第64話 受任



「お、俺なんかに任せたらダメだと思います…………」


「そんな訳ないだろう?レオン君は強いぞ?なんてったって大人すら手がつけられないアイリーンを毎回ボコボコにしているんだからな」


いや、ボコボコってちょっと語弊がない?意外と模擬戦の時は殴ってないよ?

ただ首元に木刀をギリギリの所で止めてるだけだからね?当たってはないよ?


「でも俺より適任は居ると思いますけどね…………」


早く俺から気をそらしてくれ!


「いや!レオンじゃないと嫌だ!」


俺がアイリーンのお父さんの提案を緩めに断ろうとしたら、アイリーンが泣き始めた。


「ほら、アイリーン。泣くんじゃない…………レオン君、アイリーンもこう言ってるんだし、了承してくれないか?」


「いや、でも…………」


いくらアイリーンが泣いてるからってそんな面倒なことはしたくない…………


「仕方がない……今からケイン子爵の伝言を言おう」


「……ん?ケイn…………お父様の伝言?」


何だ?


「お前はこの提案を受け入れろ。これはお前がウチを継いだ時に役に立つはずだ………っと言っていた」


あのクソ親父ぃ!!余計なこと言いやがって!何が、役に立つはず……だ!役に立つはず無いだろう!俺はお前の所を継ぐ気は無いぞ!せめて継ぐのは兄貴だろう!


……すまない、熱くなっていた。


しっかし、ケインが言っていたなら受けるしかないんじゃないか?


チッ、めんどくさい。


「……分かりました。受けますよ」


「おお、ありがとう!まさか受けてくれると思わなかったよ!」


ウソつけ、ケインの名前を出した時点で俺が受けるのは分かっていただろ!


はぁ、怒っているとしんどくなるな。


「それは何時なんですか?」


「3日後だが?」


早く言えよ!


「……それが決まったのは?」


「一ヶ月ぐらい前だが?」


早く言えよ!!


ナメてんのけ?


「分かりましたよ。それじゃあ俺が三日間頑張って来るのでアイリーンは自習な?」


「えええぇぇぇぇぇ〜?」


お前……流石に殴るぞ?


「アイリーン、流石に欲張り過ぎだ。今日はアイリーンの騎士になってもらう事ができたんだし、上々だろう?……まぁ、そのうちアイリーンのお婿さんになってもらうがね……」


ナイス!アイリーンの父親!アイリーンの事をよく止めてくれたな。

……あと最後、小声で何か言ったようだがなんて言っていた?…………まぁいい、三日間ぐらい休んでおこう。


もう、しんどい…………


「あ〜あ、イオさんに鬼門法の9番でも教えてもらおっかな〜」


イオさんから聞いた話だが、昔、鬼門法の使い手は強く、恐れられていた。特に、9番以上の使い手は異常なほど強く、その9番と10番の技も規格外だという。


「9番目の技、話でしか聞いてないからな……イオさんが使ってるところ見たことないし…………」


ヤバい、めっちゃ気になる。絶対、イオさんから教えてもらお〜。


は!今日はイオさんは居ないんだった!


…………仕方がない、エレンで我慢してやるか……


「……もう、そんなに僕の事は下なのかい?」


俺の頭上から、ムカつく声が聞こえた。


「………エレン、居たのか?」


「当たり前さ。レオンの居場所なんて筒抜けだよ」


「うわ、怖い、キショい、キモい」


「怖い、キショい、キモい!?ひどくない?」


フッ、大丈夫だ、問題ない。俺は事実しか言ってないからな。


「いや、普通にキモいからね?自分の居場所が筒抜けだなんて……GPSかよ」


「……ん?GPS?」


え、分からないの?


「……あ、そうか。普通、知らないよな。忘れてくれ」


「…………レオン?なんで僕を呼んでたんだい?」


「……お前、俺の頭の中が読めるのか?」


「いや、読めない読めない。男の勘さ」


男の勘?世の中で一番要らないだろ。


「……何か一日、アイリーンの騎士になれって。何か魔物退治に行くそうだぞ。しかも国王に会えるらしい」


「おお、面倒くさいのバーゲンセールだね」


そうなんだよ!分かってくれるのか!?


「ねえねえレオン?」


エレンが俺の目の前に来た。


「何だ?」


急に俺の前に来て?


「おっつぅ〜!」


「……………………殺す」


俺はでエレンを殴っていた。


「――――――ッ!!!」


俺もエレンの前でマジの本気を出したことがなかったため、エレンが俺の拳を食らった。


いや〜、俺、本気をルークにしか見せてなかったからな…………恥ずかし。


「……え、今まで本気じゃなかったの?」


「いや、本気だったぞ?」


自分でもよくわからないんだよな……何か本気を出せる時が分からなくて。

多分、本気でキレた時は出せるんじゃないか?知らんけど。


「……もしかして、邪神の呪いが解けて来ているのか?いや、違うな……感情の起伏で一時的に邪神の呪いを食い破ってるんだな…………」


「……やっぱり邪神の呪いだったんだな」


エレンが言うなら間違いない。


「そうだけど…………どこでそれを知った?」


「あ、言ってなかったな。俺、毎年誕生日になると夢の中に自称神様が出てきてさ…………何か俺の呪いは邪神の呪いだ〜って言ってたぞ」


それがどうかしたか?


「―――――――ッ!!…………それは……良い神様なんだね」


「……いや、そうでもないぞ?何か神々しさあまりないし、理不尽にすねたりするし……」


俺が神様の話をした時、エレンの表情が一瞬こわばるのを見逃さなかった。


……何かあの神様と因縁でもあるのか?


まぁ、エレンが何か言ってこない限り大丈夫だろう。あんなヤツでも、危険になったら助けてくれるしな。


「それで聞いてよ。何かイオさんがお酒買いに行ってて居なくてさ……弟子の誕生日に居ないとかナンセンスだよな」


それに鬼門法の9番の技も教えてもらおうとしてたのに……


「……イオには『さん』を付けるんだね……」


「いや、お前が付けなくていいって言ったんだろ?」


なにそれで拗ねてるんだ?


「…………あ!良い事思いついた!」


エレンが悪い笑みを浮かべて言った。


「ん?良い事?」


どうせ良い事ではなさそうだが……


「レオン。レオンは召喚魔法で何を召喚できた?」


「えっと…………ルークと、鬼の手。それとう◯こだな」


うん。うんこだ。


「できそうだね。…………あ、良い事の内容はね…………」


…………おお!それは『良い事』だな。





ーーーーー





深夜……


「はぁ、やっと帰ってこれた」


イオさんは深夜に家に着いた。


「今日はもう寝るか」


イオさんがそう呟いて家を開けた瞬間、が家から流れこんできた。


「うわぁ!……なんだコレ?…………クッサ!!」


そう、イオさんの家からは、俺が精一杯召喚したう◯こがなだれ込んできたのだ。


「クソッ!レオンの仕業か!せっかく家を改築したばかりなのにどうしてくれるんだ!!…………うわ!このう◯こ取れねぇ!」


結局、イオさんは、朝までう◯こと格闘していたという…………


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