第147話 力不足



「…………うぅ、ここは?」


「お?起きた?いや〜ストレス発散になったよ!」


……チッ。


やっぱり負けたか〜。

流石に勝てるとは思ってなかったが、こうもあっさり負けるとはな…………

もっと力をつけないと。


「まぁまぁ、俺の20%を使わせたんだから上出来よ」


「……20%ね…………」


こいつは、さっきの力を見せておいて、20%程度の力でしかいないと言った。

本当なら完全に否定するのだが、こいつなら本当だと思わせる実力はある。


だって俺が転生する前ぐらいでは、平均40万以上のステータスを持っていた。

ほんとおかしいと思う。

平均40万ってインフレしすぎだ。


冒険者になったら、Sランク……いや、下手したらSSランク冒険者になれるかもしれない。


SSランク冒険者は前前世の俺でもそこの域に達するのはとてつもない苦労があった。

まぁ、それぐらいになったから裏では人類最強と呼ばれたんだけどな。


…………いや、スキルで『人類最強の記憶』っていうのがあったら実際そうだったのかもしれない。


……いや、それはないな。

だって俺でも負ける事なんて結構あったし。


でもそいつは人間ではなかったか?

まぁ、いい。

いくら人類最強でも、この世界は人類だけではない。

人やエルフ、獣人、竜人、妖人、いや、人ってつく奴は人類なのか?

それなら……龍とか、魔物、魔族とかだろうな。


他にも色々居るが、それはまた今度話す。


いや、そんな事よりも…………


「先に一撃当てたんだから、願いを一つ叶えてもらえるんだよな?」


「ああ。そうだよ。なんでも叶えてやる。それは…………国を手に入れるとかな」


ハハッ、粋なはからいをするじゃねえか。

そう、俺たちに必要なのは…………この国。


喉から手が出ても手に入れたかった。


それが今、叶おうとしている。


「なんでも一つだよな」


「なんでも一つだ………………ああ、分かってる。お前に国を譲ろう」








「…………お前、何を言ってるんだ?」


「……………………ん?だってお前の願いは国を譲ってもらう事じゃなかったのか?」


は?

こいつ何を言ってらっしゃるのかしら?

勝手に俺の願いを決めつけないでいただきたい。


「いや、俺が国をもらうのは決定事項だろうが」


「え?」


仙人のおっちゃんは、ポカンとした顔をしている。


「俺は条件を差し出して、その3人を殺してきたら国を渡すと言ったが、その三人はお前だったから適用されないぞ?」


…………まじか。


でも、俺は決定的な一言を言っていた。

それも大昔に。


「俺がお前に言った言葉を忘れたのか?

『この国をお前に預ける。必ず返しにこい。立派な国王になってな』

って言ったじゃないか」


お前はそんな事も忘れたのか?

うう…………俺は悲しいよ。


「いやいやいや、そんな事一個も言ってなかったでしょ」


突然、コドンが突っ込んできた。


なんだお前、起きていたのか?


「私も国を授けるその現場にいたけど、レオンが言ってたのは…………

『なんか国を統治するってめんどいから、お前に預けるわ〜』

って言ってたじゃん」


「まぁ、そうとも言う」


「いや、そうとしか言わねぇよ!もうちょっとで俺も騙されそうになったじゃねぇか!」


「……いや、騙してねぇよ。お前、預けるって意味知ってるか?」


「預けるって…………そのまま渡すって意味じゃねぇのか?」


チッチッチ。

そんな意味じゃないんだよねぇ。


「預けるって意味は……人に頼んで、ものをそのまま、安全に、(あとで受け取るまで)守ってもらうって意味だ」


みんなもググって調べて見よう!

間違ってたら指摘して。


「…………結構今更かもしれないけど、レオンって正確悪い?」


「え?今更じゃね?当分前から発覚してたろ」


オイオイオイ、お前ら二人とも俺の悪口で共感するな。

ぶん殴るぞ?


「じゃあ、俺に国を渡すってのは決定事項って事で……俺の願いを一つ叶えてもらうか」


「………………なんだよ。流石に俺が出来ないことはやめろよ?」


いやいやいや、俺がそんな事を頼むわけないじゃない。

俺が今から頼もうとしているのは、とっても簡単な事だよ。


「じゃあ、俺の配下になって?」


「…………は?」


「約束だからね?」


「はああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!?」


兵士が驚いて部屋に入ってくるまで、おっちゃんは発狂していた。





ーーーーー





「まさか俺がお前の配下になるとはな…………」


「まぁ、昔は実質配下みたいなもんだったじゃん」


「けどよぉ…………本当に配下になるとなぁ………………なんか違うんだよなぁ」


おっちゃんは、結構傷ついている様子だった。


いや、そんな態度されたら俺も傷つくよ?

そんなに俺の配下が嫌だった?

泣くよ?

9歳児が見た目40歳のおっさんに泣かされるよ?

虐待を疑われるよ?


「ま、なったもんは仕方がないって!諦めな!」


唯一関係ないコドンはウキウキな様子だった。


ほんと俺の昔の仲間には正確悪い奴しかいないな。


…………テセウスとアステリアは正確が良くなってることを祈る……いや、そんな事はないか。


あの6人の中で性格の悪さトップだったもんな。あいつら。


そんな俺の考えを察したのか……


「……性格の悪さだったら、あんたが一番花あるよ」


コドンがこんなひどい言葉を浴びせてきた。


そんな事はない。


ジャンケンでグーで相手を殴ったり、

必要ないところで人を蹴落としたり、

人のものを勝手に燃やしたり、


そんな事をしてきたけれど、俺は悪くない!


うん。

そういう事。


「…………コイオス……いや、今はレオンだったか?話があるんだ」


「……ん?なんだ?」


おっちゃんは、かなり真剣な顔で俺の事を呼んだ。


なんだろう?



「お前に、国を渡せない」



おっちゃんから帰ってきた一言は、それだった。


……渡せない?

どういう事だ?


流石に意地悪で渡さない事はないだろう。

そんな奴ではないとこれまでの行動が物語っている。


それじゃあなんで?


俺は混乱していた。


「別に、俺はお前に国を譲るのを渋っているわけではない。逆に、お前に国を渡せて喜んでいるよ。お前に国を見てもらうためにここまで頑張ったって言っても過言じゃないからな…………ただ、だめなんだ」


「…………何が?」


薄々気づいている俺は問いかけた。


「今のお前は、圧倒的な力不足だ。だから渡せない」


「そうか…………」


一応、こうなることは分かっていた。

分かっていたが…………


「15だ」


「……15?」


「15になったらまた俺に会いに来い。そしたらまたお前と戦ってやろう」

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