第63話 ……え、騎士!?俺が!?




「やあ、レオン」


「……ん?ここは……あ、そうか。誕生日だからここに居るんだな」


俺の目の前には自称神が居た。


俺は誕生日のとき、毎年コイツと夢の中で会っている。


「相変わらずお前……霧で体が見えないよな」


流石に話す相手の顔が見えないのは嫌だな。


「別に良いでしょ、僕の事が見えないのは。プライバシー保護のため♡」


「それがプライバシーなら俺のプライバシーはダダ漏れだな」


「まぁまぁ、そんな釣れないことを言うなよ〜…………今日も君に言いたいことがあってきたんだよね」


「ん?言いたいこと?」


何かあるのか?


「あるよ!僕、去年言ったよね?盗賊に出会ったら即、逃げろって!」


「あ…………」


そうだった。去年会った時に言われたわ。


「だからあの暗殺者集団に攫われるんだよ!」


「ごめん、ごめんて」


いや、もう完全に忘れてた。

いや、覚えてないやん普通。半年以上前に言われたことなんて普通覚えてる?


「もう!プンスカだよ!」


おお、自分でプンスカとか言ってるやつ始めてみた。

それが女だったら良かったんだが、男のプンスカなんて見たいわけ無いだろ。


「それで……他に俺に言いたいことは無いのか?」


無いならもう、現実世界に戻って皆に誕生日を祝ってもらうが。


「もう、釣れないことを言うな〜…………分かった、分かったから殴ろうとするのはやめよう」


俺がお前の事を殴ろうとしている様に見えたならそれは幻覚だ。


なんたって俺は心優しい6歳児だぞ?


うん、そうだ。俺は心優しい6歳児なんだ。そうに違いない。


「それじゃあ良い事を教えよう!それは……皆に力を見せびらかそう!!」


「力を見せびらかす?」


なんでだ?


クソッ、理由を聞きたいのに視界が霞んでくる……


「あ、もう時間なのか…………それじゃあ、また来年」


そして俺は意識を失った…………





ーーーーー






チュンチュンチュン…………


俺は今、優雅にコーヒーを飲んでいる。

いや〜、コーヒーって美味しいんだね。知らなかったわ。


「いや〜、昨日は楽しかったな〜♪」


もう、楽しすぎてアイリーンのドロップキックなんて煩わしく無くなったわ。

一日限定だけど。


「……レオン様。朝でございます」


「分かった。今行く」


今までは使用人達が起こしに来ていたんだが、昨日からビートが起こしてくれるようになった。


……ん?ギルファはどこだって?

あいつは色んな事を探ってもらってる。

この国の事情や、

聖獣の事、

女神、

そして、俺に掛かっている邪神の呪いの事だ。


まぁ邪神の呪いって事はあの意味わからない自称神様が言ってただけだからな。


アイツ、意味わからない事を言ってきやがって。


力を見せつけろぉ〜?

そんなん、面倒事が起こるに決まってるだろ!

ナメてんのか!?


……ふぅ、失礼。いやでも、普通に意味がわからないぞ?

何か意図があるのだろうか?


…………まぁいい、俺が従わなかったら良いだけの話だ。

自分の人生は自分で決めたいしな。


俺がそんな事を考えていると、いつの間にかご飯を食い終わっていた。


「……レオン様、ケイン様から、プレゼントです」


そう言ってケインは封筒を渡してきた。


「……ありがとな」


ケインは今まで、俺に誕生日プレゼントで金しか渡してもらってない。

流石に1歳からプレゼントが金とか……おかしいよな。一発殴ってやりたいよ。


しかもこれが無自覚なのがムカつく。やっぱり無自覚のヤツには怒りづらい……

流石に一回でも父親から金じゃないプレゼントをもらいたい。


……ハハッ、俺にも、6歳児の心ってあるんだな。


「この金、お前が自由に使え」


「……これはケイン様がレオン様に向けて渡した物ですよ?」


「毎年、毎年。金金金金!!!嫌になってくる!!…………すまねぇな、お前にキレて……やっぱりその金はお前がもらっとけ」


「……分かりました」


俺は走ってその場を後にした。


何故走って逃げたのかは分からない。


余程ケインを嫌いになったか、

怒った事に恥ずかしくなったのか。


あるいは…………


でも、俺はあの金を見て、苦しくなったのだ。


胸が…………





ーーーーー





「……よし、今日はアイリーンは来ていないみたいだな」


何故だろうか?家庭教師も昼からになってるし。


まぁ、取り敢えず、皆からプレゼントを奪って…………貰ってこようか。





ーーーーー




カランコロンカラン…………



「お〜い、スコットは居るか〜?」


俺は店の前でそう言った。


「お、誕生日おめでとう、レオン。プレゼントとしてこの…………上級回復ポーションをあげよう」


「お、ありがとな」


これ、有り難いんだよな……たまに森の中でめっちゃ強い敵と出会うからな……その時はボロボロになりながら帰っているよ…………


「よし、プレゼント貰ったから帰るよ」


「えぇ〜?プレゼントもらうためだけに来たのかい?」


「フッ……そんなの……当たり前だろ?」


なに、当然の事を聞いてくるんだ?


「それじゃあ良い事を教えとくけど、イオは今日はいつもの所にいないよ?なんか美味しいお酒買ってくるって言って、留守だと思う」


え、留守なの?


「全く……弟子の誕生日なのに居ないって…………まともな師匠じゃねえな」


「その師匠からプレゼントをもぎ取ろうとする君も大概だけどね…………」


う、うるせぇば〜か!


俺は店を後にした。






ーーーーー





俺がコドンからプレゼントをもらうためにアイツの家に行こうとすると、セラに会った。


「おお、セラ。元気にしてたか?」


「もう、昨日会ったばっかりじゃないか」


いや、何か昨日、ちょっと顔色が悪かったからなぁ……


「まぁいい。俺、今からコドンの所に行ってくるから」


「ちょっとまって!」


セラがそう叫ぶと近づいてきた。


「レオン、これ。誕生日プレゼント」


「おお!ありがとう!」


これは……アクセサリーか?


「お店で売ってて……どう?」


「嬉しいよ。ありがとな」


俺はそう言うと、その場を後にした。


あ、勿論コドンからプレゼントを奪った…………貰ったよ?





ーーーーー





「ああ……アイリーンの家庭教師行くのやだな」


何か面倒くさくなってきた。


「まぁ、それでも俺、アイリーン宅の前に居るんだけどね」


やっぱり俺って超優秀!


「……失礼しま〜す」


ん?何時もアイリーンが出迎えてくれるのにな…………


「まぁ、どうせ訓練場に居るんだろう」


俺はせっせと訓練場に向かった。





ーーーーー





「……お、やっぱりアイリーンは訓練場に居た…………あれ、何かアイリーンの父さんも居るぞ?」


俺は訓練場のアイリーン達が居る所まで向かった。


「…………お、レオン君。ちょうどいいところに来てくれたね!」


「……ん?丁度いい所?」


どういう事だ?


「いや、俺の家は戦いで成り上がってきた一族だって事は知ってるだろう?他にもそういう貴族が居てね……その人達で子供達を魔物狩りに活かせるつもりなんだ。でも、子供で行くのは心配だろう?だから自分の師匠を一人、連れてきて良いのさ」


「へ〜そうなんですか……」


それは面倒くさそうで…………ん?自分の師匠を一人?


もしかして…………


「レオン君、アイリーンの騎士になってくれないか!?」


い、嫌だぁぁぁ〜!!!

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