第33話 え!ここに居たの!?
「じゃあ説明はこれぐらいにして、そろそろ自由時間だ」
「ヒャッホーイ!!」
自由、自由、自由、自由!
「授業の時間、暗殺の仕事の時間以外は大抵自由時間だから」
よっしゃ〜!
……あれ?
「なあ、俺って授業どうすればいいんだ?」
「ああ、お前は何気に一番耐えきったし、誘拐する時部下達を倒していたからな。準4級のクラスだ」
ん?耐えきった?
「なぁ、耐えきったってなんだ?」
「説明してなかったな。誘拐された時、皆あの独房に行くんだが、お前はそこで一番長く電話をしなかったんだ」
ほうほう。俺が一番、あの生活を耐えていたということね。オイオイオイ、皆あれぐらい耐えれないのかよ。
「お前、粋がるんじゃないぞ。今の部下達だったらお前ぐらい耐えれるやつなんて優にいるぞ」
チッ、俺が一番じゃなかったか。
……まぁ、五歳に負ける大人とか嫌だけどな。
それより、一番聞きたかった質問がある。
「…………なあ、俺はいつ暗殺をするんだ?」
これが一番聞きたかった。
「安心しろ。お前が十歳になるまで暗殺はしなくていい。……まぁ、やりたいんだったらできるがな」
よかった〜!!
いや〜もし「明日から人を殺せ」って言われたらどうしようかと思ってたわ。
本当によかった。
「……お喋りもこれぐらいにして、そろそろお別れだ。俺も忙しいしな」
「おう、ありがとな。…………それで、俺にお金は?」
お金がなかったら生活ができないぜ!!
「いやお前、金隠し持ってるだろ」
バレてたぜ!!
ーーーーー
いや〜意外とお店ってあるんだな。
『ここで店をやってる奴は大抵、表には出てこない店をやっている奴等だ。多少代金をかさ増ししても怒られないからな』…………やっぱり頭領が言ってた通りだな。
ここはまともなお店が少ない。
人を殺す物を売っているお店。
体を売っているお店。
一見まともかと思ったら、異常な値段で売ってくるお店。
…………はぁぁぁ、買い物だけで一苦労だ。
幸い、金はいっぱい持ってきてるんだね、少し店選びをミスっても問題はない。
一つ気になったのは階級制限があるお店だ。
所々、準3級以上の人以外、お断りのお店がある。
俺は準4級なので入れない。
……はぁ、大人しく、素朴な店に入るか。
「……悪かったな、素朴で」
「あ、聞こえてました?」
「おう。バッチリと」
あちゃ〜。初日からやっちゃったな。
「全く、お前みたいな暗殺者の坊主は初めてだ」
「いや〜ホントですよ。なんでこんな5歳を誘拐したんだか……」
何で俺に目を付けんだろう?
「俺もここに来て十年近く経つが、お前の年のやつなんて滅多に見ねぇよ」
…………もしかして俺って……激レアなのでは?
「もしかして、同級生いない?」
「多分」
やっちまった〜!ここでも孤立しそうな予感!
オイオイ、孤立は前世だけで充分だっての!
「はぁ……憂鬱ですな」
「…………可哀想だから少しだけサービスしてやるよ」
「本当か!?」
ヤッホーイ!
「いつもは地上の2倍の値段で売っているが、今回は1.5倍の値段で売ってやる」
「お〜!」
それでも倍の値段なんかい!って思う人もいるかも知れないが、これは良心的だ。ここでは平均、地上の3倍の値段で売られている。場所によっては5倍以上の所もあるが。そう思うと、1.5倍は平均の二分の一だ。
「ありがと、おっちゃん」
「おう」
なんだろう、この安心感。
「俺には、面倒見が良い兄がいてな」
お、昔話が始まったぞ?
「昔事故で離れ離れになってしまって、俺は怪我死にかけていた。その時出会ったのが、うちの店長なんだ。店長は大怪我している俺の面倒を見てくれてな。それで俺は店長の店で働いたんだ。そしたらここで働いてくれって言われてな。……あ、店長は地上にいるぞ?それがキッカケで俺はここで働き始めたんだ…………ってオイ!話を聞け!」
「ん?ああスマン。ちょっと話聞いてなかった」
スマン。興味が無いものにはとことん興味がない男なんだ。
「……俺の兄はとある街で商売をしているんだ」
「へ〜」
なかなかの地位にいるんだな。
「なあ、俺の兄を知らないか?俺と顔がそっくりなんだ」
「そんなン知ってるわけ―――――ッ!!」
俺、知ってるわ!
「多分お前の兄、商業ギルドのマスターやってるだろ」
「そうだ!お前、もしかして兄の事を知っているのか!?」
まさかあのおっちゃんの知り合いだったとはな。
「ああ、今も元気に生きてるよ」
「良かった……ここで働いたら一生出れないから確認できなかったんだ」
え!ここで働いたら一生出れないの!?
「……よし!お前が兄の知り合いということで特別に正式の価格で商品をお前に売ってやる。取り寄せてほしい物も取り寄せてやる!ドンと頼ってくれ!」
お〜!!
何気に嬉しいぞ!
まさかこんなところでおっちゃんの弟に出会うとは思わなかったわ。
「じゃあ取り敢えず、食べ物を取り寄せてくれるか。できるだけ鮮度が高い物」
「あいよ!!」
フフッ、こんな所でも人との繋がりを感じられるっていいな。
そんな事を思いながら俺は買い物を始めた。
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