第76話 え、恨みも怒りに含まれるって……本当ですか〜?


「俺の事を恨んでる……か」


俺恨まれる事をした記憶が無いんだけどな〜。

というか、恨みたいのはこっちなんですが?


なんか、ラシードに貸した物がボロボロで帰ってきたり、

アイリーンと模擬戦をしている時に魔法を当てられたり、

模擬戦の時、異様に急所を狙ってきたり…………


何より!お前はクールなイケメン何だよコンチクショウ!!


俺みたいなヤツはイケメンが大っきらい何だよ!!


俺はこの学校にある、『イケメン撲滅隊』と言うグループに入ろうとしたぐらいだからな!?


…………まぁ、追い出されたが。

理由は、「お前もイケメンなんだよ、ゴミが!!!」という理由らしい。


え、俺ってイケメンなの?あんま自分の顔は見ないから分からないな…………

ちなみにその日はルンルンで帰った。初めてイケメンって言われたなぁ。


「……その話は置いといて…………一体なんでだろう…………?」


「……私には理由が分かるけどねぇ…………」


「ん?理由?分かるなら教えてくれ」


理由も知らずに恨まれるのは厄介だ。


「う〜ん…………これは私が言ったら野暮なんだよね…………まぁ、戦ってる途中、本人に聞いてみなよ」


戦ってる途中……俺の成長スピードに比べて、アイツの成長スピードは段違いなんだよ…………流石に死ぬが?


「……はぁ…………頑張ってみるよ」


死なない事を祈るばかりです…………





ーーーーー





「よし、それじゃあ3時間目の授業を始める」


「「「「「「は〜い」」」」」」


「……………それじゃあ二人一組で組んで」


「「「「「「はーい」」」」」」


「あ、レオンはラシードと組んでね」


「…………はい」


「……分かりました」


そうだ、説明してなかったな。ここの先生達は、驚くべき事に…………貴族の子供に対しても敬語を使わないのである!


まず、元々良い地位に居るってこともあるが……もし、敬語を使って怒られたら国王に連絡が行き、怒った人は厳重注意される。

だからここの学校の先生達は俺たちに敬語を使わないのだ。


「…………オイ、何ぼーっとしている?」


「あ、ごめんごめん。ちょっと考え事しててさ」


も〜、一々急かすなよ〜…………あ、そうだ!


「なぁ、ラシード?」


「ん?」


「なんで俺のことを恨んでるんだ?」


「―――――ッ!!お前、分かってないようだな!!」


「あ、すんません」


いや、伝わらないよ?そんな女子みたいなこと言わないで?

男は言わないと伝わらない馬鹿な生き物だからさ?


「…………まあいい!教えてやる!!」


「……試合、初め!!!」


「―――――ッ!!」


試合開始の合図が入った途端、ラシードは猛スピードでこちらに突っ込んできた。


キイイイィィィィィィィィィィィィィィィィン!!!


校庭に、金属同士がぶつかる音が鳴り響いた。


「それはお前が!!……………………アイリーンと言うヤツが居ながら!セラとか、アテネとか言うヤツらとイチャイチャしているからだろう!!!?」


「…………は?」


「アイリーンと言ういい女が居ながら、なぜ他のヤツの相手ができる!?俺ならアイリーン一択だ!!俺の方が…………アイリーンの事を思っているというのに!!」


ラシードから出てきた言葉は……………………嫉妬だった。


「…………え?嫉妬?」


「い、いや、嫉妬では無い!!ただ、お前がアイリーンに目もくれない事が嫌なだけだっ!!」


クッ!!どんどんラシードの攻撃が過激になる。


「いや、俺別に、アイリーンの事は好きじゃないし。第一、アイリーンも俺のことが好きでもないだろ?」


レオンのこの一言が…………


「――――――ッ!!…………ぶっ殺してやる」


ラシードの嫉妬の炎を燃やした。


「そんなに嫉妬するな――――ッ!!!」


この力は何だ?突然パワーアップした?

いや、この力……見たことある!!


これは…………『怒り』の力だ!!


「オイ、ラシード!!その力を解け!じゃないと精神がおかしくなってしまうぞ!!」


いくら強くても、8歳の精神力だ。たかが知れてる。


「五月蝿い!!お前をボコボコにして、俺はアイリーンを自分のものにするんだ!!!」


あ〜あ、もう、イカれちゃってる。早く気絶させた方がいいな。


「なんでお前はアイリーンに目もくれないんだ!?」


「いや、別にアイリーンの事は好きじゃないし」


あんなヤツ好きになれる精神の方を疑うね。


「なんでだ!?アイリーンのドコが嫌なんだ!?」


「う〜ん。急に暴力を振るってくる事。セラや、アテネの悪口を言う事。俺の事を惚れそうな人たちに俺の悪口を沢山言う所とかな!!」


あ〜、ヤバい。思い返すと嫌な記憶しかない。


「それでも!アイリーンの魅力にはかなわんだろう!?なんであんな奴等!!セラとかアテネとかいう、糞どもに目をくれるんだ!!」


「―――――ッ!!…………お前、今なんつった?」


その瞬間、場の空気が凍りついた。

いや、全員が息を呑んだ。レオンから出た覇気に。


「――――ッ!!!」


「「「「「「――――ッ!!!」」」」」」


「セラとアテネが糞だと?」


「あ、ああ、そうさ!!」


「…………ぶっ殺してやる」


「や、やってみろ!!」


(大丈夫、どんな攻撃が来ても、あと2秒で授業は終わりだ!!)


ラシードがそんな事を考えているうちに、俺はラシードの頭を掴んでいた。


反応で来ているヤツはここに居ない。


生徒でも、アイリーンでも、そして…………先生にも。


「えっ」


「セラとアテネの事を糞だと言ったな」


レオンの怒り、

恨み、

そして、怒りの感情で完全に呪いが外れてしまった力。


そんな俺が放った一撃はあまりにも…………


「セラとアテネは…………最高なんだよ!!!」


重すぎた。



キーンコーンカーンコーン、キーンコーンカーンコーン。



場にはこんな空気には似つかない音楽が流れた。


「あ、本気だしてしまった」


し、死んでない!?何時も人を殺す時以上の本気を出したよ!?


多分、あの頭領を倒す時以上の力を出した気がする。


「一応原型は…………あ、保ってるね」


良かった〜、原型も保ってないと、もし死んでいたら申し訳無さすぎる。


あの強大な力は勘違いだったんだな。


…………俺は、頭領を倒していた時以上の力は出していた。

当然、そんな大きな力を出すと、ラシードは跡形も無く砕け散ってしまう。

俺は、無意識で力のブレーキをかけていたのだ。


もし、俺が修行を怠っていたら?ブレーキがかけれていなかったかもしれない。

そう思うと、俺の、俺自身の力が怖くなる。


まぁ、この時の俺はそんな事を考えてないが。


「ラシード君!?大丈夫!?」


あ、息してる!!


「良かった〜、死んでなくて…………」


俺は、殺人犯にならなくて良かったと思った。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


いや、盗賊達を殺してる時点で殺人はn―――――グファ!!(´Д⊂ヽ

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