第68話 大会結果



「いや〜、ギリギリだったな……」


あの百鬼夜行を出したらMPが完全に無くなったもん。

超しんどい。


しかもあの百鬼夜行、完成してないんだぜ?

ホントに恐ろしいよ。鬼門法は。


「……そんな事よりも、早くゴールしないとな」


制限時間内にゴールしないと、いくらいっぱい敵を倒したからって失格になる。


「お〜い、アイリーン?起きろ〜」


「……………………」


……返事がない?


「オイ、ホントに死んだのか?」


俺はそういいながらアイリーンを揺さぶった。


「……………………」


……心臓はちゃんと動いているよな?



……ドクンッ…………ドクンッ…………ドクンッ…………



うん。ちゃんと心臓は動いてる。でも起きないな…………


「あれ、もしかして俺が運ばなくちゃいけない感じ?」


いや、MPも底をついて、アバラが数本折れて、さらにはアイリーンを運んでゴールするなんて……


「……こりゃあ、間に合わないかもな」


まず、アイリーンを背中に乗せてっと。


「―――――ウグッ!!」


……アバラが折れてるのに、自分と同じぐらいの体重の人を背負ってはいけません!

これ絶対。


「……ああ、痛てぇ…………」


いや、この痛さは死ぬよ?


俺はポタポタ血を垂らしながら、ゴールへと向かった。





ーーーーー





「……お、ゴールが見えてきたな…………」


俺の目の前にはこの大会の参加者、司会、運営の人達が居た。


「レオン様!後、1分ですよ!!」


ヤバ!急がないと!!


……俺は急いでいたから警戒を解いていた。


いや、魔物には気づけるぐらいの警戒心はまだ持っていた。

……ただ、わざと気配を隠していた者に対しては……………………


「―――――グフッ……」


「レオン様!!」


俺はにぶつかられた。


……何だ?魔物か?


一応、突進してきた者の衝撃でアイリーンはギリギリ、ゴールの中まで吹き飛んでいった。


「チッ、アイリーンはゴールしてしまったか……でもいい。家庭教師も一緒にゴールしないとクリアにはならないからな!」


喋るってことは人か!?……いや、これは…………


「お前、ザブル家の…………」


「ああ!そうだよ!!俺はボルト・ザブル様さ!お前達はゴールさせねえよ!」


チッ、後30秒ってとこか……


それだったら俺は……


「まぁ、逃げるわな」


こんなん、逃げ一択だろ。


「何逃げようとしてやがる!」


「――グフッ」


コイツ……速い?……いや、俺が怪我で遅くなってるのか。

……それにしても早いなコイツ。


それなら全力で逃げるまでだ。


身体強化

鬼化    発動


「オイオイ、どうした?ちょっとは速くなったがまだまだ遅いぞぉ?」


……そうだよなぁ、これでも遅いよなぁ…………


「……なぁ、ボルト。何も警戒も無しに魔術師に突っ込んでくるとか……愚の骨頂だぞ?」


当然追いつく事は分かっている。


「――――ッ!!」


俺が今放ったのは閃光弾だ。


攻撃力は無いが、足止めには最適だろ?


「レオン様!あと10秒です!」


チッ!間に合わない!


鬼風化 発動!


鬼風化は、スピードに特化した鬼化である。


……クソッ、鬼風化でも間に合わない!


もっと!もっと速く!


もっと速く!


「もっと速く!!!」


俺は勢いのあまり、壁に激突していしまった。


「…………レオン様、ゴールです!」


「よっしゃ!!」


ビートが大声で喜んでくれた。


「……よか……った…………」


俺は意識を失った…………





ーーーーー





「……うっ…………ここは?」


どこだここ?


「……目を覚ましたのですね!……レオン様は2時間以上、寝ていたのですよ」


「……ここは?」


「馬車でございます」


いや、それは分かってる。この揺れと、そのと景色で大体な。


「俺が聞きたいのはどこに向かっているかだ」


「……あ、そういうことだたのですね。今、王宮に向かってます」


………………え?


「はあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」


なんで!?そんな面倒なことしたくない!


「いや、これはチャンスです。王様の前で「手柄はすべて、アイリーンのものです」って言えば更に効果的ですよ!」


……そうかな?それ以上に俺の胃に負担が掛かる気がするんだが?


「……分かった。王様の前でそう言うよ」


ああ、面倒くさいな……





ーーーーー





「……あ、王宮に着いたようです」


「お、そうか。ご苦労さま」


そう言って俺は馬車の運転手に金貨数枚を渡した。


「あ、ありがとうございます!」


フッ、良いってことよ。

やっぱこういうとこで好感度を稼いでいかないとな。


「レオン!」


遠くで大きな声が聞こえた。


「……アイリーンか」


こら!王宮の前で大きな声を出してはいけません!斬首されるぞ?斬首。知らんけど。


「ねぇ、レオン!結果はどうなったの?」


「……まぁ、お前のボロ勝ちだろうな」


多分、あの中でオーガを倒した奴は居ないだろう。


あと、数年したら分からないが。


「そっか!楽しみだね!」


うん。俺も楽しみだよ。お前の家庭教師をやめられて!


ああ、もう理不尽に体当たりという暴力を受けなくて良いんだ!!


「レオン様、アイリーン様。陛下がお呼びです」


お、呼ばれたな。


「行こ!レオン!」


「……うん」


うわ〜、王様に会うの、緊張するな…………


そうして俺たちの前に居る、階級が高そうな人が豪華で、大きな扉を開けた。


「失礼します!陛下!レオン様とアイリーン様をお連れしました!」


「よい、下がれ」


「は!」


そして俺たちを案内してくれた人はどこかへ行ってしまった。


「……お前ら、こっちへ来い」


「わかりました!」


お、アイリーンでさえ、敬語を使ってる。

……俺も使ったほうが良いな。


「……わかりました」


そして俺は皆の真似をして跪いた。


「……よい、顔をあげよ」


「「「「は!」」」」


うわ〜、近くで見ると貫禄あるな〜……しかも只者じゃない気がする。すっごいオーラが出ている。俺じゃあ到底敵いそうにないな。


「……じゃあこれから、『四家魔物狩り際』の結果を発表する!」


「「「「は!」」」」


へ〜、この大会、四家魔物狩り際って言うんだ…………


「優勝者は…………アイリーン!」


「――――ッ!!有難き幸せ!」


「……有難き幸せ」


……だろうな。大体結果は読めていた。


「……けれども凄いな。オーガを狩るとは……一体どうしてやったんだ?」


「それはレオンが「アイリーンがやっつけました」……レオン!?」


アイリーンが変なことを言う前に俺が喋らないとな。


「アイリーンが死物狂いでオーガを倒しました。……まぁ、倒した後、気絶しましたが」


「嘘だよ!オーガを倒したのはレオンだ!」


辞めろアイリーン!俺のシナリオが崩れちゃうだろ!


「…………レオン?本当にアイリーンがオーガを倒しんだな?」


今度は王様が俺を威圧しながら言ってきた。


「……はい」


……凄い圧力だな。


「分かった。ドノトス家にはそう報告しておく」


「ははっ!!」


「……はは!」


アイリーンは納得行かない感じで返事をした。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回、第3章完結!…………かな?

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