第143話 魔物の国の仙人



「ねぇ、魔物の国ってどれぐらいの距離があるの?」


「う〜ん…………どれぐらいだっけ?ルーク」


「確か、1日程だった気がします」


一日か…………結構遠いな。

でも、それぐらいの距離に巨大な国があったなんて……立地やばかった?


「けど、結構霧に囲まれているので、場所を知らない限り入れないでしょう」


へ〜。

まぁ、だからルークに調べてもらっていたんだからな。

前前世の俺が死ぬ数日前に

『お前の国って見つかりやすいから、霧に隠していた方がよくね?』

って。


そしたら仙人が……

『霧か…………考えてみようかのぅ』

って言ってたからなぁ。


俺がこんなアドバイスしなかったらもっと早くに行けてたのに!

なにしてくれてんだ!仙人!


「う〜ん……一日か…………」


急にコドンがつぶやき始めた。


「ん?一日だったらなんか駄目なのか?」


別に長くは無いと思うんだが。

逆に俺は短いと思っているぞ?


「いや、別に不満は無いんだけど、ちょっとこれを見せる驚きが減ってしまわないか心配で…………」


そういうと、コドンはなにもない空間から俺が前世で見てきた、近代科学の物を出現させた。


「…………は?」


まじで言ってる?

だたの模型じゃないよな?


「なんですかこれ?」


「某……こんな物は見たことがない」


ルークとルヴァルは、この見たことがない物に興味津々だった。


「まぁ、魔法で動かすタイプだけど、頑張って作ってみたよ。どう?レオン」


「どうって………………最高だな。コドン」


そしてコドンの頭をワシャワシャと掻き乱した。


まさかな…………


を作れるだなんて……」


そう、コドンが取り出したのは、車だったのだ。

前世じゃ数え切れないほど見てきたというのに、今見てみたらとても懐かしい。


「それじゃあ、乗ってみて〜!」


俺たちはコドンに背中を押され、車の中に入っていった。


「おお、凄いですねこれ!」


ルークは興奮して、普段見せない一面を見せた。

そしてルヴァルは何故か、沈黙を保っている。


どうしたんだ?

普通はルークぐらいの反応をすると思っていたのだが……


そう思ったのはコドンも同じようで……


「どうしたのルヴァル?もっと驚くと思っていたんだけど…………もしかして、私の作品がしょぼかった?」


コドンは泣きそうな声で言った。


コドンは昔からそうだったんだよなぁ。


いっつもとんでもない作品を開発するのだが、みんなの反応が弱いと泣き出す癖があった。

まぁ、大人になったら収まったのだが。


今はまだ子供の状態だからそういう事になっているのだろう。


俺だって、精神年齢は随分大人なのに、やっていることは十分子供だったからな。

まだまだ子供ってことだ。


「いやいやいや!別にこの発明が悪いとは思っていません!逆に凄いと思っております!ただ…………」


「ただ?」


「ちょっと…………運転してみたいなって………………」


ああ、そういう事か。


ルヴァルは真面目だからそういう事を言い出しずらかったんだな。


ルヴァルがそう言うと、コドンの顔はすっかり明るくなり……


「なんだ、そんな事は最初っから言ってよルヴァル!!……ささ、いくらでも運転してもらって構わないよ!」


そうしてコドンは運転席をルヴァルに譲った。


いや、ルヴァル。泣くんじゃねぇよ。

そんなに運転したかったの?


「それじゃあ魔法注入は…………」


そういってコドンは俺の事を見た。


「万が一の事があるから、俺に魔法は使わせないでくれ」


「…………魔法なら、私の物を使ってください」


そうしてルークはコドンに腕を差し出した。


「オッケー、ルーク。君の魔力を借りるよ」


そして機械はルークの腕をがっしりと掴み、ルークから魔力を吸い上げた。


「それじゃあ!出発進行!」


「「「おー!」」」


そしてルヴァルが車をはしらせt


「「「――――――ぎゃあああああああああ!!!!!!!!」」」


ルヴァルは、右へ左へと、荒々しく運転をしている。


ヤバイヤバイヤバイ!!

流石に吐くってこの運転は!

あおり運転の比じゃねぇ!


助けて!ドラえ◯ん!


「オロロロロロロロロ………………」


早速コドンはダウン。

可哀想に。ルヴァルに運転を任したから…………


「オイ!ルヴァル!運転を辞めろ!」


「……フッ、我に運転を辞めろと申すか………………無理な相談ですな!」


「―――――ッ!!!マジかお前!」


運転したら性格変わる奴かよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!


そして俺たちは1時間弱、車に揺られていた。





ーーーーー





「いや〜……………………本当に申し訳ございませんでした」


「ホント、申し訳ございませんじゃ許されないよ?あんたは乙女に吐かせたんだからね?」


「…………流石の私も吐くかと思いました……」


「俺は何度、お前を殺そうと思ったか…………」


ルヴァルが、顔をパンパンに腫らした状態で土下座をしていた。


…………ん?なんで顔がパンパンかって?

そりゃあ、俺がぶん殴ったからだ。


いや、流石の俺でも運転が荒いだけで顔をブン殴らないよ?

けど…………


「お前、自分がなにしたか分かってる?」


「……ハイ。分かっております」


「…………運転が荒くてもさ、上手かったら別に良いよ?でもさお前…………




















事故ってるやん!!!!!!」


「本当に申し訳有りませんでした!!!!!」


は?

あんだけイキった運転しておいて、事故るってなんなん?

多分コドンは、ゲロを吐かされた事よりも、車を壊された事に対して怒っているよ?

そして俺たちもボロボロなのよ。

何故お前は事故で怪我をしていない!?


……まぁ、この中で一番防御力が高いのお前だから分かるけども!

理不尽すぎるだろ!!


「…………まぁ、近くまで行けたから良いけども……」


もし、すぐ事故っていたらお前の事を殺していたかもしれん…………


「そ、それじゃあ行きますか。魔物の国へ」


ルヴァル達が、魔物の国に向かって歩き出した。


「いや、待てルヴァル」


「ん?なんですか?………………いや、事故った事は反省しています。申し訳ございませんでした」


「いや、その事じゃない…………俺に一つ、提案がある」


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ルークが私と言ってますが、ルークは男で、『わたくし』と言っています。

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