第31話 牢屋生活



「どうしても出たい時は電話をしろか………………よし」


隣にあるこれが電話番号かな?


プルルルル。プルルルル。


「もしもし〜。出たいんですが?」


「…………」


あれ、応答が無いな。


「もしも〜し、もしも〜し」


「…………もうちょっと我慢しろ」


「ん?なんて?」


声が小さくて聞こえないぞ?


「もうちょっと我慢しろ!電話をするのが早い!」


え〜。だってどうしても出たい時でしょ。普通にどうしても出たいんですが。


だって急にここに連れて来られて、しかもそこが暗殺者のアジトとか出たいに決まってるでしょ。逆に出たくないやつおるん?


…………はぁ、仕方がない。ここで待っとくか。


暇だし、訓練でもするか…………


一日目は訓練をしただけで終了した。



二日目


一日過ごして分かった事がある。


この部屋はトイレ付き。

たまに食事を運んでくる看守さん。


この看守にトイレをもっときれいにしてくださいと言ったら道具を投げられた。「自分できれいにしろ」だってさ。全く、こんな子供にトイレこんな汚いトイレを掃除しろとか頭おかしいよな。


この牢屋?みたいな所の前に雨漏りしている天井がある。

寝る時、雨漏りの音は微妙に不快なんだよな。


あと、ここらへんにはたまに看守が来るだけで誰もいない。この一日で看守と謎の電話の人の声しか聞いていない。


仕方がない。今日はトイレをピッカピカにするか。



三日目


いや〜、昨日は面白かったな〜。

トイレを輝くほどピカピカにしていたら看守の目が点になってたな〜。


う〜ん。暇だな〜訓練するか〜。




ーーーーー




「は〜疲れた」


よし、そろそろ寝るか


………………う〜ん。雨漏りの水が垂れる音で眠れないな〜。


ポツン……ポツン……ポツン……


この音に日に日に不快感がましていった。


四日目


…………あ〜、寝付きが悪い。


昨日の雨漏りの音で目が覚めた。


今日も訓練するか。



五日目


ポツン……ポツン……ポツン……


六日目


ポツン……ポツン……ポツン……


七日目


ポツン……ポツン……ポツン……


八日目


ポツン……ポツン……ポツン……


九日目


…………俺は最悪な事に気づいたしまった。


俺はずっとあの言葉に引っかかっていた。


『まだ着くのに時間がかかるから今のうちに寝ておけ。……これからはまともに寝れなくなるぞ』


これからはまともに寝れなくなるぞ?何故そんな事を言った?


答えは簡単だ。この雨漏りの音だ。


最初からおかしいと思っていた。


何故ここは地下なのに雨漏りをしている?そんなの誰かが水を流しているに決まっているだろう。


う〜ん。何かこの不快感をなくせる物が無いだろうか。


…………あ!いい事を思いついた!


そうなれば、看守が来てから開始だ。






ーーーーー






「飯だ」


「ありがとう。看守さん」


テクテクテク…………


よし!看守が行った!


看守は一日一回、食事を運んでくる。


なので看守が来た後は一日分、誰にも見られないということだ。


「やっぱり、これを忍ばせといて正解だったな」


俺は靴の裏からを出した。


「取り敢えず、木材と、釘、ノコヤスリ、トンカチ、紐でいいかな」


このポーチはマジックバックだ。小さいのは容量が少ないが、その代わり隠して起きやすい。

エレンの命令でいつもこのポーチを隠し持っている。


「よし、それじゃあ…………作業開始!」



十日目


「これは一体、どういう事だ…………」


「ん?どういう事って?」


どうしたんだ看守?そんなに驚いて。


「どうしたもこうしたも無いだろう!何で牢屋に、!?」


フッフッフ………


実は昨日、マジックポーチから材料を取り出して、家具を作っていたんだよ。


今ここには二段ベット

勉強机

本棚

ハンモック

トイレの個室

クローゼット

観葉植物

木の彫刻

暇つぶしのチェス、将棋、などなどのボードゲーム

壁も一面、汚い石レンガから木に張り替えた。


「いや〜しんどかったですよ、看守さん」


だってなんか建築スキルゲットできたもん。そっから作業スピードが上がった。


……そうだ。


「はいどうぞ、看守さん。木の彫刻ですよ」


暇だから作った、頭領の彫刻だ。


「あ、ありがとう」


そう言って看守は帰って行った。


いや〜、いい仕事したな〜。もう前世の家より快適なんじゃないか?


何もしなくても飯が出てくる。

古典的だが、遊びもある。

しかも扉が鉄製なので安全面もバッチリ!こりゃあアルソ◯クも仰天だわ。


よし!誰の邪魔も入らないんだから思う存分遊ぼう!




十一日目


十二日目


十三日目


十四日目


十五日目


………………………


「う〜ん。暇だな〜」


いくら遊べるからと言っていつまでも暇がなくなるとは思わない。


よし!久しぶりに電話の人に話しかけてみるか。


「は〜い。俺だよ〜。元気にしてた〜?」


「……………」


「……?何で返事しないんだ?お〜い。お〜い。聞こえてます〜?」


ん?返事が無いな?


「………………」


……うん。電話は繋がっている。あっちからかすかに物音がするからな。


「何で無視をするんだ?俺が出たいって言わないからか?」


正直に言って、この環境悪くないんだよな。意外と快適だし。


「………………」


……こいつ、全然返事をしないな。


こいつの反応に、オレの心には火が着いた。


「そんだけ無視するなら、我慢比べといこうじゃないか」


俺がお前に喋りかけるのをやめるか、お前が喋るか、この二択だ。


「お前、俺が喋りかけるのをすぐやめるだろうと思っているだろ?」


そんなこと、あるわけないんだよ。


俺にはがあるからな。


秘技!


「ある日突然、街の角で女の人とすれ違った」


クソ物語!





ーーーーー


「そこで女性がゴリラだった事が発覚した」



ーーーーー


「まさかのライバル校はおやつだったのだ!」



ーーーーー


「そこで鼻毛のパンチ!」



ーーーーー


「そこでナメロウが爆発した」



ーーーーー




「そこでパンツは「キエエエェェェェェェ!!!」……びっくりした」


俺がクソしょうもない物語を喋り始めてから数十時間経過した頃、とうとう電話の向こうの人が叫びだした。


「キャアアアァァ!!キュエエエェェェ!!」


「おいお前、どうしたんだ!」


おい、同僚にまで心配されてるじゃないか。


「オイお前!頭領に電話をしろ!」


「分かった!!」


やべ、頭領に電話された。え、殺されたりしない?


そんな事を考えていると、牢屋の向こうに人影が見えた。


「随分楽しそうな事をしてるな」


そこには頭領一人、佇んでいた。



「うぃーす…………」



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


レオンから彫刻をもらった看守→(゚д゚)!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る