第58話 家庭教師 1



チュンチュンチュン…………


「……ああ、憂鬱だ…………」


しんどいわ……

憂鬱だ……


しんどいわ……

憂鬱だ……


しんどいわ……

憂鬱だ……


……ん?なんでこんなに憂鬱なのかって?


そんなん決まってるだろ!

あのイノシシ女……アイリーンの家庭教師になる事だよ!


「アイツの家庭教師とか……命が何個あっても足りんよ」


……でも俺はそれより嫌なことがあるんだよな…………

それも二つも!


俺がそんな事を考えていると部屋の外から大勢の足音が聞こえてきた。


「「「「「レオン様!おはようございます!…………ってもう起きてたのですね」」」」」


「ああ、今日が憂鬱でね」


「何を仰るんですか!あの名家!ドノトス侯爵家との繋がりができるんですよ!何より大切なことじゃないですか!」


いや、大切なのは分かるよ?でも俺は別に貴族になりたいわけじゃないのよ。俗に言う冒険者って言うのに憧れてんのよ。……10歳からしかなれないけど…………


「ハイハイ分かったよ。それじゃあ朝食用意して」


「かしこまりました!」





ーーーーー





……あ〜あ、憂鬱すぎてご飯が全然食べれなかった…………


「それじゃあ行ってくるよ」


「行ってらっしゃいませ、レオン様!くれぐれも粗相の内容に」


「ハイハイ」


一々五月蝿いな…………


俺は重たい足を運ばせてアイリーンが待つ侯爵家に行った……





ーーーーー





「よくぞ来てくれたね、レオン君」


「……はい、来たくなかったですが」


必殺!相手に嫌われて家庭教師を辞める作戦!


「ハハッ、釣れないことを言うじゃないか」


「……チッ」


作戦失敗か。


「それじゃあアイリーンが居る所に案内するよ」


「分かりました」


うわ〜豪華なところだな〜。俺は移動しながらそう思った。





ーーーーー





「ここがアイリーンが居る、訓練場さ」


「でっか!」


いくら訓練場だからって……デカすぎだろ!

もう古代の闘技場ぐらいでかいんじゃない?古代の闘技場のデカさ知らんけど。


「…………ん?レオン?」


「おう、アイリーン」


「レ、レオン!!―――――グフッ」


「いきなり突進してくんなよ……」


どこのイノシシだよ!


……あれ?なんか後ろから殺気が…………


「レオン君。君はいつもこうしているのかい?」


「い、いや、反射神経でデスネ…………」


ヤバい!言い訳が思いつかない!!

そりゃあ怒るよな。嫁入り前の娘思いっきりぶっ飛ばしちゃったんだから。


「……こりゃあ責任とってもらわなくちゃいけないね」


「ん?なんか言いました?」


「いや、何でも無いよ。さあ、アイリーンへの指導を始めてくれ。俺は仕事に戻る」


「分かりました〜」


アイリーンのお父さんは急ぎ足で帰っていった。


「レオン!よく引き受けてくれたな!」


「ああ、使用人からの命令でな」


アイツら、俺の事を何だと思ってるのやら……


「それじゃあ指導を始めてくれ!」


「……分かったよ。でも俺人に物事を教えたことが無いんだよな……」


どうすればいいんだろう……あ!エレンの事を真似しているか。


「俺は人に物事を教える事をしたことがない。だから俺との戦いで覚えてもらう」


「……分かった!」


よし、変に物事を考え無くて済む!


……今アイリーンのステータスは何かな?



名前 アイリーン・ドノリス

種族 人間

職業 剣士6

レベル 43


HP  3736 1736up

MP  1259 685up

筋力  4254 1934up

耐久  3490 1637up

魔力  839 475up

速さ  3355 1602up

知力  548 174up

精神力 2400 1014up

1


スキル

剣術|6 3up

体術|5 3up

斬撃強化|4 2up

斬撃耐性|3 new

無属性魔法|4 new

四属性魔法|3 new

四属性耐性|4 new

HP自動回復|3 new

命闘法|4 new

感覚拡張|3 new


称号




「中々に強くなってるな…………」


「分かるか!レオン!レオンと出会ったことで自分の弱さに気づいてな……普段の倍、鍛錬を頑張ったんだ!」


「でも俺は強いぞ?」


「どうかな?昨日はレオンの事を池に落とせたぞ?」


「……俺、あれ許してないからな?」


「ご、ごめん!」


よし、適度に本気を出そう。


「それじゃあこのコインが落ちたら試合開始だ」


そう言って俺はコインを投げた…………


クルルルルルル…………………………チャリン……


「「――――――ッ!!」」


チャリンっと鳴った瞬間、アイリーンは動き出した。


「はああ!!」


「……強いな」


5歳とは思えない力とスピードだ。素の力だったら俺より高いな。


「その見た目とその歳で筋力4000超えはおかしいだろ!」


「……ん?何で自分の筋力の値を知っている?」


あ、やべ。この世界の人達はステータスカードや、特殊な水晶が無いとステータスが見れないんだった。

後はどこかの鑑定士に見てもらうとかな。これは貴族ぐらしかできないが。


とにかく、鑑定持ちだということをバレないようにしないと……


「さ、さっきアイリーンが自分で言ってただろ?」


「……そうだったか?……そうかもしれないな!」


よし、上手く騙せた。


「それじゃあ本気を出すぞ!身体強化発動!」


アイリーンがそう言うと力、スピードが格段に上がった。


……凄いな……戦い始めた時より体のキレがよくなってきてる。…………だからコイツの家庭教師になるのは嫌なんだ。ケイン見たいな才能の塊みたいなやつの相手は。


いくら自分の方が上でもそのうち追い抜かれる。自分がソイツの何倍努力してもだ。家庭教師のくせに教え子に負けるとか悲しいだろ?


……まあ、今の間だけはいばらせてもらうか。


「……それで終わりか?……なら次は俺から行くぞ?」


「―――――ッ!!」


俺はアイリーンの攻撃を全部弾き、攻撃へと移り変えた。


まずはゴブリンを相手にするぐらいの力で……


「……レオン?手を抜くのは嫌よ?」


「分かってるよ。ほんの小手調べだ」


まあ、こんな力じゃ負けるか。


お次はボブゴブリンを相手にするぐらいの力で……


「…………これがレオンの本気?」


「……んなわけねぇだろ」


最後はゴブリンキングを相手にするぐらいの力で……


「…………クッ」


俺が力量を変えた途端、アイリーンの雲行きが怪しくなった。


別にアイリーンがゴブリンキングより弱いわけではない。逆にゴブリンキングより強いかも知れないな。


今俺は出してる力はゴブリンキングをぐらいの力だ。


「アイリーン、俺の勝ちだ」


俺はアイリーンの首元に木刀を付けて言った。


「―――――ッ!!……そのようね」


よし、取り敢えず俺の勝ちのようだ。

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