第150話 前世ぶりの帰還



「…………お!レオン、ここに居たんだ」


俺が必死に走っていると、コドンが話しかけてきた。


「誰のせいでこうなってると思ってるんだ!ぶち回すぞ!」


「……テヘ♡」


全然可愛くねぇよ。お前のテヘは。

逆に殴りたくなる。


ほんと……俺が寝ている間にローブを着させて黄金の椅子に座らせるとか…………頭がイカれてるとしか思えない。

いや、元からイカれているか。


だってこの世界で初めてお前から聞いた声が

『私わああああああァァァ!!!!神だあああぁァァァァァ!!!!』

っていう意味がわからない言葉だったもん。


あの時は走って逃げようとしているところをスコットに捕まったっけ?

懐かしい。


俺が昔の事に浸っていると……


「なに気持ち悪い顔してんの?早く帰るよ」


「誰のせいで遅くなったと思ってるんだ!絶対俺が逃げても収まらないじゃん。あの新宗教」


やばいって。

あんま良くない意味で目立ってるって。

絶対国王になれないって。


「まぁまぁまぁ。そんな事言ったって、そろそろ帰らなくちゃいけないんじゃない?」


「…………まぁ、そうだな。俺の村がどうなってるか知りたい」


「はぁ……その事じゃなくて…………」


コドンが呆れたような顔をして言った。

ん?なんか他にあるのか?


「セラ達の所の事を言ってるの!………………結構やばいよ?」


「……やばい?何がだ?」


「ずっと研究室にこもっていた私でも知っていたもん。セラの噂。もちろん、良くないほうのね?」


ゴクッ……………………


俺は唾を飲み込み、続きを聞いた。


「セラ。結構過激なイジメを受けているらしいよ。教科書や食べ物、服を盗まれたり。家も燃やされたって言う噂もあったね。多分、ギルファがどうにかしてくれているだろうけど。今話したのもほんの一部だけど…………全てボルトって言うクソ貴族がやったって噂」


「そうか………………」


……………………


「…………はいこれ」


そう言ってコドンはとある物を渡してきた。


「使い捨てのロケットだけど、威力より距離を重視して作ってみた。これにまたがると村まで行けると思うよ」


俺は黙々とロケットを設置し始める。


「……………ありがとな」


俺はそれだけを言い残してこの場を離れた。





ーーーーー





「さて…………どう着陸しようか」


俺のまたがっているロケットは、もうそろそろで村につきそうなのに、一向に着陸しそうにない。

多分まだ試作品の段階の物を渡してくれたのだろう。


普通はそんな事してくれない。

あいつは完璧な物しか与えてくれないからな。

それぐらい切羽詰まっていたんだろう。


…………俺が。


まぁいい。

着陸なんて俺が飛んだらすむ話だろう。


俺はそう思って、背中から翼を出した。


そしてロケットから飛び降り、空を飛んだ。


「うおっ!」


このロケット爆発しやがった!

……まぁ、試作品の段階だからいいだろう。


今の俺には怒る余裕もない。


早く村に向かわないと。


「…………ん!?もしかしてレオン様ですか!?」


下の方から声がした。


…………村長か?


俺は村長の近くに着地した。


「おう、村長。急用があって戻ってきた」


「待ってましたよ!レオン様が皆に説明なく言ってしまわれたので全員が大騒ぎですぞ!」


「ああ、済まなかったな……一緒に村の中央まで来てくれるか?」


「お?なんですか?」


そうして俺たちは村の中央に歩き始めた。


「俺はこれから元の場所に戻らなくてはいけない」


「…………元の場所というのは、レオン様の故郷ですね?」


「……ああ、そうだ。そこに行ったら数ヶ月は帰ってこれないだろう。だから村の管理を誰かに任そうと思ってな」


「ほうほう、それなら………………ルヴァルがいいんじゃないんでしょうか?元々国王だった経験がありますし」


「…………そうだよなぁ。やっぱりそっちの方が無難だよなぁ」


ルヴァルがここの長か…………大半が賛成すると思うが……あまり良くないだろう。


ここにはルヴァルとあまり親しくない奴等が沢山いる。

しかもルヴァルには元々収めていた国の管理を任しているからな…………


よし、決めた。


俺がそう思ったと同時に、村の中央についたようだ。


そこには案の定、大量の子鬼達が居る。


「お前ら!よく聞け!」


俺がそう叫ぶと、小鬼たちは一斉に俺の方へと向いた。


「え?レオン様?」


「なんでここに?」


「魔物の国にいったのではなかったのか?」


「お体は大丈夫なのかしら…………」


子鬼達が一斉に騒ぎ始めた。


「俺は!とある急用でこの村を離れなくてはいけなくなった!だからこの村の管理を、村長に任せたいと思う!反対の者は居るか?」


反対!……という奴は出てこなかったが、子鬼達は驚いているのもがいるが、オロオロしていてなにかを言いたそうな顔をしている。


「もちろん、ここは俺の村だ!必ず帰ってくる!だからしばしの間、頼んだぞ!」


俺はそう言って、この村を離れた。


村から出る途中、

『レオン様、頑張ってください!』

という、子鬼達の声がした。





ーーーーー





俺は、休む間もなく飛び回った。

だって何処らへんに俺の故郷があるかわからなかったからだ。


色んな人に聞いて回るしかなかった。

けど翼があるため、回り道を一つもせずスムーズに国を行き来できた。


結構役に立つな。翼。


けど、それはもう終わりだ。


やっと…………やっと国に着いた。

そして、俺の故郷の街にも。


俺は、背後に雷を放った。


「…………冥界で鍛錬でもしましたか?面白い技を使うようになりましたね。レオン様」


「お前こそ……結構隠れるのうまくなったんじゃないか?


俺の背後には、俺が会いたかった男、ギルファ・エーミールが居た。


「……やっと来てくれましたね。我々一同、ずっと楽しみにしていましたよ」


ギルファは、その青い瞳に涙を浮かべていた。


「ああ、俺も会いたかったよ…………一つ聞きたいことがある」


「なんでしょうか?…………案内しましょう」


ギルファは俺の質問を察したのか、素早く移動していった。


「…………昔はスピードでは勝てていましたのに、今は負けていますね」


「ああ、その事はおいおい話すつもりだ…………それより」


「分かっています。レオン様には大切な用事がありますものね」


「ああ」


俺たちが話していたら、ギルファが急に止まった。

目的地に着いたのだろう。


「ここはどこだ?……いや、分かるんだが…………」


「レオン様が居ない間に、改装したのです……が住みますからね」



「レ、レオン?」



ふと後ろから、とても懐かしい声がした。


「―――――――ッ!!!セラ!!!!」


俺の背後には、昔と変わらない…………いや、昔より可愛らしく、明らかに強くなった大切な者がそこに居た。

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