第77話 ボルトの奇行



「………………はっ!!」


「うわ!びっくりした!!」


なんで急に飛び起きるんだよ!!


……俺はラシードを病室で待っていた。そしたら急に飛び起きるんだぜ?またなきゃよかった。


「……戦いは?」


「うん。お前のボロ負け」


俺は、親指を立て、笑顔でそう言った。


「…………そうか」


オイオイ、反撃はしてこないのか?歯ごたえ無いな。


「……やはり、お前は強いな」


「まあな」


正直言って、格が違うよな。


「……俺はどれぐらい寝ていた?」


「いや、十分もかかってないよ」


もうちょっとで次の時間が始まるだけだしな。


「……じゃ、俺行くわ」


次の時間も模擬戦なんだよなぁ…………


俺は、校庭へと向かった。





ーーーーー





「ねぇ、ラシードの調子はどうだった?」


「いや、良好だよ。先生と俺の回復魔法が効いたのかも」


いや〜、アイツ魔剣士だったから、まあまあ強いんだよなぁ。


あ、魔剣士は、剣とかの武器に魔法をまとわせて攻撃したり、剣と魔法が両方とも使える人の事を言う。


「お、レオン。帰ってきてたのか。模擬戦相手決まったぞ?」


いや、なんで先生が相手を決めるのが常識となってきてるの?皆自由に決めてるよ?


「おう、レオン。ラシードの雑魚をボコして来たんだって?」


「うわ」


今回の相手はボルトか………

いや、雑魚って言ってるけど、お前とラシードの実力はどっこいどっこいだぞ?


「せんせ〜、早く戦わせてくださいよ〜」


「はいはい、分かった分かった」


ちなみに言っておくが、ボルトは先生や、生徒達にとても嫌われている。

それでもボルトの周りに人が居るのは、財産目当て、おこぼれ目当て、もしくは買収されてるかだな。


フッ、だからセラまでにも嫌われてるっていうのに…………


「先生!早く戦わせてください!!」


「分かった。ちょっとまってくれ」


ん?なんでこんなにボルトは早く戦いたいんだ?


「……よし、準備が出来た…………それじゃあ。試合、始め!!」


――――キイイイィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!


俺の剣と、ボルトの剣が交じりあった。


……うん。別に強さは変わっていない。


「……なぁ、なんでそんなに俺と戦いたかったんだ?」


「それはお前を…………ボコボコにしてやるためたよ!!」


ボルトは俺に、鋭い付きを放ってきた。


こんなの、いくらでもガード出来る―――――


「――――――ッ!!?」


俺は防御の体制を取ろうとした瞬間、後ろから少し大きめの火球が飛んできた。


誰だ!?


こんな攻撃、俺にはさほど効かない…………けれども筋力、素早さ共に5000を超えているボルトの突きは…………


「―――――グフッ……」


俺にはとても効いた。


「オイオイ、こんな簡単にくたばる訳ないよなぁ!?」


チッ、そういう魂胆か。


大方、ボルトが攻撃する瞬間に、他の奴が俺に攻撃して、完全に攻撃を当てるっていう魂胆だろう。


「……性格悪いな」


「あぁ?聞こえねぇな!?」


ボルトはそう言って、俺に魔法を放ってきた。


よし、俺の魔法で相殺して……


「――――ッ!!」


クソッ!他の奴の攻撃が邪魔だ!!


「何ふらついてんだよ!!」


「クッ…………」


それから俺は、十数分、ボルトの攻撃を受けていた……


「オラオラ!!」


「グフッ……」


ボルトは無傷、

対して俺はボルトの攻撃を全て受けていた為、ボロボロになっていた。


唯一の助けは、ボルトが粋ってまともに攻撃をしていなかったことで、一撃のダメージが少し軽減されているところだ。


「まだまだくたばるんじゃねぇぞ!?…………ん?なんでこんな静かなんだ?」


「……やっと気づいたか」


俺たち以外のグループはもう、決着が付いてた。


…………いや、全員が倒れていた。


「なんでだ!?」


「気づかないのか?俺がただ、他人の攻撃を食らったぐらいで魔法を外す訳無いだろ?」


そう、俺はボルトに当てるはずだった魔法を、全て他の人に当てていた。

そうしたら、妨害する人は居なくなるだろ?


「……だからって…………お前はもう、ボロボロだろ!?」


「そうだよ……だから、ここで負けたら……カッコ悪いなぁ〜?」


俺のニヤつきが、ボルトの怒りを更に募らせた。


「―――ッ!!…………ぶっ殺してやるよ!!」


うわ〜、怖い怖い。


「風よ!我が身となり、糧となれ!!風速剣!!」


「鬼炎ノ太刀」


…………この場にが、静寂に包まれていた。


……けれど、それはすぐに終わった。ボルトの手によって。


「グハッ!!」


「……雑魚が」


キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン…………


「ボルト!!大丈夫か!?」


うん。さっきまでボコボコにされていた俺より、ボルトを優先する先生。嫌いじゃなくないよ。


「お、覚えてろよ!!」


そう言ってボルトは走り去った。


オイオイ…………おんなじクラスだから、10分後には再会するぞ?


それから授業を受け、俺のしょうもない一日が終わった。





ーーーーー





「明日は、校外学習の時間だ!!それで誰と行くかを決めたいと思う!!」


俺は、先生の言葉で目が覚めた。


え、誰と行くか?そんなんセラとアテネ一択に決まってんだろ。


「あ、おんなじクラスのヤツじゃないとだめだからな!!」


はああぁぁぁぁぁぁぁ〜!?ボルトがクラスの奴等を買収しているせいで、クラスの奴等と喋れないんですが?


そこで誰もが、予想しない出来事が起こった。


「オイ、レオン。俺と組まないか?」


ボルトがそう、話しかけて来たのだ。


はぁ?


「あ、スミマセン、ちょっと耳が悪くて……今、俺と組まないかと言いました?」


「ああ、そう言ったさ」


「……先生、ちょっとボルト君を保健室につれていきます」


ヤバい!最新の病気かもしれない!!


「オイ!ボルト様は病気じゃない!!」


そうそうキレるな、ボルトの糞1号君。


「……何を企んでる?」


「…………いや、何も?ただ、皆が組んでいて他に組む相手は居ないだけさ」


え、ボッチ宣言?


……確かに、他の人達はもう、グループ分けが出来ていた。


…………けれども、この状態をおかしく思うのは俺だけだろうか?


「……分かった。組もうか」


そうして俺は、ボルトと同じ班に入った。



…………なぜ俺はこんなヤツを少しでも信じてしまったのだろう?


まさか、あんな事になるとは思っても見なかった。

まさか…………あんな事になるなんて…………


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ボルトは常に考えていた。


どうしたらセラを惚れさせる事が出来るのか?

どうしたらこのイライラ感を無くせるのか?


…………そうだ、アイツが居るからいけないんだ。あんなヤツが居るから!!


……次回、『死亡』


次回で四章完結!!

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