第37話 頭領の実力



「お、良い反射神経だ。魔法使いなのにな」


速い。それだけだった。ただそれだけの拳で死を錯覚した。スピードだけならイオさんを超えるんじゃないか?


「さて、どんどん行くぞ〜」


「―――――ッ!!」


頭領が放つ拳は10発、100発、1000発と増えていく。


「グッ……」


頭領の攻撃が段々と俺に当たるようになってきた。


「う〜ん。歯ごたえが無いな。もうちょっと強いと思ったんだけどな……もう終わらせるか」


ここだ!


「ファイヤーボム!」


特大のを!


「ゲホッゲホッ…………こんなんで倒せるとでも―――――――グハッ!!」


「ごめんな頭領。俺は刀使いだ」


身体強化

鬼化

視覚領域拡張

感覚領域拡張 

そして鬼剣  発動


「武器は持っていなかったはずだが…………」


「そんなもんいくらでも作れんだよ」


まだ習ったばっかりで付け焼き刃だけどな。


「そして己は魔法使いだ!爆炎豪槍ばくえんごうぞう!」


「グファ…………」


よし。モロに食らったな。


……嘘…………だろ?


「はぁ……危ない危ない。もうちょっとで大怪我する所だったよ」


そこにはちょっとアザがついただけの頭領が立っていた。


…………は?なんでこれをくらって立てる?


「これで終わり?それじゃあ…………」


速―――


「グハアァァァ!!」


「そろそろ終わろっか」


ヤバいモロに食らった。


そして俺は無抵抗のままでやられていった…………


「……頑張れレオン!」


アテネの一言が会場に鳴り響いた。


「が、頑張れレオン!」


「負けるなレオン!」


「「「「「頑張れ、頑張れ、頑張れ!」」」」」


「う〜ん。何故か情勢がレオンに傾いたね。これは良くない。…………でも怪我じゃもう立てないだ――――――ッ!!何故…………立てている?」


「ハッ、そんなもん一つに決まってんだろ………………根性オオォォォ!!」


ぜってぇ勝ってやる。


鬼炎化!


「鬼炎化って――――グフッ!!」


「ゆだんすんなっ!鬼炎斬!」


俺が鬼炎斬を放つと、頭領が反対側の壁まで吹っ飛んで行った。


「……中々強い技を放つな「烈天!」―――グハァ!!」


よし。今度こそ手応えがある。


決まったか?


「チッ、手を抜き過ぎてしまったか。久しぶりにこんなに怪我をしてしまった」


良かった、効いている。無理をして喋っているようだが、絶対に俺の攻撃は確実に効いている。現にアイツはフラフラしているしな。


「俺が5歳相手に魔法を使うなんて屈辱だが、そうじゃないと、もしかして引き分けに持っていかれるかも知れないからな」


「引き分け?ハッ、勝つに決まってんだろ雑魚」


絶対お前に勝ってやる。漢の意地だ。


「そうか。その心意気に敬意を払って…………暴風装!」


ブフアアァァァァァァ……………


とても強い風が会場に蔓延した。


「…………なんだ、それ?」


頭領が暴風装と唱えた瞬間、人間一人分ぐらいの大きさの竜巻が頭領を包みやがった。


「と、頭領がまさか魔法を使ってしまったああぁぁぁ!!」


ん?頭領が魔法を使うと何かが起こるのか?


「……まぁいい。どちらにせよボコしたら済む話だ。……烈天!」


死んどけ頭領!


「全然効かないな」


―――――なんでだ!絶対ちゃんと決まったはず。


「効かないなら効くまで殴る!烈拳!」


よし決まっ―――――ッ!!


「鬼炎化が消えた?」


「この暴風装はな、常に風が外に向かって吹いてるんだ。だから魔法は絶対に当たらない。火の魔法なら尚更だ。…………それじゃあ、死ね」


「――――――グフッ!!」


そして俺は意識を失った。





ーーーーー




「……ン!……オン!……レオン!」


「ハッ!」


…………ん?ここはどこだ?


「良かった……やっと起きた」


「アテネ、ここはどこだ?」


「ここは休養室。レオンが頭領に負けてここに運ばれてきたんだ。レオンは半日ねむってたんだよ」


「……やっぱり頭領には勝てなかったか…………」


クソッ!


「でもレオンは凄いよ。頭領が魔法を使うまで追い込んだんだから…………あと頭領がレオンのランクを準1級までに上げるって」


「別に準1級に上がっても嬉しくなんだよな」


上がっても


「なんで?」


「そりゃあ、だよ」


「――――ッ!!…………それ、本気で言ってる?」


「おう、本気中の本気」


本気じゃないとこんな事言わないだろ。


「もし脱獄できてもそれから暗殺者に追われる生活が始まるんだよ!?そんな生活ができるわけがない」


…………ん?なんでそんな事言ってるんだ?


「何言ってんだ?俺が追われるわけ無いだろ?ここ潰すんだから」


「…………?潰す?」


「ああ、頭領よりも強くなって、頭領をぶっ飛ばし、ここから脱出してやるよ」


そしてセラを迎えに行かないと行けないからな。


「そんなの、不可能…………」


「あの頭領が五歳のガキに魔法を使うまで追いやられたんだ。そんな不可能な話でも無いだろ?」


「…………」


おい黙り込むなよ…………


「そう聞いたらできそうな気がする…………でも、どうやって暴風装を破るの?」


「俺にはアイツより大きなアドバンテージがある。だから大丈夫だ」


絶対負けないな。


「アドバンテージ」


「俺にはアイツが知らない物、がある。魔法、戦いがアイツのアドバンテージなら、俺は科学を使って倒してやる」


「科学?」


科学でお前をぶっ潰すからな!頭領!


「けれども、そんなんで勝っても嬉しいわけがない。ギリギリまで、ちゃんと同じ土俵で戦うさ」


それには強くなっとかないとな。


「……レオン、強くなるにはうってつけな奴がいる」


「ん?誰だ?」


そんな奴が居るのか!?


「私を救ってくれた人でもあり、私がいじめられる原因でもある人」


……中々な関係性だな。


「そいつの名前はジャックス。1級の暗殺者だよ。絶対訓練で役に立つ男だと思う」



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