第56話 戦いの終わり



「終わったの…………か?」


最後、頭領が悲しい目をしていたが……何故なんだろう?

最強を目指している理由も聞けていないしな……でも死ぬ直前、なにか大切な物を思い出してようで、清々しい顔をしていた……気もする。


「……もう、良いだろう。今は勝ったことを感じよう」


いや〜、途中本当に諦めかけていた。あと、あの激怒なに?俺の精神乗っ取ろうとしていたよね?怖いわ〜あのスキル。


今まで自分の身近にあったスキルが俺に牙を向いた。

俺は少しだけの不安を感じていた…………


「頭領も倒した事だし……帰るか!」


……俺は爺さんの為にナニカしてあげただろうか?


爺さんが殺された事を知らずに熟睡し、爺さんの息子を殺した。

ハッ、恩を仇で返すとはこの事だな。


それでも俺の耳元には


『かたきを討ってくれて…………ありがとな』


そんな声が聞こえて来た。


「――――――ッ!!」


爺さん。そんな優しい言葉をかけないでくれ。俺は爺さんが死んだこと朝まで知らなかったんだ。しかも息子まで殺したんだぜ?……もっと俺のこと、恨んでもいいだろ?そんな言葉をかけられると…………悲しくなるだろうが!


俺は幻聴かも知れない、爺さんの声に、涙を浮かべていた……


「ハッ、まだ俺も……ガキだな…………」


俺は頭領を埋蔵し、ゆっくりと、部屋の扉を閉めた…………





ーーーーー





「……レオン様!?」


「……ああ、ギルファじゃないか!」


良かった〜、生きていてくれて。


「……頭領は?」


「倒せたよ。ちゃんと仇も打てたさ」


もう、コテンパンにしてやったさ!


「……大丈夫ですか?」


「大丈夫だよ。何でそんな事を聞くんだ?」


「……だってレオン様。悲しそうな顔、してるじゃないですか」


「―――――ッ!!」


…………悲しそうな顔……か。


「なぁ、ギルファ」


「なんですか?レオン様」


「…………いくら仇でもよぉ……恩人の息子を殺すのは…………しんどいなぁ」


「―――――ッ!!」


「でも、辛気臭い顔、してたら行けないと思うんだよ……だからさ、皆で笑って帰ろうぜ?」


「……はい!」


それじゃあ帰るか!


そう俺が思っていると目の前から少女が歩いてきた。


「……レオン!」


「アテネじゃないか!?どうしてここに!?」


俺はアテネには作戦の事を話していないが?


「ま、待ってくださいよ〜!アテネさん!」


「おい、手下1。俺はお前にアテネの監視を頼んでいたはずだが?」


「スミマセン。アテネさんに逃げられちゃいまして……」


チッ、使えねぇな。


「オイ、アテネ。こんな危ない所に来たらダメだろう?危険だぞ?」


「……レオンの方が子供なんだからレオンの方が危険」


そうは言ってもな…………


「レオン様。アテネはレオン様が思っているより強いですよ。それも、2級ぐらいまでは」


「そうなんですよ!アテネさん、バンバン敵を暗殺していって……まぁ、峰打ちなんですが」


「ギルファが言うなら強いのか……でもアテネ。あまり危険を犯したりしたらいけないぞ?」


「分かってる」


まぁ、アテネはものわかりがいいから大丈夫だろう……


「そうだ!レオンさん!皆、勝ちましたよ!」


「おお、勝ったのか」


「はい。……そりゃあ散っていった同士も居ますが、大勝利ですよ!それで皆がレオン様が勝つのを見越して!」


「ん?作った?何を?」


「まぁまぁ、早く上の階に上がって…………」


皆で作ったもの?一体何だ?


「一体何を作って――――ッ!!?」


俺達が階段を上がると……まるで戦争の後だとは思えない景色が広がっていた。


「ハハッ、凄いな……」


戦いの後だから建物は半壊しているが、『レオン様、大勝利』と書かれた横断幕や、うちわを持った仲間たちが大量にいる。

仕上げには皆の中央には即席で作ったのか、少し粗いやぐらがあった。


「さぁさぁレオンさん。やぐらに登って……」


俺は言われるがままにやぐらに登った。


「レオン様ー!」


「かっこいいー!!」


俺が上にのぼるとそんな歓声が聞こえて来た。


「……レオン様……何か話して」


手下1が小声で言ってきた。


……話す事…………か。


「……お前達は怯えていた」


俺が喋り出すと歓声は無くなった……


「……何時殺されるか分からない恐怖。逃げたら殺される恐怖。もう沢山だっただろう」


……俺は話を続けた…………


「俺達はそれに抗った……勿論、散っていった同士も居るだろう……だから俺はここに宣言する!」


「「「「「「………………」」」」」」




「俺達の…………勝ちだ!!!」


「「「「「「うをおおおおおぉぉぉぉぉ!!!」」」」」」


俺の……いや、俺達の戦いは俺達の勝利ということで終結した。





ーーーーー





俺達が外を目指している時に俺は口を開いた。


「なぁギルファ。ここを出ても俺に着いてくるか?」


「……当たり前でしょう?私はレオン様の部下なので」


「…………そうか。その返事が聞けて良かったよ」


「私もレオンに着いていく……」


「ありがとな。アテネ」


いや〜、仲間が2人を手に入って大満足だよ。


「やっと終わったようだね。レオン」


「――――ッ!!?その声は!?」


まさか!?


「やっほー、エレンだお♡」


「エレン!何故今ここに!?」


「いや〜、レオンを探しててさ。たまたま出くわしたのよ。


「たまたまって…………」


絶対たまたまじゃないだろう……どうせ何時でも介入できるように待機でもしていたんじゃないか?


「それよりレオン……何か収穫はあった?」


「……あったよ。良い事も……悪い事も…………」


俺は……少し悲しい声で言ってしまった。


「……そっか。……おっと、真打ちの登場だ」


「真打ちって?」


誰だ?


「……レオン!!」


「―――ッ!!?」


その声は!?


「セラ!?」


「そうだよ!……全く、ドコをほっつき歩いて……心配してたんだからね…………」


「……ゴメンな。心配かけて…………だからもう、泣かないでくれ」


ほら、これで涙を拭けって……


「フフッ、こういう時にハンカチを差し出してくる所、レオンっぽいね」


セラが柔らかく微笑んだ……


ヤバい!うちのセラさんマジ天使っす!


「……お前ら……俺の事を忘れていないか?」


「……イオさん!?」


どうしてここに……


「全く……セラが一人でここに来れるわけ無いだろ…………レオン。俺も心配していたんだ。次からは誘拐なんてされないようにもっと訓練を厳しくしないとな!」


イオさんが優しく、そして不敵な声で言った。


「げっ、また訓練の話か……勘弁してくれ」


「ハハッそんな事言うなよ」


「…………そうだイオさん。俺、爺さん…………ザムエルに会ったよ」


「――――――ッ!!!……どうだった?」


「優しくて、強くて、豪快で…………いい人だったよ」


「…………そうか」


多分イオさんは俺の言動で察したんだろうか……少し悲しそうな声で言った…………


「……そうだレオン。この二人はだれ?」


「…………その事は帰りながらでも話そうか」


俺達は楽しく、家に帰った…………


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


第二章、完結です!

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