第130話 おら、村を作る。



「ああ……ありがたや〜、ありがたや〜」


「「「「ありがたや〜、ありがたや〜」」」」


今、俺は…………崇め立てられている!!!


え?

なんで?


それは、俺がこいつらに聖魔法を使ったからだ。


うん。正直に言って、めちゃくちゃ気分が良いね。

最高だ。


「そうだ!レオン様におもてなしをしよう!!」


ホント!?わ〜い!


「そうだ!この集落の看板をレオン様の絵に変えよう!!」


ホント!!?わ、わ〜い?


「そうだ!レオン教を作ろう!!」


わ〜い!!んなわけあるかい!!


「え?君たち馬鹿なの?ついさっきこの村に来た人間をそうも簡単に信用出来るね!?もうちょっと危機感持てよ!」


俺が怒ると、子鬼達は皆ポカーンとした様子でこちらを見ている。

なんでだ?

俺、そんな変な事言った?


俺が困惑している中、一人の子鬼が口を開いた。

それは、俺の看病をしてくれていた子鬼だった。


「……警戒なんてするわけないじゃないですか。レオン様は命の恩人なんですから。もし、レオン様に殺されても、俺たちは何も言えません。だってこの生命は、レオン様が助けてくれて物ですからね」


子鬼は、微笑んでそう言った。

そして、他の子鬼達も同意している様だ。


…………なんて馬鹿な種族だ。

こんな性格で生きていたらすぐ死ぬぞ?

ホント馬鹿で…………良い種族だ。


「……よし!それじゃあ復活祝ということで、皆で宴でもするか!!」


「う、宴ですか?……急ですね。でも、宴をするスペースなんてありませんよ?」


…………ホントだな。

どこもかしこもボロボロだ。

そして汚い。

全く……食事すらまともに取れやしないぐらい汚いな。


「…………それじゃあ、3時間だけ待ってて!」


俺はそう言って、この場を離れた。


「「「「な、なにをするんでしょう?」」」」





ーーーーー





3時間後………………


「よ〜し!出来たぞ!」


「「「「「「「「「「「「――――――――ッ!!!!!!!!?」」」」」」」」」」」」」


俺が作ったものを見た途端、子鬼達の目が丸くなった。

なんでだ?

…………もしかしてまだ、疫病が治ってなかった!?


やばいやばい!ヤブ医者認定されるかも……!!


「……い、今、を作ったんですか?」


「……ん?そうだぞ?…………まぁ、簡単な作りにしか出来なかったけどな」


俺が作ったもの。


それは………………大きな食堂だ。


大きなと言ってもそこまで大きくない。教室の2〜3倍の大きさだ。

しかも作りもシンプル。

壁だってついさっき作ったからザラザラしてる。

唯一ツルツルなのは机ぐらいだな。


お世辞にもいい家だとは言えない。

もし俺がこんな店に入ったら『ハズレだな〜』って思うだろう。


でも、それは人間からしてみたらだ。


もし、それが子鬼の世界観なら?


低級レストランから高級レストランに早変わりだ。


だからだろう。

子鬼全員が泣いているのは。

…………え?泣いてるの?なんで?


「こ、こんなにいい思いさせてもらって………………感謝しきれないですよ!!!」


いや、めっちゃ感謝するね!?君たち!


「いや、そんな事は良いから早く飯食おうぜ?」


俺がそう言うと、場がシーンとなった。


え?俺なんか気に触る事いった?

やっちゃいました?


「…………あのぉ、申し上げにくいのですが……その食べ物はなんなのでしょう?我らにそんな、宴が出来るぐらいの食料はありません」


……………………あ。


かっっっっっっっっんぜんに忘れてた!!


どうしよう!?

あんだけ宴しようって言ってたのに、今更『やっぱなしで』とか言えない!!


なにか、なにかいい手は!!


「そ、村長!!!今、火牛がこの集落に侵入しました!!」


若い兵士っぽい者がそう言った瞬間、その兵士の後ろから火牛が飛び出してきた。


「な、なんだと!?…………皆の者!!出陣じゃ!!「いや、それは必要ない」ん?」


俺は、飛牛に向かって風の矢を大量にぶつけた。


《火牛を撃破しました。15000Expを獲得しました》


よし、倒せた。


「つ…………強い!!!」


…………ん?強い?


……あ、そうか。

こいつら子鬼だった。


…………ヤバい。もしかして皆、俺のことを恐怖の目で見てるんじゃ……


いや、そんな事なかったわ。

みんなギラギラした目で見てるわ。

え?やばくない?今すぐ襲ってきそうなぐらい目がギラギラしてるんだけど。


「今のどうやったんですか!?」


「どんな技なんですか!?」


「どうしてそんなに強いんですか!?」


「ど、どこ出身ですか!?」


「いや、近い近い!」


皆、俺にめちゃくちゃ近づいてきた。

いや、近いて。

今身動き取れないぐらいやばいよ?


「皆の者!沈まれ!!!」


村長の大きな一言で、皆はそそくさと離れていった。


「……レオン様。まことにありがとうございます。疫病を治していただき、そしてこんな大きな建物まで作ってくださった。更には火牛まで討伐してくれました……感謝してもしきれません」


「いいよいいよ、感謝なんて。それに、今からもっと凄い事をするからな!」


「もっと?」


「まぁ、それは宴の時にでも話そうぜ!…………誰か火牛を解体してくれる者が居るか?これで宴をしたい!」


この火牛……結構でかいしな。


「わ、分かりました!!」


そして数十分後、宴が始まった。





ーーーーー





「いや〜、皆ちゃんと楽しめるかと思ってたけど…………それも杞憂に終わったな」


案の定、子鬼達はとても楽しそうに宴をしている。


「……本当にありがとうございます。レオン様」


俺に話しかけて来たのは、村長だ。


村長は、40歳ぐらいの見た目で、少しムキムキだが、優しそうな顔をしている。

一応進化はしていて、中鬼になっている。


「ホント……今があるのはレオン様のおかげです…………鬼達を代表して、感謝いたします」


村長は、俺に向かって土下座をした。


「そんな、別にそこまで感謝しなくてもいいよ…………俺の方が迷惑かけるかもしれないからね」


「…………これから?」


そう、これから。


俺は、前にある、教壇みたいな机の上に立った。


「皆の者!よく聞け!!」


それがそう叫ぶと、鬼たちを騒ぐのをやめてこちらを見た。


「お前らは……弱い」


俺がそう言うと、皆の空気が一気に重くなった。


「そして、馬鹿だ。大馬鹿達の集まりだ……………………けど、良い奴等だ」


俺は、続けた。


「正直言って、お前らは駆逐される立場にあるだろう。けど、俺は違うと思う。お前らは、良い奴等だ。そんなお前らが駆逐されるなんてあって良いはずがない。だから俺は………………」





「ここに俺の村を作る」

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