第40話 頭領の父



「…………こ、ここは?」


「ここは休養室。いや〜、病人待つのって面倒くさいんだな」


しんどいわ。アテネはよくここで俺の事待てたな。


「そうか。俺は負けたのか」


「そういう事。それじゃあお前は俺の配下になってもらうぞ」


「………………」


……何だその目?


「何か不満なのか?お前も負けたら俺の下につく事を了解していたじゃないか」


「……そうだな。分かっている。これから俺はお前の配下になる」


「……今お前が思っている事を当ててやろうか?何でこんな戦いが強いだけの奴の配下にならなくちゃいけないんだ〜、とか思ってるだろ?」


「―――――――ッ!!」


図星か。暗殺者何だからもう少し感情を隠せるようになろうぜ。


「……特別にお前が望む戦いを一つだけしてやろう。それに負けたら今度こそ手下になれよ」


「分かった。俺が望むのは……」





ーーーーー





…………まぁ、結果的に言うと……俺の圧勝だな。


だってアイツが俺に何で勝負に挑んできたと思う?

数学だよ?俺、東大受かった人だよ?負ける訳ないよね。


『お前が強いのは分かった。でも俺は賢い奴の配下になりたい。知識は後でどうにでもなる。俺がお前から知りたいのは頭の回転の速さ。別に知識は要らない。計算で勝負だ』


ギルファが自信に満ち溢れた声で言ってきた。


これを言ってきた時俺内心メッチャ笑ってたよ?「何コイツ俺に計算で挑んできたの?」って。俺、理系だったからな〜。


「分かった。お前……いや、レオン様に従おう」


「お、おう」


ヤバい。笑いを堪えるのに必死過ぎる。さっきとテンション全然違うじゃん。そんなに配下になるの嫌だった?……まぁ、今日始めて出会った五歳の配下になるのは誰でも嫌だよね。


「レオン様。貴方はこれからどうするおつもりで?」


「どうするか?そんなん全然決まってないよ」


ここに来たの最近だからね。


「もしや、この人数で突撃するとか言いませんよね?頭領が居なくてもこれじゃあ勝てませんよ?」


「流石にそれぐらい分かってるって。俺一人で今突撃しても殺せるのは大体……八割ぐらいかな?」


「―――――ッ!!…………ホントに八割、一人で倒せるおつもりで?」


「ああ。俺の命と引き換えにならな」


流石に、生存するのを前提で戦ったらそれだけは倒せないわ!


「……想定より仲間集めには必死にならなくて大丈夫ですね。レオン様。今日私を倒したあの技。あれはなんですか?」


う〜ん。言っていいか迷うな。


「少し、場所を変えようか」


ここで話すのはちょっと危険過ぎる。





ーーーーー





「まず前提に俺が召喚士だということを言わなければならない」


「召喚士!?…………随分希少なスキルをお持ちで」


これからはギルファがバラさない事を前提で話を進めなきゃな。


「俺の師匠はな。魔王軍の幹部なんだ」


「魔王軍の幹部!?」


「うるさい!一々びっくりするな!」


話すのが長くなってしまうだろ!


「スミマセン……」


「はぁ…………そしてその幹部から俺は鬼門法という術を習っていた。鬼門法には『鬼の手』という技があるがこれは鬼の力を手に宿し、相手を殴る技だ。この鬼の力を引き出せる量は人によって違う。俺はな、この鬼の力を召喚できるんじゃないかと思ったんだ」


「……随分突拍子もない事を思いつくのですね」


「それだけが俺の取り柄でね…………鬼の力を召喚しようとするのは凄く難しかったよ。鬼の力を纏って消すに消せないう◯こ。鬼の形をしたう◯こ。う◯この形をした鬼。そんな者たちが出てくる事もあった……」


「なんで糞?」


ホントにびっくりしたからね!?まさか俺の召喚魔法はうんこが土台でできてるのかなとか思っちゃったよ?……うんこの処理は使用人がちゃんとやってくれました。


「試行錯誤の末、俺は鬼の召喚に辿り着いた。今は手しか出せないが」


「充分な強さですね。……もう一つ聞きます。これが一番聞きたかったんです。それは、奥の手ですか?」


「いいや」


「―――――ッ!!そうですか。ありがとうございます」


「おう。これぐらいの質問ならいくらでも答えるぞ」


奥の手はまだ他にあるからな。


「じゃあ戻りましょうか」


そうするか。





ーーーーー





「二人で何を話してたの?」


あ、アテネさんがキレてらっしゃる。


「アテネ、後で教えてやるから」


「それなら……いい」


「……レオン様。これからの事を話しましょうか。まず仲間はどうするのです?」


仲間か……


「今の所俺の勢力は低階級の不良共だな。あいつら最近しつこくてウザいんだよな。なんか俺に忠誠誓い始めたし」


俺がお前ら好きにしていいよって言っても何か、『いや、俺達はレオンさんに一生着いていきます!』っていうし。まだ誰も殺してはなさそうだから許してはいるが。


「そうか。それだけの勢力ならまだ物足りないな。一応、この施設の人達の三分の一は確保しておきたい」


「分かった。それじゃあ俺は不良共で仁義がありそうな奴等を探してくるよ」


「じゃあ俺は表で仲間になってくれそうな人達を探してみるね!僕のファンクラブから何人か引き出そうか?」


「「やめとけ!」」


お、ギルファと声が被ったな。


「……じゃあ俺は裏で頭領に反逆意識を持っている奴等を探してみる。…………あの、レオン様。もし、仲間になったら凄い勢力になると思う人が居ます。ただ、仲間になってくれるかどうか……」


「ん?誰だそれ?」


そんな凄い戦力が居るのか?


「ここで唯一、頭領の仲間じゃない人、頭領の父、ザムエル・レオポルドという人です」


ん?誰だその人?


「その人に何時会えるんだ?」


「何時でも会える様にはなっています。あの人は頭領でも中々会えませんけど、色々裏で自分、やってきたので」


「色々ね〜…………」


何かは聞かないが血生臭いものなのだろう。有り難くその気持ちを受け入れるか。


「ありがとうギルファ。感謝するよ」


「――――ッ!!ありがたき幸せ……」


「それじゃあ、会いにいくか!」


どんな人なんだろう?





ーーーーー





「お〜、中々怖いとこだな」


「ここは頭領でも中々踏み入れないとこだからな。色んな事ができる」


でもできるだけここに来たくないな。もうアテネなんて顔真っ青だし。


「準白銀貨一枚で誰でも殺してあげるよ……」


「即死の麻薬、金貨一枚で売るぞ」


「君たち、この薬買わないかい?」


うわ〜、長く居たくないな……


「よし、着いた。あそこの先に頭領の父がいます」


「分かった。やっぱり最初の印象が大事だからな……」


よし、どうするか決まった!


バゴオオオオオォォォォォォ…………


「たのも〜!!」


「おい小僧、何してくれてんだ?俺の紅茶がこぼれただろうが」


「す、すみません……」


こ、怖いいいいぃぃぃぃぃ!!

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