第72話 兄貴の力




「…………ふぅ、今日はこのぐらいか」


「……そうだね、結構倒せた」


「…………疲れた……」


ああ〜、疲れた…………


一応、レベルは100以上上がったな……このままだと、あと、一年ちょっとでスキルがカンストするぜ!ラッキー!


「……よし、そろそろ帰ろうか」


「「うん!」」


……………チッ、やっぱりか。


「あ、そうだった!……ごめん、二人共。今日はちょっと用事があるから先に帰って」


「オッケー」


「分かった」


そう言って二人は仲良く帰っていった。


「…………ふぅ、二人共帰ったか……………………そろそろ現れたらどうだ?」


「……気づいていたか」


そう言って黒ずくめの男達が数人で現れた。


「当たり前だろ?これでも一応、暗殺の訓練をしてたんだぜ?」


「……ほう、暗殺の訓練。まさかそんな事を話してくれるとはな…………そんなに重要な事を話すとか、馬鹿なのか?」


俺のことを馬鹿?……フッ、


「今から死ぬ相手に、何を話してもいいだろう?」


「―――ッ!!…………殺してやるよ」


なんでこの世界の人たちは煽り耐性が低いのかね?ステータスに煽り耐性とか無いかな?


俺がそんな事を考えていると、暗殺者風の男が突っ込んできた。


「死ね!!」


「―――――ッ!!…………早いな」


想像以上に早くて、避けてしまった。


「フッ、雇い主から聞いたんだよ!お前は強いが、俺たち数人がかりで倒せばボロ勝ちだってな!」


雇い主?そんな事を知っているのは俺と戦ったことが有るやつだけだが…………

ああ、ボルトか。アイツならやりかねん。でも、暗殺者と繋がっているとはな…………外道め。


…………それにしても俺にボロ勝ち……か…………


「俺にボロ勝ちだって?」


「ああ、そうだよ!雇い主の性格は悪いが、嘘はつかねぇ!」


嘘はつかないねぇ…………


「……暗殺者なら分かると思うけど……相手を殺さずに倒すと、相手を殺してでも倒すって、違うの分かるよな?」


「――――――ッ!!」


俺がそう言い放つと…………


暗殺者の首には、ナイフが刺さっていた。


「クッ!いつの間に!は、話しと違うじゃないか!」


暗殺者の仲間らしき奴が聞いてきた。


「……いくらクズだからって、人前で殺してはいけないからな…………殺すほどの攻撃はしていない」


今の技だってそうだ。


模擬戦で相手の首にナイフを投げつけるなんて……やっちゃいけないだろ?


「それじゃあ…………死んでくれ」


俺は毒が付いた弓矢を取り出し、相手達に放った。


「「「「「――――ッ!!」」」」」


これは普通の毒の様な強さはない。ただ、効果は相手の体内に入った瞬間発動する。


「これは痺れ毒だ。瞬発力に力を注いでいるからか、あまり強い効果は発揮しないが…………弱体化はするだろう?」


こんだけ弱いと、倒すのも楽ちんだ。





ーーーーー





「…………ふぅ。全員倒したか」


そこには…………黒い服を着た男の複数の死体と、血の海があった。


「ひいいぃぃぃ!!」


「さあ、雇い主について、話してもらうぞ?」


そのために一人だけ残しておいたんだ。


「い、言えない!言えないんだ!!」


そういうと、暗殺者は奥歯にある、を噛んだ。


「――――ッ!!おい、吐き出せ!!」


俺がそういった時にはもう、遅かった。


「……………………」


「チッ、死んでるか…………」


暗殺者が自害することを完全に忘れてたな…………

あんだけ怯えてたってことは……家族が人質にでも取られていたのか?

全く、そんだけ家族を大事にするなら、暗殺者なんて辞めればいいのに。


…………まぁ、辞められないか。俺が囚われていた所でもそうだったしな。

もう、壊滅させたが。


「もう暗いし、帰るか!」


俺が、急ぎ足で家に帰った。





ーーーーー





チュンチュンチュン…………


「……おはようございます、レオン様」


「…………ああ、おはよう、ビート」


ビートは相変わらず、俺への対応は前と変わっていない。

勿論、使用人達からの対応は完全に変わった。


失望の目で見る奴、

怒りの目で見る奴、

哀れみの目で見る奴。


勿論、ケインと、母様からの態様は変わっていない。


……ダメだな。やっぱりケインを父様って言えない。やっぱり尊敬していないからかな?


勿論、態様が変わっていないのは最近、準学校を卒業した兄も同じ事で…………


「よお!レオン!おはよう!」


う、眩しい!


「おはよう、兄貴」


俺の兄はみるみる成長していって、まるで太陽みたいに明るく、優しい人に育った。

よく成長して俺、嬉しいよ…………


兄貴、あんたは絶対、ケインみたいに育児放棄するやつになったらダメだぞ?


「よし、朝の訓練でもするか!」


「え、今からですか?」


「そうだ!」


うわ〜、兄の訓練きついんだよな…………兄もアイリーンみたいにとてつもない才能があるし……どうして俺の周りは凄い才能の持ち主ばかりなのかね?


「……あれ?武器変えました?」


「ああ、今使っているやつは修理に出しててな……今は予備の槍を使っている」


今兄が話した通り、兄は槍の使い手だ。

勿論、10歳で国から声がかかるような……


今兄は11歳。成長期で、武器をコロコロ変えている。

成長期って大変だな。成長するごとに自分にあった武器を選ばなくちゃならない。



「よし、どこからでもかかってこい!」


「おう!」


身体強化

思考加速

高速演算

視覚領域拡張

聴覚領域拡張

感覚領域拡張

青炎鬼化

鬼剣     発動!


俺は容赦無く刀を叩きつけた。


「――――――ッ!!今日は何時にもまして、容赦がないな!」


当たり前だろ?昨日はセラとアテネと一緒に帰れなかったんだぞ!?

絶対ボルト、ボコる。


「……容赦が無いって言っても、兄貴はちゃんと受けてるじゃん」


「ハッ、流石に弟に負けるわけには行かないのでな!」


「―――――ッ!!……速い…………」


兄も炎の魔法が得意で、槍に炎をまとわせ、力、素早さを上げている。


当たったらめっちゃ痛い。

燃えるのは鬼炎化で慣れてるとして、流石に槍で刺されるのは痛い。


いくら治せるって言ってもだ。


「それじゃあ…………青炎慶雲ノ太刀!」


俺は、本気の一撃を放った。


「――――――ッ!!…………はっ!!」


俺の一撃は兄の防御を貫通したが、一応、防御されていたため、まともに入らなかった。


そして俺は反撃をくらい、意識を失った。

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