰く、1年に一回は戻ってくるようだ。


レオンのご両親はそれに反対したが、無理にも止めれなかった。

だって二人共、悲しいから。

自分の息子が死んだと聞いて悲しくないわけがない。


だからレオンの葬式に出なかったことで白い目で見られている私達に優しく接してくれた。

ほんと、レオンのご両親にはとても感謝している。


けど、日が経つに連れ、ボルトからの圧力は強くなっていった。

物も隠され、捨てられ、直接的なイジメもあった。

まぁ、それは実力行使でどうにかなっているのだけど…………真っ向勝負をしては勝てなくなってしまった。

彼は仲間が弱らせた魔物を倒してレベルを上げる……つまりパワーレベリングをしていたのだ。


そのため技術は備わっていないが、結構な力を持っている。

そして最近、違法に強くなれる薬を開発したって噂も…………


ボルトは私に対してのイジメはあまり効果的ではないのを理解したのか、今度は私の周りの人たちに影響を及ぼした。


アテネを殺そうとしたり、

ドラグノフ家を失落させたり、

私の両親の仕事を無くさせたり。


いろんな事をやってきた。

まぁ、実際出来たのは、私の両親の仕事をやめされることだけ。


けど、私の両親の仕事をやめさせても、あまり痛手にはならなかった。

副業としてやっていた農業を本格的にやると、結構儲かるのだ。


取引先はギルファがセッティングしてくれるからバレる心配なし。


…………けど、ボルトの圧力は着実に、私達の事を蝕んでいった。


同じ侯爵家のアイリーンがある程度守ってくれていたが、ボルトの方が悪知恵は働くようだ。

ボルトの勢力拡大と、私達への圧力は留まることをしらない。


そしてとうとう、ボルトは強硬手段に出たんだ。



……………私の家を……燃やした。





ーーーーー






「お、お母さん?お父さん?ど、何処に居るの?」


私は燃えている家の前で問いかけた。


「何処に居るの!お母さん!!!」


私は家に入ろうとした。その時……


「危ない!!!」


その声と同時に、なにかが私にぶつかった。


そして……元私が居た所に、家が崩れてきた。

もしそのまま私が居たと思うと……考えただけでも恐ろしい。


…………そういったら、私にぶつかってきたのは?


私にぶつかってきた者を見ると、そこにはギルファが居た。


「……大丈夫ですか?…………ご両親は避難させておきました。心配いりませんよ」


「よかったぁぁ…………」


両親が無事だということが分かると、急に疲れが押し寄せてきた。


「もうここは危険です。早く逃げましょう」


そうして私の手を引くギルファについていった。




そして着いた先は……イオさんの家だった。


「……お母さんとお父さんは?ここにいるわけないよね?」


「…………もちろん後で会ってもらいます。けど、ご両親とセラさんが一緒に居ると危険です。ボルトはセラさんを狙ってきているのですから。だから場所が分かっても安全な、イオさんの家にお邪魔させてもらう事にしてもらいました」


ギルファの話を聞いていると、イオさんが家の中から出てきた。


「お?大丈夫かお前ら。家を燃やされるなんて経験、あまりないだろう……まぁ、いつもどおりくつろいどけや」


イオさんはそう言うと、お茶を出してくれた。


やっぱりイオさんは顔に似合わず優しい。


私がそんな事を思っていると、真剣な顔つきをしたイオさんが隣に座った。


「…………もう、あと半年で2年が経つな。レオンが居なくなってから」


「「―――――ッ!!!!」」


私達が驚いた顔をしても、イオさんは話を続ける。


「どれだけ悲しい思いをしても、お前らは決断しなくちゃならねぇ。このままレオンの事を諦めるか。生きていることを信じて待ち続けるか。とても辛れぇ決断だ」


イオさんは私達に問いかけた。


私が一瞬、固まっているスキに、ギルファは口を開いた。


「もちろん、待ち続けるに決まっているでしょう。私はレオン様の足となり、耳となる存在です。数年、数十年が経っても私達はレオン様を待ち続けます」


私は、とても悔しかった。


今ので、レオンへの想いを負けた気がしたから。

今の何気ない一瞬でも、私達にとってはとても大事な一瞬だったのだ。


私は考えてしまった。

レオンが戻らないことを。


けど、ギルファの瞳には、雲ひとつない想いが込められていた。


悔しかった。そして、悲しかった。


「…………セラはどうなんだ?」


「私は…………」


この返答の間、私とレオンの思い出が走馬灯のように駆け巡らされた。


ああ、そうだ。

そういうことなんだ。


「私は、レオンからとても返しきれない幸せをもらった。私の真っ暗だった人生の光がやってきた感じがした。彼は、私の中のヒーローだった。他の何よりも尊い存在。他の何よりも大切にしなくてはいけない存在だった。彼が居たからイオさんと出会えた。彼が居たからギルファと出会った。彼が居たから……アテネと出会えた。私から見えた彼は、とても煌めく炎のようだった。そんな彼が死んだなんてありえない。彼は殺しても死なない存在だって分かっているから。とても実感しているから。彼は死なない、死んでいない。また生きて帰ってきて、私達と笑い会える。そんな日々があると信じている」


私は続ける。



「だから私、待つよ。幾星霜、時が流れても。待ち続ける」


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