第137話 俺の人生観




「…………国を作る……ですか」


「ああ、そうだ。国を作る」


ただし、皆でだけどな。

俺はそう付け加えた。


「……それは…………私達が居ても良いのですか?」


は?何を言ってるんだ?お前達が居ていいに決まってるだろ?そんな事を不安に思うなんて―――――ッ!


ふと、民衆の顔が視界に入った。


その顔は皆、不安と悲しみが入り混じったものだった。


…………そりゃそうか。

だって人間が国を作るって言ったんだ。

普通は魔物達が住んでもいい国だとは思わない。

普通は魔物達が居ていい国なんて作らない。


でも、それはだ。


あいにく俺は普通じゃない。

この世で一番、アブノーマルな人物だと思う。


「……ああ、居ていいに決まってるだろう?」


「「「「「「「「―――――――ッ!!!!」」」」」」」」」」


民衆は、驚愕したような、でも、ほのかに嬉しそうな顔をした。


「「「「「「「「「うおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」」」」」」」」


俺の一言で、国中の人たちが熱狂の渦に巻き込まれた。


もう、発狂している奴等もいる。

そんなに嬉しいか?

別に普通の事を言っているだけだと思うんだけどな…………


「…………ホントに良いのですか?我々みたいな魔物を国の一員に入れて」


「……ん?なんでそんな事を不思議におもうn―――――――。そりゃそうか」


だって俺は人間だ。

人間の中で魔物と暮らしますって言っている奴等が居たら、間違いなく異端児扱いされるだろう。


しかも、さっきのルヴァルの言葉で、また民衆が不安に成り始めている。


どうすれば良い?

…………仕方がない。

種族も、家名も、思う存分活用させてもらおう。


「…………俺の名前は、レオン・ドラグノフだ」


「――――――ッ!!!?ドラグノフ!?」


皆、英雄ケイン・ドラグノフを知っているのだろう。

驚愕した顔でこちらを見ている。


「……ケインは比較的、魔物を殺すのに過激派ではないだろう?それはお前らもしっているはずだ」


「…………はい。我々の元にも、その情報は入ってきております。全人類がケイン様みたいになればどれだけよいか……」


ケインみたいに……か。


「けどなお前ら…………お前らの言うケイン様は……魔物を見たら、すぐ殺すぞ?」


俺がそれを言っても、民衆は『だからなんだ?』みたいな顔をしている。


そりゃそうだ。

魔物を殺すなんて当たり前。

だって魔物は危ない存在なのだから。

それが俺たち人間にとっての当たり前。

逆に、魔物を積極的に狩りに行ったり、残虐的に殺したりする奴等も少なくはない。

それをしないケインも善良な方だ。


「…………ああ、魔物を殺すのは当たり前の事さ。そう、当たり前。俺も魔物を殺した事もあるし、お前らも殺した事がある」


通常、魔物などの生き物を殺さないと、経験値は得られない。

だから生きるためには、魔物を殺している。


「けど、お前らの隣に居る者は?………………そう、魔物だ。けど何故お前らはそいつらを襲わない?そりゃあ、襲わないよな。だってのだからだ。俺たちを襲いに来ない。ちゃんと道徳心がある奴等だからだ」


そう、俺たち人間が人間を襲わないのもその理由。

自分に害がないから。

もし自分に害があるなら、同族でも殺す。

それはどの種族でもありえる事。


「ある日、冒険者の狩りに着いていった事がある。その冒険者は食料を調達している魔物を見つけた。そして冒険者は攻撃した。けど、魔物は逃げた。冒険者は魔物を追いかけて殺そうとした。どんなに逃げても。どんなに命乞いをしても。どんなに食料を渡しても。その冒険者は魔物を殺した。なぁ、この話、なにかおかしな点はあるか?」


民衆は声を上げない。

まるで、当たり前、当然のように事を聞いている。


「…………なぁ、俺は当然だと思わない。何故魔物っていうだけで殺されなければならない?ああ、人間からしたら当然の事だよ。当然の事だ。けど、俺はそいつらとは違う。当然だとは思わない。お前らもちゃんと喋れる。心がある。人間の様な容姿に変えて、生活している魔物も居るらしい。そう、生活出来ているんだよ。ただ容姿だけを変えた魔物が。じゃあ魔物と人間なにが違う?特に、何も違わないだろう?じゃあ何故、魔物を異物に扱う?………………それが、だ」


俺は言った。

人間界で言ったら、間違いなく異端扱いにされるだろう。

けど俺は言った。

言い切った。


パチパチパチパチ………………


一人の魔物の男が立ち上がり、手を叩いた。

それにつられてか、また一人、また一人と手を叩き始めた。


そして気づいたら、会場の全員が拍手している。


…………そうか。

人間にとったら異端児でも、

魔物にとっては英雄なんだろうな。


「……流石レオン様。民衆達の心を一気に惹来ましたね。流石です」


意外とこの元国王様は褒めてくれるんだな。

よせやい、照れる。


「…………あの、失礼申し上げますがレオン様」


「ん?何だ?」


「ここ最近、名前持ちが隊長を務める隊が大量発生しているらしくて。気をつけてください」


「ああ、ありがとな。ルヴァル」


名前持ちの隊長か…………ビドルをさらったのもそいつらと同じ奴等なのかな?


「次は、ここから歩いて一日程度の小鬼の村を襲うらしいですぞ。全く、恐ろしい話ですね」


ここから歩いて一日程度の小鬼の村か〜。

どこだろうな〜。

心当たりしかない。


え?

もしかして俺の村?


でも、襲われる理由は…………いや、あるわ。

ここ数日で急発展したからだわ。

絶対それで目を付けられたわ。


もしそうなら…………


「ルヴァル、話は後だ。数時間、もしかしたら数日ここを開ける。統一頼んだぞ」


俺はそれを言い残して、ルークや小鬼達の皆が待っている村へと急いだ。





ーーーーー





「クソッ!手遅れだったか!」


俺の村には、明らかに戦った痕があった。

俺がせっかく建てた建物には、血がべっとりとこべりついている。

そして大量の魔物の死体だ。

ルーク達が危ない!!!


急げ俺!俺は急いで村の中心部へと向かった。


…………よし!村が見えてきた!

ここまでに見た魔物の死体だけで150体。絶対に猛烈な戦いだったはず。

もしかしたら…………ルークの命が危ない!


「ルーク!!大丈夫か!!!?」


「あ、全員倒し終わりました」


そこには、ピンピンしていて、不格好な笑顔を浮かばせているルークが居た。


…………え、全員倒しちゃったの?

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